今回で連載300回(!)の書き出し小説です。300という数字はコンビニで支払うお金だと思えば大したことない数字ですが、牛丼だと思えばとても食べきれない大きな数字です。またピクセルで言えば微々たるものですが、寿命でいうと300歳生きた人間はまだいないわけで、そうするとやっぱりすごい数のような気がします!
いつも作品を送ってくれる作家のみなさん、読んでくれる読者のみなさん、ありがとうございます!それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!
書き出し自由部門
屋根から雪が滑り落ち、どすんと冬が尻餅をつく。
七世
冬の尻餅という擬人化が、近づく春まで連想できる。
梅の花が咲いた朝、町は春より先にくしゃみをした。
夢雀
雪だるまは自分が溶ける未来を知っていたから、今朝もやけに優しかった。
夢雀
カレーと雪だるまは二日目がいい。
脱帽しないならこっちだってイヤホン付けたまま参列してやるよ。
もろみじょうゆ
行きに見た白鳥はもう居なかった。薄い布のような雲が底にオレンジを沈ませた空に広がっていた。
カズタカ
居ない白鳥、どことなく不穏な空。純文学のようにも怪奇小説のようにも読める。
転校生は、シリウスという所から来たらしい。
フェノール藤宮
ケンタウロスは下りのエスカレーターが苦手だ。
タカタカコッタ
絵を想像するとたしかに!って感じで面白い笑
フェンシングの剣でタオルを取ってもらった。
もんぜん
モスキート音はずっと鳴っている。聞こえる者はもういない。
suzukishika
四合目で遭難した私は、新米山岳救助犬の良い練習台になった。
prefab
天使の輪に触れた手が焼けこげた瞬間、彼女の羽は黒く染まった。
レエ
窓を結露の水滴がつたう。外から見ればきっと私は泣いているように見えるだろう。
七世
元彼は「捨てた女」の顔を何度も見に来たし、山桃の花はわたしを養分にして咲いた。
さくさく
上座の社長が落水した途端にバナナボートはバランスを崩し、偉い人から順に海に落ちていった。
さくさく
さくさくさんの「幅」が伺える二作品。
アイコンを星空に変えた。窓を持たない君のために。
みよおぶ
滑り落ちたヨーグルトが足の指の間をなぞった。
井沢
臓器ってユーモラスだね!さまざまな機能とカタチ!
白石ポピー
子供番組のお姉さんに元気いっぱい言って欲しい作品。
「車、買い取りまっせ」ハトが喋った。
いちもくれん
死にたくなったらおいで。ボクが国際結婚してあげる。
いちもくれん
誰だよ!笑
ダンクシュートされた岩城さんのカツラが、まだリングの上に残っている。足早に立ち去ったママさん達の真緑のスリッパは、散らばったままだ。
なかもりばなな
なにもかもが放置された光景には、侘び寂びに似た味わいがある。
つづいては規定部門。今回のテーマは『鬼』です。節分は終わりましたが、鬼のリアルは節分以外にあります。さまざまな鬼をお楽しみください。
規定部門・モチーフ『鬼』
来年の話をすると、病床の鬼は寂しそうに笑った。
八重樫
鬼が笑うの慣用句がこれほど哀しい物語になるとは!
日サロから出てきた鬼は紫色になっていた。
メネギマ
しばらく見ないうちにツノが伸びたね。
ビールおかわり
⏩ デート中ずっと、鬼教官は無口だった。