唐突に目があって……
買います? かにの缶詰って。僕はなかったんですよ、買ったこと。理由として考えられるのは、う〜んそうだな……かにってそもそも、高級品というイメージがありますよね。それと「缶詰」のイメージが乖離しすぎていて、気軽に手にとろうという気が起きなかったというか、脳が勝手に売り場から情報をシャットアウトしていたというか。
ところが先日、ふと気になったんです。スーパーの売り場で、これってどういうもんなんだろうな? と。理由は不明。
とにかく、気になりだしたら止まらない性格なもので、極端に走るんですよね。その場で、「いくつか買って食べ比べてみよう!」と思ってしまった。さらには、「せっかくならどーんとごはんにのせて『かに丼』にして食べてみよう!」と思ってしまったんです。あんまり聞いたことないじゃないですか。缶詰のかに丼って。いや、やってる人はやってるのかもしれないし、日常的にかに缶を買ってる人にとっては、「この素人は一体なにを言ってやがるんだ」って話でしょうが。
初めてのかに缶
こういうやつですよ。サイズ的には、ホテイの「やきとり」とほぼ同じ。
今回はですね、買ってきた缶詰たちを開封し、少し試食。内容と味を確認した後、それをどさどさとどんぶりメシにのせていく。最終的にそれをかっ食らうという、シンプルな企画となっております。
なお、売り場を眺めていたら、魚介類の缶詰って、かにの他にも想像以上にいろいろあるもんですね。なので、かに以外のゲストも少々お迎えしましょう。ただし、僕の好きなさんまの蒲焼きとか、おなじみのさばのみそ煮とかは、味を知っているし、そもそもすでに料理なので不採用。ちょっと高級ラインの「なんたら貝のなんたらアヒージョ」みたいなのも、凝りすぎなので不採用。明確なルールはありませんが、僕が「海鮮丼っぽい」と判断したアイテムたちで構成していきます。
あ、もうひとつ大切なポイント。かに缶でも、ひとつ1000円を超える高級ゾーンのものや、さらに上の数千〜数万円クラスになる「たらばがに」の缶詰なども、日常的に手が出ないということで今回は採用なしです。あくまで数百円内のもので。
いざ!
1「べにずわいがに ほぐしみ」
記憶にある限り、本当に初めて対面するものなんですが、なるほど、こういう感じなんですね。細かくフレーク状になったしっとりとしたかにの身が、かなりたっぷりと入っています。産地は「韓国,日本」とありますね。
よくスーパーで、小さめのズワイガニがお手頃価格で売られたりしていますけれども、あれを家でゆでて、これだけの身を確保するのにどれだけの労力が必要か……。と考えると、かなりお得な商品にも感じますが、さてお味のほうは。
わ! いきなりびっくり、と言っては失礼ですが、けっこうしっかりとかにの味がします。そりゃあ、蒸したてゆでたてにはかなわないけれど、身の甘さと味つけの塩気のバランスもいいし、変なくさみも薬品的な香りも感じないし、結論としては、思ってた以上にかにで美味しい。
ちょっと薬味かなんかのせたら、そのまま晩酌のつまみに最高じゃないですか、これ。いや〜、いいこと知れた。
2「まるずわいがに ほぐしみ」
さっきのベニズワイより汁っぽくとろりとして、繊維も繊細な感じですね。しかしながら、一部ごろっとしたかたまりもあってそこが嬉しい。かには国産のようです。
調べてみたところ、ベニズワイ、マルズワイ、それぞれそんなに味に差がある種類ということはないそうで、ベニズワイと同様に美味しいです。
3「わたりがに フレーク」
こちらは業務スーパーで見かけた、わたりがにの缶詰。ごらんのとおり、これまでのものよりもビッグサイズで、このお手頃価格。ただ、わたりがにこそ、パスタにしたりみそ汁にするものって感じで、あんまり身をほじくるイメージはありません。
ところが〜?
開けてびっくりの身のたっぷり具合。なんと内容量170g、うち固形量120g。インドネシア産。
食べてみたところ、これまでのずわいシリーズとは違う、ちょっと淡白で、素朴で、海を感じさせるような味。ただ、やっぱりくさみとかはなく、ちゃんとかにの味がします。たまにほんのりと、細かくて柔らかい殻っぽいのが混じっているところなんか、むしろとれたて感を演出している気さえ。
それにしても、こんなに気兼ねなくかにが食べられて、この値段。すごすぎてびっくり。こういう世界があったんだ。
4「かにみそ かに肉入り」
いや〜、見えてなかったな〜。世の中には、かにみその缶詰なんてのもあるんですね。大好物なのにぜんぜん見えてなかった。カナダ産。
さっそく開封してみると、
なんか、紙に包まれてますね。缶詰のなかで。こういうパターンもあるんだ。
おお! ほぐしたかにの身が入ったかにみそがたっぷり。珍味系なの一応用心深く味見してみましたが、あら、ぜんぜんうまいカニみそじゃないですか。缶詰っぽさみたいのぜんぜんなし。これまた酒のつまみに重宝するな〜。
5「帆立貝水煮 姿造り」
ほたての姿造りなんていかにも海鮮丼向きじゃないですか。と、購入。ほたての名産地、青森県陸奥湾産。これは間違いないでしょう。
まず、この汁が濃厚ほたてだし塩スープって感じでめちゃくちゃ沁みる。身もぷりんぷりんで最高〜!
6「ウニとアワビの潮汁 いちご煮」
そしてラスト。こんなものも並んでたんだな〜、いつも行くスーパーの棚に。
青森県の郷土料理ですよね。うにとあわびのお吸いもの、いちご煮。厳密には汁ものですが、そこからうにとあわびを取り出して丼の上に加えようということで。
ラベルには「蒸ウニ(チリ産)、ロコ貝、アワビ」との表記あり。ちなみにロコ貝は、「アワビモドキ」の呼び名もある食用貝だそうです。
で、この汁をいったん別の器に移してみると、
で、まずこの汁がうますぎる。今までの塩煮系とは違って、きっちりだしも効いていて、完成された高級和食の味です。これで炊き込みご飯なんか作っちゃったらやばいだろうな……。
うにもあわびも、きちんと持ち味と存在感があって言うことなしですよ。
いよいよ海鮮丼に!
はい。以上の缶詰たちを、あとはひたすらどんぶりメシの上にどさどさと盛っていきたいと思います。
まずはいちばんボリュームのあるわたりがにを
や、やっぱすげぇわ……この缶詰。これまで僕がぼんやりと持っていたかに缶のイメージが完全に覆されました。もっと寂しいものだと思ってたんだよな〜、かに缶って。これじゃあむしろ、メガ盛りとかの世界じゃないですか。
かにが、かにがとめどないよ〜。
すごいすごい。もう正直に言います。この企画、やる前は、「まぁまぁの金額を出したわりに、見た目が少し寂しい」という結果になると、勝手に想像していたんです。で、味は未知数だから、そのあたりをじっくり検証してみようと思っていた。結論としては「たまにはこういうのもあり」という感じになりそうかな? と思っていた。
浅はかでしたね……。だってもう、この時点で、ただただ超豪華な海鮮丼なんだもん。もう、食べたくて食べたくてよだれが止まらないんだもん。
欲を言えば、この頂点にいくらの数粒でものっていれば見た目的にパーフェクトでしたが、缶詰のいくらは見つかりませんでしたので。けど、じゅうぶんに豪華!
いいですよね? もう? はい。
ああああ、これはもう、うまい! ただうまい!
べにずわい、うまいなー。ちょっといい駅弁の「かにめし弁当」とかと遜色ないっていうか、満足感で言ったらそれ以上かもしれない。まるずわいもうまいですが、ちょっととろみが強いので、玉子焼きの具材とかにしてもいいかもしれないな。わたりがには、ちょっと味つけの強いチャーハンなんかにひと缶まるごと入れちゃったりしたら、もう夢心地でしょうね……。
食べる箇所ごとに、醤油ちょろ、ポン酢ちょろなど、味変してあげるとさらにいいです。
そんでまた、食べすすめるほどに3種のかにの境界線が曖昧になり、そこにうにやあわびやほたても混ざり、
とりわけいい仕事をしてくれるのが、
なんだこりゃあ……聞いてないぞ、こんな話。自宅で、しかもほぼ調理なしで食べられる料理のなかで、トップクラスのごちそうなんじゃないかこれ。完全に、自分のもとにだけひと足早く正月がやってきているぞ……。
と、夢中で堪能して残りわずかになった海鮮丼。最後にもうひとつ試してみましょう。残っているいちご煮汁を温め直してどんぶりに注ぎ、
これがねぇ……もう、どんな味だったかってさ、うふふ、あはは、だめ、すいません。笑っちゃってちゃんと感想言えないっすわ。10分待って!
素晴らしきかに缶の世界
以上、事前の想像をはるかに超えた夢体験をさせてもらえた、今回の缶詰海鮮丼企画。買った缶詰の総合計は、2410円。あ、計算してみると、やっぱりうまい海鮮丼が食べられるレベルになっちゃってましたね。
けれどもはっきり言って、この缶詰のなかのどれかひとつだけでもじゅうぶん満足はできると思うし、ぜいたくに2種いっちゃえばもう夢心地確定ですよ。それでいて、最大ボリュームかつ最安のわたりがになんか、298円ですからねぇ。
というわけで、今回もとても有意義な情報を得ることができました。どの缶詰も大好きでしたが、特に気に入り、今後リピ率が跳ね上がるだろうなと思ったのは、ごはんに混ぜるだけでパーフェクトかにめしになってくれそうな、キョクヨー「べにずわいがに ほぐしみ」、アレンジのしがいがありそうな、業務スーパーで見つけた「わたりがに フレーク」あたりでしょうか。いや〜、またまた人生に楽しみが増えちゃったな〜。
あ、そろそろ10分たちますね。すいません、もう落ち着きました。海鮮茶漬けの感想ですよね? ずばり「神話級」でした。