特集 2024年11月18日

書き出し小説大賞 285回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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ん?やっと秋めいたのか?それとも深まったのか?もう冬なのか?てか春なのか?どっちなんだーーーい!(きんに君)11月なのにこの暖かさ、例年にない異常気象を肌で感じながら、今月もみなさんをめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

しつけ糸をほどく。明日、喪主になる。
さくさく

喪主、それは二度目の成人式です。

ホットプレートが冷えていく。「本日の主役」のビンゴが揃わない。
さくさく
秋は死んだ。コスモスは咲かなかった。
フェノール藤宮
九九の隙間は無限だ。
ビールおかわり

そう気づいた瞬間、算数は数学になる。

遠くで生まれた音が部屋を揺らした。
寂寥
何でもないフリをして、
何にもない話をして、
今日もきれいに平行線を描くのだ。
ゼリー
「そのフォントだとB級感が足りませんね。」男は濁った目を光らせた。
暖簾の部屋干し
又貸しの末帰ってきた僕のスティックのりはキャップがなかった。
スガリ
初老に照れてる時間などない。
井沢

わかりみしかないw

いったん広告です
サバンナで鍛えた視力でも青空の奥は見えない。
ガンダーラ磯崎

子どもの頃、青空の向こうが無限なんだって知ってめちゃ怖くなった。

6.5畳の広い部屋は心が分散しそうで、トイレに座り込んで暗闇を見ていた。どこかで金木犀が咲いている。
なかもりばなな
小道に続く凸凹は、譜面の様に何時もの順番でガタコトを鳴らす。
merumo
君の伏せた瞼に似た月が車窓を並走する、君の眠る山からの帰り道。
ぐるりん
水に挿した花は未だ自分が死んでいることに気づいていない。その趣きが好きだ。
七世

これ読者がそれぞれの花を想像するんだろうな、僕の場合は水仙でした。

完璧な月夜だ。あなたが月に居ないこと以外は。
七世
このサボテンは気が狂っています。
正夢の3人
そうだ、京都、行こう。うん、滋賀、通るね。
なかもりばなな

完全にネタでもこれだけ笑わせてくれると採用せざるを得ないw

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続いては規定部門。テーマは『不条理』でした。お前はどこのカフカじゃ?

規定部門・モチーフ『不条理』

水道屋さんは蛇口から現れて排水溝へと帰って行った。
ろっさん

しずく型の顔で出てくるベテラン水道屋さん。

「このレタスは眠っています」と書かれた袋を手に取った。
南極行太
見えていたが間に合わなかった。
タルク石

不条理でなくても引きの強い書き出し!

⏩ 規定部門『不条理』続きます

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