特集 2023年10月11日

紙コップを歩かせる

ピクサー映画の冒頭で電気スタンドがぴょんぴょん跳ねる映像が流れるけれども、物がああやって跳び回ったり、歩き回ったりする様子はおもしろい。

今回は紙コップを、CGでなく現実で歩かせることに成功した。これがとても可愛いかったので見てほしい。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:人は大切なものをでかく描くのか(デジタルリマスター)

> 個人サイト nomoonwalk

お菓子の箱を歩かせる

8月にトルコから知人が来て、お土産にお菓子をもらった。

↑トルコ人の話はこちらで

DSC08841.JPG
今日の主役はこちら

ロクムというトルコ独特のお菓子。砂糖にデンプンとナッツを加えたものらしいが、マシュマロみたいなフカフカ感のある甘いお菓子だ。

お菓子をおいしくいただいたあと、空き箱が残った。けっこう丈夫な箱だし、せっかく海を渡ってやってきたのだし、捨てるのももったいない。小物入れにするか、薬ケースにするか、あるいはそのまんまおかし入れとか…。

と思わせて、突然のロボット化

ロボットにした。中にはマイクが入っていて、箱をノックするとその音に反応してモーターが動き、ノソッ、ノソッ、と這って逃げる。 

トン! ノソッ……ノソッ……

スーッと前に進むのではなく、体を少し持ち上げながらノソッと這うのがいきものっぽい動きで気に入っている。 

※余談だが、具体的に「○○虫っぽい」と言うと急に気色悪く見えてくるので、虫っぽいものを作って人に見せるときは「いきものっぽい」にとどめておくのがコツである。

裏側。モーターに十字のパーツがついていて、それが回るとちょっと持ち上がりながら進む。
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こういうこと。この図だと左方向に進む

モーターに丸いタイヤを付けたらスーッと走っていくだけだけど、かわりに十字のパーツをつけるだけでいきものっぽさが生まれた。おもしろい。

 

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ものを歩かせるのは意外に簡単かも

歩くロボットといえば二足歩行。でもロボットに二足歩行させるのは難しい。足をつけて、関節も作って、各関節を適切な順番に動かしながらバランスもうまく取って制御しなければいけない。かつてASIMOがあれだけ話題になったのはそのむずかしさゆえだ。

べつやくさんの記事「卒業するASIMOに会いに」より、ASIMO

でもスラッとした足をつけないで、ノソノソと歩いているように見せるだけなら、意外に簡単にできるのかもしれない。

さっきの這っている動きも良かったけど、あの仕組みを2つ作ってそれぞれ右足左足にして、交互に地面に着くようにすれば、もっとリアルに歩いているように見せられる気がする。

二本足を作る

ということで実験だ。必要なのはモーターと足。

モーター

ミニ四駆に使う普通のモーターだと早すぎるので、こういう黄色いモーターを使う。ギアが入っていてゆっくり回るやつだ。TTモーターという名前らしく、電子部品屋やAmazon等で1個250円くらいから手に入る。 

まとめ売り、バラ売り、銅線の有無などいろいろあるのでお好みでどうぞ

シャフトにつける足

この足をモーターの両サイドにつけた状態でモーターを回すと、左右の足が交互に地面を蹴るので歩いているような動きになると思う。モーターを回してみよう。

あれ…

なんかスキップっぽく跳ねてしまった……が、これはモーターが軽すぎるせいだと思うので、いったんロボットにつけてから様子を見ることにしよう。

紙コップをロボットにする

さて、今回は何をロボット化しようか。ちょうど机の上にこれがあった。

お昼に食べたケンタッキーの紙コップ

 顔もついているし、歩かせるのにちょうどよいだろう。

関係ないけどカーネル・サンダースが胸につけてるリボン、身体に見えますよね。

足が出るように底を切って
足にはゴムチューブを挿してすべりどめに
モーターを寝かすスペースはなかったので縦に入れた
裏から見るとこう
モーターが動かないように上げ底を作って頭を固定
電池をつなぎます

電池2本だと回転が速すぎたので1本にしたかったが、1本用の電池ボックスが家になかったので針金で短絡した。見えないところでこう雑に手を抜く、これが工作を楽しくやる秘訣である。

サイボーグ・カーネル・サンダース

一見普通のコップだが、スイッチを入れれば歩くはずだ。やってみよう。

おお!狙いどおり軽快に歩き始めたが…
だんだん体の振りが大きくなって転んでしまった

僕の設計の甘さによりカーネル・サンダースが顔面を強打した。ごめん。 

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重心を低く

足の動き自体は悪くないものの、上げ底の上に電池がきたせいで重心が高くなり、転んでしまったと思われる。

こういう時はおもりを足して、下を重くする。

モーターに空の電池をくくりつけて、再度おなじように組み立て直す。

 そして改めて動かしてみると…

紙コップが転ばずに歩いた!!かわいい!!
紙コップがこっちに来る!!

上のアニメーション、紙コップが歩いてくると思うとかわいいのだが、笑顔でこっちに迫ってくるカーネルサンダースに注目すると急に怖くなる。かわいい前提で話を進めたいので、薄目で見たりして意識をうまくコントロールしてほしい。

ともあれ、関節も姿勢制御もなしに、めちゃめちゃ簡単に紙コップを歩かせることができてしまった。大発明である。

僕が知らなかっただけで大定番のメカだったらごめん。そのときは「大発明である」は撤回、「再発明である」に訂正させていただく。

コップが歩くとかわいい

これがタイヤでビューンって走るだけだったらこんな愛嬌はあるまい。ヨタヨタ歩くからこそかわいいのだ。

渋谷の街を歩くケンタッキー。地面が平らじゃないのでちょっとふらつくのもかわいい
オフィスに出勤してきたケンタッキー
打ち合わせが終わって会議室から出てくるケンタッキー
社員のIDカードを盗もうとして落として見つかるケンタッキー

面白がって構成も考えずいろんな動画を撮った。それを今ならべたところ、ケンタッキーの紙コップが産業スパイだというストーリーができあがってしまった。

不審な人物やロボットを社内に入れないようにしましょう。情報セキュリティ部門との約束だよ。


作ってみたい方へ

今回は足を3Dプリンタで作ったが(モデルはここでDLできます)、真似してみたいけど3Dプリンタがないという方がいたら割り箸とかでも代用できる。

割り箸をシャフトにつけた例。M2サイズのネジで止めて、回転してしまわないようホットボンドで固めた。
 

本体は、紙コップのような縦長のものは倒れやすいしモーターも取り付けにくいので、横長の箱型のものが歩かせやすいと思う。

お知らせ①

書影帯付き.jpg

この記事で書いたような、雑な電子工作をつくる本です。「無駄づくり」の藤原麻里菜さん、電子工作ユニットのギャル電との共著。「作品作りは雑にやってもいい」というコンセプトで、電子工作でオリジナル作品を最速で作る/考えるノウハウをまとめました。10/24発売、予約受付中…!

おしらせ②
Maker Faire Tokyo 2023に出展します!

Maker Faire Tokyo 2023

10/14~15に開催されるDIYの祭典、Maker Faire Tokyoに出展します!記事で作った工作を展示します。上で書いた本の先行販売と発売記念トークイベントもあります~

詳しくは告知ページをどうぞ!

2023年10月14日(土) 12:00~18:00(予定)
2023年10月15日(日) 10:00~17:00(予定)
※入場は終了の30分前まで
※入場にはチケットが必要です。当日まで購入が可能。チケットはこちらから

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