特集 2023年9月4日

岡山の公園地下に戦時中のトンネル、亀島山地下工場跡

地上は普通の公園、地下はトンネルが張り巡らされている。まさに秘密基地。

岡山県内のごくありふれたとある公園。

その地下にはアジア太平洋戦争中に作られたトンネルが張り巡らされている。

実はこれ、空襲を避けるために地下に作られた亀島山地下工場跡だ。

1984年生まれ岡山のど田舎在住。技術的な事を探求するのが趣味。お皿を作って売っていたりもする。思い付いた事はやってみないと気がすまない性格。(動画インタビュー)

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ごく普通の公園…でも実は

むわーっとした暑さ、湿気、体にまとわりつく7月のとある日曜日。

地下に戦時中のトンネルが隠された公園がある、しかも普段は公開されていないそのトンネルを見学できるツアーがあるという。

そこで岡山県倉敷市の亀島山花と緑の丘公園へやってきた。

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入り口付近にある案内看板。

その公園は小高い山に整備されている。山というより丘に近いかな。

丘全体に遊歩道とちょっとした広場があるような公園だ。

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セミの大合唱が途絶えることがないが、目を凝らしてもセミの姿はない。

入り口から少し坂を登ると少し開けた広場。

空気にはなんだか獣のようなにおいが混じっている(別に動物がいるようには見えないが、獣のにおいとしか言い表せないにおいだ)。

公園という言葉からもたらされるイメージより、もうちょっとワイルドな感じ。

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見晴らしは良いし、頂上まですぐ行ける。ちょうど良い運動。

さらに頂上付近まで登ると遠くまで視界がひらける。周辺は多くの工場が立ち並ぶ工業地帯だ。

公園には暑さのせいか人っ子ひとりいないが、おそらく普段は近所の人の憩いの場だろう。このような公園はどこにでもあるのではなかろうか。

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この公園は岡山県の瀬戸内海沿いの水島(みずしま)という場所にある。

先ほどの頂上からの光景のように岡山県内最大の工業地帯があり、三菱自動車の工場なんかもある。水島港は日本国内でも9位の貨物取扱量を誇っている。

そんな産業の中心地となっている水島の工業地帯だが、その前身は戦前につくられた三菱重工業水島航空機製作所だ。

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公園の山から降りてきました。

さきほどの公園がある亀島山は、もともと瀬戸内海に浮かぶ「亀島」という島だったそうだ。周辺の干拓や埋め立てによって山として残ったので「亀島山」となったらしい。

この亀島山の地下には太平洋戦争の末期、三菱重工業水島航空機製作所が空襲を避けるために疎開させた地下工場があったそうでその遺構が今も残る。

今回の目的はその見学ツアーだ。そろそろ集合時間が近づいてきたので集合場所へ向かう。

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見学ツアーには保険が必須

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亀島山(写真奥)の向かいにある水島勤労福祉センターで集合。

ちょっとした観光気分だったが、地下工場跡はきちっと整備された場所ではなく、危険が伴うらしい。

地下に入る前に保険に入らなければならないそうだ。

一体どんな危険なところなのか、無事に帰ってこられるのか心配になってきた。

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そんな心配をよそに集まった参加者は20人ほど。でも3分の1くらいは岡山の歴史系のイベントでよくご一緒する知っている方々だ。めちゃくちゃホーム。

亀島山地下工場を語りつぐ会吉田さんの案内で向かう。

よそ様の庭を通る

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鍵を開けなんの説明もなく入っていく吉田さん。戸惑う参加者。

5分ほど歩いた先には一軒の住宅

吉田さんは慣れた様子で門の鍵を開けて敷地に入っていく。

…あれ?地下工場跡の見学のはずでは?

そう思ったのは僕だけでないようで「え?ここ?」「入っていいの?」と他の参加者にもハテナマークが浮かぶ。

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でもついて行くしかない。よそ様の庭を進む一行。

いたたまれないような気持ちでこそこそ進むと、フェンスの向こうにトンネルが見えた。

実は、地下工場跡に向かう土地は今はすべて私有地となっていて許可を得て通らせてもらったそう。普段公開されていない(できない)のも納得だ。

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私有地からしか近づけないのに大きく掲げられた「亀島山地下工場入口」の看板。

中に入る前に内部の説明を受ける。

縦のトンネルと横のトンネルがあみだくじのように接続されている。

先ほど訪れた公園の地下ほぼ全域にわたってトンネルがはりめぐらされ、全長はおよそ2kmにも及ぶ。

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「下」の字のヽところにカタツムリが張り付いている。

施錠されていたゲートが開く。

看板にカタツムリを見つけた参加者は「あら珍しい」とか「最近カタツムリ見なくなったね」などと和気藹々と地下見学スタートだ。

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安全のためちゃんと全員分のヘルメットを用意していただいていた。

僕は頭が大きいのでヘルメットがちゃんと入ると嬉しい。

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トンネルの中は外界と隔絶した異世界。

中に一歩足を踏み入れると空気がガラッと変わる(雰囲気という意味でも言葉通り空気自体も)。

ちょっと土っぽい匂いと、なにより驚くほど涼しい

地下工場ではとても劣悪な環境で作業に従事していたそうだが、ことに気温に関してだけ言えば快適だ。

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入り口から伸びるトンネルここで横のトンネルとぶつかる。

写真の印象より実際は広く感じて圧迫感はない。高さは約4m、幅は約7mもある。

他の参加者も写真を撮って回ったり、吉田さんに質問したりしてめちゃくちゃ熱心だ。僕は観光気分で来たのでちょっと恥ずかしい。

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入口からのトンネルと横のトンネルとの接続部には途中までレンガが積まれている。

ここからも吉田さんの案内で進む。このレンガは戦後に住人によって手が加えられたものらしい。

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素掘りの部分。ちょっと崩れているようにも見える。

ここが作られた戦争末期には資材が不足していたので、コンクリートで覆工されているのは入口や縦横のトンネルの接続部など重要なところのみ。

ほとんどは素掘りのままだ。

もちろん安全なルートを通ってくれているが、崩れているところを見ると心配になる。実際、当時は落盤事故で犠牲者も出たらしい。

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