日曜たのしさ一万尺 2023年8月19日

ブランデンブルク辺境伯領、 赤の女王仮説、CRISPR Cas9… 今日から使える賢そう&かっこいい用語集

なんとか定理、なんとかのパラドックス、なんとか理論、なんとかの法則…。
この世には、口にしただけで賢くなった気がする言葉があります。そんな言葉を募集したところ、鼻血が出るくらいの投稿が集まりました。

ぜんぶ紹介すると読者のみなさんも鼻血が出てしまいますので、ここでは厳選してご紹介します。

※みなさまのお気に入りのかっこいい言葉も募集しております!→賢そう&かっこいい用語 投稿フォーム

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)2023、出場ロボット直前レポート!!

> 個人サイト nomoonwalk

もったいぶらずに一番かっこいい言葉からいきます。(ランキングは独断)

※同じ用語の投稿を複数の方にいただいた場合、投稿者名は掲載したコメントの投稿者名を記載しております。

宇宙際タイヒミュラー理論

数学者の望月新一先生による数学に関する理論です。字面からは天文学だと思うでしょう。このはずし具合も素敵です。(えぞポメラニアン さん)

「うちゅうぎわ」ではなく「うちゅうさい」。この語単体もかっこいいのですがWikipediaを見ると本文全体がかっこいい言葉で埋め尽くされています。数学は「かっこいい学」に改名してもいいのでは。

 

ウィドマンシュテッテン構造
鉄隕石の切断面を磨いた時に見える、格子状の模様のことです。
自然界には実際あるし、どのような成分でできているのか等も解明されているけれど、「現在の人類の技術では再現不可能」と言うのがかっこいいポイントです。 そしてその再現できない理由が「数万年に1~数℃というレベルでゆっくり冷やさないとできないから」なのも推しポイントです。(リューフ さん)
投稿者Twitterより、ウィドマンシュテッテン構造がきれいな石鉄隕石

語感だけでもやばいのに意味まで全部やばい。「テッテン」ってちょっとつんのめるところも口に出してみると気持ちがいいです。

 

ブランデンブルク辺境伯領

現ドイツ・ベルリン周辺地域の神聖ローマ帝国時代の呼び名です。ドイツ語、辺境伯、神聖ローマ帝国…世界史を学ぶ中学生男子の琴線に触れる要素を全て満たしています。(かず さん)

このへん(地図クレジット:Maximilian Dörrbecker

カタカナ+漢字のワードの場合、漢字パートの存在感も大事。「辺境伯」は貴族の称号の一種だそうです。

 

根本的な帰属の誤り

自分のミスは状況のせいだが、他人のミスは状況ではなくその人が悪い、と認識してしまうこと。「<カタカナ>の<一般名詞>」と違って、翻訳しきれてない感じが専門用語っぽくていいです。(suchi さん)

こういう日本語ワードもいい。「根本的な誤り」だとすごいネガティブな感じがするのに「帰属の」が入るだけでこんなにかっこよく。

 

0023.jpg
これは「なます」(この記事より)

↑かっこいい言葉ばかり見ていると感覚がマヒしてくるので、たまにノペッとした日本語を挟みます。利き酒の時に飲む水の役割です。

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クロネッカーの青春の夢

数学の数論の分野で立てられた一連の予想を証明する問題です。虚二次体のアーベル拡大の構成方法に関する予想を証明する問題です。クロネッカーという数学者が予想を立て、その証明を夢見たことからこの名前で呼ばれています。(しろみ さん)

また数学ですが、こんどは文学的すぎる。シェイクスピアかと思いました。

 

オッカムの剃刀、ハンロンの剃刀、アルダーの剃刀

それぞれ「複数の説明ができる場合最もシンプルなものを選べ」「愚かさで説明できる行為を悪意と解釈してはいけない」「観測できない物事を議論するな」。せっかくかっこいいのにどれがどれやら覚えておけないところがもどかしいです。(gom さん)

オッカムはこの人だそうです(Wikipediaより、パブリックドメイン)

オッカムの剃刀は多くの方が挙げてくれましたが、同じシリーズ(?)で3つもあったとは。どれも語感が独特なのも良い。

 

可換環(かかんかん)
代数系のなかで加法・減法(たす・ひく)と可換な乗法(かける)が定義されているものを可換環といいます。整数も可換環のひとつです。(好きな理由は)響きだけです。(もとまち さん)

せいすうもかかんかん!せいすうもかかんかん!

 

デッドエンド・エリミネーション

計算の手法に関わることのようですが、自分もあまりよく分かってません。とにかくデッドエンド(もはや行き場無し)でエリミネーション(消滅)、という語感が強過ぎる。回避不能の即死技、みたいな感じ。

しかも計算関連の何か技なので、「PCに数式入れてエンターキーをターン!ってするとすごい量の計算がディスプレイを流れ始めなんか周辺の空間にすごい圧の『場』が展開され眩い光を放つ無数の幾何学図形が高速で生成消滅を繰り返す。相手は死ぬ。」みたいなやつだろうと思う。

または、「多重世界たちが次々に消失している……ほどなくして、すべての宇宙が虚の闇に消えるだろう。われわれの宇宙も。避け難く。」みたいな世界の破滅の危機の話なのかも知れない。(np さん)

ちょっと長いコメントでしたが想像力が豊かすぎたので全文掲載させていただきました。あと、その気持ちすげえわかる。

これは「ねんど」(この記事より)

 

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赤の女王仮説

生物の種は絶えず進化を続けていないと絶滅するとする仮説
周りが進化したらそれに合わせて自分たちも進化しないと置いていかれる(絶滅する)ということらしいですが、それを鏡の国のアリスの赤の女王になぞらえているところがかっこいい。(Eb さん)

赤の女王

最初「赤の女王伝説」と読んでしまいました。でも仮説の方が絶対にかっこいいですね。

 

マクスウェルの悪魔

熱力学の思考実験に関する言葉です。悪魔が二部屋をつなぐ仕切りを開け閉めして、部屋の温度差を発生させる(エントロピーを減少させる)事ができます。

マクスウェルというかっこいい名前に悪魔を足して、さらに言葉の説明でエントロピーまで使えるかっこよさ欲張りセットです。

Wikipediaより、マクスウェルの悪魔の図(by Htkym

上の図ではちょっとかわいいですが、そのままWikipediaのつづきを読んでいたら「ところが、悪魔は完全には葬りさられていないことが明らかになった」という一文があって震えました。かっこいい…。

 

冪等性

べきとうせい。同じ操作を一回行っても複数回行っても結果が同じになる、という性質
WebシステムのAPIで重要になる概念なんですが。既存の言葉で表現できない思いもよらなかった概念に、唯一無二の名前をつけることにより目の前に概念が顕現するのが格好いい。

 どれもちょっと賢い感じがする「なんとか性」の親玉みたいなやつ。

 

ゴルディロックス相場
投資用語で、現在の相場が過熱しすぎず冷え切ってもいないちょうどいい塩梅であることを意味する言葉。もともと童話の言葉らしく、すごい哲学とか神話っぽいのに童話由来かよ!というズッコケ感もあって好きです。(esbee さん)

濁音2つに「ロック」を携えためちゃめちゃにごつい語感なのに、意味は「いい塩梅」。このギャップ。

 

これは「もなか」(この記事より)
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メルセンヌ数に対するリュカ–レーマー・テスト

メルセンヌ数Mp = 2^p − 1 が素数かどうかを判定する手順です。素数のメルセンヌ数は完全数と関連するなど面白い性質がたくさんあります。発見された最大の素数の記録は年々更新されていますが、ほとんどがこれで見つけたものです。(t-tanaka さん)

もう素数の時点でちょっと胸がときめくじゃないですか。それを!次々と!発見!!!(卒倒)

 

シチリアの晩鐘   

中世のシチリア島で、フランス支配に反発した農民が起こした暴動。 
暴動が起こった時、ちょうど晩のミサの鐘が鳴り始めた……というドラマ性。(しん さん)

フランチェスコ・アイエツ画、シチリアの晩祷(パブリックドメイン)

エピソードとしてもドラマチックすぎるし、「晩鐘」っていう単語がそもそもかっこよすぎるんですよ。字で見た瞬間にバーンてイメージが沸く!

 

CRISPR Cas9

クリスパーキャスナイン。遺伝子組換えの手法です。狙ったところだけを違う遺伝子配列に置き換える事ができます。
賢そうと思って書いてみたものの、どちらかというと必殺技みたいでかっこいい言葉ですね。(しん さん)

僕はコードネームみたいでかっこいいと思いました。こちらクリスパーキャスナイン。遺伝子配列の置き換えに成功した。オーバー。

 

丁度可知差異

ちょうどかちさい。just noticeable difference(jnd)の訳で、標準となる感覚刺激に対し、違うと弁別できる感覚刺激との差の最小値。   例えば標準刺激が重さ50gのおもりで、与えられたおもりが51gだと標準刺激と区別できないけど、52gだと区別できる場合、丁度可知差異は2gと言えます。近年は弁別閾と言う事が多いですが、丁度可知差異の直訳っぷりが好きです。(主に布団にいます さん)

漢字ばっかり続くのに「ちょうど」って聞きなれた言葉が出てくるのがいいですね。しかし「かちさい」で一気に突き放されます。一語の中でいろんな味わいのある味変ワード。


おっとそろそろかっこよさが致死量に達しそうですのでこの辺で。まだまだたっぷりご投稿いただいておりますので、好評なら次回もやりたいと思います。賢そうな用語風にいうと、コーヒョーナラ次回。いや全然ダメだこれは…。

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