特集 2025年7月14日

書き出し小説大賞 293回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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意地を張ってる場合か!──昨夜リビングに行ったらテレビから飛び込んできた言葉である。どういう展開で出た台詞かは分からないがなぜか胸を打たれた。ときどきそういうことがある。不意に耳にしたテレビの声になぜが波長が合ってしまうとき。意地を張るのは止そう、素直にそう思えた。後悔はたいてい無自覚な意地に起因している。
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待します!

書き出し自由部門

敵は信用金庫にいる。
terayo

そんな涼しげな場所に……憎い。

夏ってのは晴れでも雨でも居場所がない。
井沢
迷子になったパスワードは知らないオジサンに付いていった。
ぐるりん

サイト側が勝手につくる安全なパスワードを見るたび「だろうけど!」と思う。

銅のつるぎも、いまや貴重品である。
フェノール藤宮

転生ブームの果に。

水たまりは夏空の収集を続けていた。
みよおぶ
夢から落ちた羽根が、目の前の地面にそっと着地した。
田中えっぬー
ねえ、カーテンの裏、まだ見てないでしょ?
箭田儀一

ホラーみがある。

ソロキャンプから1人消えた。
まおん

話者の視点を考えるとこれもホラーみがある。

いったん広告です
向日葵は口約束を守らなかったし、朝顔は男にしがみつかないと生きていけなかった。
さくさく
始まってもいない人から「やり直さないか」の一行が送られてきた。
しらさぎ
私の木陰で果実を食うな。
白石ポピー

正午の木陰が狭い。

スタンディングオベーションもそこそこに私は犯人を追った。
ビールおかわり
食卓にある叩かれたカツオに罪は無かった。
CMの後すぐ終わります
この日の大雨で喜んでいたのは蛙と中継ぎだけであった。
prefab
ヘドバン界で、私は赤べこの異名を持つ。
七世

ヘドバン界での赤べこ呼ばわりはかなり名誉なことではないか?

クーラーの壊れたラーメン屋も、すべて仮想現実であった。
たこフェリー
隙間時間に、隙間時間でつくった、ヅラをかぶってみる。
にら将軍ハルナ

どうでもいいライフハックありがとう!


 

続いては規定部門。今回のテーマは「イベントスコア」でした。イベントスコアとは指示文にもとづいてパフォーマンスを行う言葉の楽譜のようなものです。詩的な命令を味わってください。

書き出し規定部門・モチーフ『イベントスコア』

穴に落ちなさい。泣き終わったら、登りなさい。
小鳥待て

何度でも。何度でも。

多くの音をだし続けなさい、調和して音楽になるまで。
八王寺義昭
走りなさい。握った500円に全ての喜びを込めて。
うにねこ

⏩ 規定部門『イベントスコア』続きます

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