つまり何がしたいかといいますと
味噌があるなら、酢の柏餅があってもいいはずだ、作ってみたいぞ! ということなんです。
味噌餡のあの独特の風味のファンとしては(私はべつやくさんの作ったみそ餡ファンクラブの会員です)、きっと酢でも同じように美味しくなるんじゃないかと思うのだ。同じ発酵系調味料だし、酢飯や三杯酢のことを考えると酢は砂糖との愛称もいい。
もう心には「酢! 酢!」と酢コールが降り注いでいるわけだが、まずは落ち着いて柏餅の皮、餅の部分から作っていこう。
和菓子の餅部分というと、蒸したりついたり手間がかかるイメージだったが、ネットにはレンジを使った簡単なレシピがたくさん紹介されていた。
いろいろと参考にして少量でも作れるようにアレンジして作っていく。これが本当に簡単にできてびっくりだ。
餅の色はカボチャを使って黄色くしてみよう。
地域や作り手によって色々違いもあるようだが、私のイメージでは柏餅の餅はこし餡が白、つぶ餡がよもぎ(草もち)、味噌餡はピンクだ。
では酢はと考えて、すっぱいイメージの色といえばやっぱり黄色じゃないかというわけで黄色に決定した。
酢あんづくりと酢への畏怖
餅を冷ましている間にいよいよ酢あん作りである。
味噌餡は白餡に味噌を加えて作る。酢もその要領で白餡(普通の白餡が手に入らなかったので、白花豆の煮豆をつぶして代用)に酢を混ぜていくことにした。
ただ、酢をそのままストレートで混ぜるのはやや不安だ。今回は砂糖と醤油をあわせた三杯酢を使おう。
いつもだったらどばっとそのままの酢を混ぜそうなものだが、慎重なのには訳がある。私が高校生のころ、酢ダイエットというのが地元で流行ったのだ。少量の酢を毎朝キューっと飲むのである。
これがとんでもなく酸っぱいんだ。ただ酸っぱいというのではなく、体全体ですっぱい。痛いわけではないが胃も明らかに戸惑ってもんどりを打つというか。
(調べてみたら、料理用酢を飲む場合は10倍に薄めることがメーカーでは勧められていた。だれか早く高校生の私に知らせてやってくれ)
酢はやばい。あの頃の教訓である。
酢餡、爆の誕!
……あ、酢豚。
酢豚のにおいがした。
いやいや、ただ酢のにおいがしただなのだが、それだけで酢豚を感じてしまうことに酢の破壊力を感じる。酢の餡、大丈夫だろうか。
……(食べました)。
おお! おおお! 大丈夫、酢豚じゃない!
ちゃんと餡だ。美味しいそ。食感は完全にあんこなので、体はあんこであると解釈するのだが、味は酢という不思議。醤油と砂糖が入っているだけにみたらしのタレのような感じもあって、不思議な味だけれど不自然ではない。これは大成功だ。
うっかり大成功したので、分量をご紹介します。以下をまぜて水をとばしながら練りました。
餡さえ成功してしまえばもう大丈夫だろう。このタイプの甘さなら間違いなく餅は受け入れてくれるはずだ。
うっかり酢餡に夢中になっているあいだに餅が冷めすぎてしまったようで、平たく伸びなくなってしまった。が、餡が完璧だったのでもうこのまま進んでしまおう。
もぐ。もぐもぐもぐもぐもぐ。
お、餅が美味しい。やはり手作り&作りたてって美味しいものなんだな。撮影のために買ってきた安い量販系の柏餅よりも断然美味しかった。
そしてやっぱり酢餡とのマッチングも完璧だ。なんだこれ、普通に美味しいじゃないか。新鮮な味わいというよりも、本当に“普通”においしい。
……。なんだか不安になってきたぞ。もしかして、柏餅に酢って私が知らないだけで前々からあるんじゃないだろうか。
垢抜けた味、酢餡
柏餅が日本に広まったのは江戸時代の中期といわれている。こし餡、つぶ餡、味噌餡の他に酢餡をもちで包み柏の葉で覆ったものであるが、明治時代にに入るころには酢餡が製造の手間の関係からか廃れ、現在ではこし餡、つぶ餡、みそ餡の3種類がポピュラーである。
……というのは嘘だが、そうであってもおかしくないような味だった。
柏餅じゃないにしろ、何らかの形で酢を使った餡っていうのはあるのかもしれない(ご存知の方がいらっしゃいましたらぜひご一報ください!)。なんだか、味わいが垢抜けていた。
酢のあんこ、食べたことがあるような、でもやっぱりはじめての味。この感覚は、そうだ、そうめんのつゆにカルピスを入れたときのあの驚きに似ていました(そうめん+カルピスの詳細はぜひともこちらで)。