特集 2025年8月18日

書き出し小説大賞 294回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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数多ある大谷CMの中でも特に目を引くのが「大谷翔平共同開発」を謳うスポーツ飲料シンクロンコーワだ。
きっと大谷のことだから我々の想像以上にがっつり開発に関わっていることだろう。球場から研究所へ直接駆けつけ、真剣な眼差しで顕微鏡を覗いたり試験管を振ったりしてる大谷の姿が目に浮かぶ。二刀流どころではない。まだ抜いてない刀をあと何振り持っているのか。……大谷翔平、底しれぬ男である。それでは今月もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門 

人ごみに流されて、はぐれたけど同じ花火を見ている。
人馬一体勘

花火大会の人混みを体験したことがある人なら、はぐれたことがない人でもすごく実感できる作品。

駅弁の小さな小さなおしぼりを薄く薄く広げるところから僕の帰省が始まった。
ビールおかわり

駅弁のおてふきって手の雑菌広げてる感しかないよね。

夜の線路はいい。どこまでも続いているのに僕をどこにも運ばない。
七世
妻も子も寝た午前2時、押し入れに眠っていたファミコンは問題なく起動した。さあ、俺は今から30年前にダンジョン4Fで見捨てた仲間たちを助けに行く。
終末のお天気
温めなおさないまま、味噌汁を飲んだ。遠くでバラエティ番組の笑い声が聞こえる。
蚊に翻弄されながら、上の階へ駆け上がる。
ろっさん
溶けた小脳が、激しくテールライトで熱帯夜を炙った。
merumo
門番が空調服を着ていたので、きっといい王様だろう。
たこフェリー

ホワイト王国だね。

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全て帳消しにする恋が始まるのだ、と。思った。カンカン踏切が鳴る。
小鳥待て
僕の知らないオシャレなアルコールをぐびぐび呑みながら彼女は言った。「政治家をやろうと思うの」
しらさぎ

卒業証書をチラ見せしながら。

私が持ち歩いているのは、日傘ではない。日陰だ。
小野芋子
人の提案でモテるな。
井沢
狙いを定め小バエを叩く、インド人ユーチューバーが儲ける。
たに
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つづいては規定部門。今回のモチーフは夏恒例の『怪談』です。瞬間冷凍の怖い話をどうぞ!

書き出し規定部門・モチーフ『怪談』 

スルーパス。スルーパスに次ぐスルーパス。そうしてそのままその球は、王家の谷へと向かう。
白石ポピー
坂の上から林檎と首が転がってきた。
ガンダーラ磯崎

瞬間でビジュアルが浮かぶ!迫る!

彼は裏表がないよ。物理的に。
吉田髑髏

⏩ 『怪談』続きます

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