特集 2024年3月15日

書き出し小説大賞 277回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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書き出し小説3月号更新です。
最近SNSを賑わせた一連の真木よう子さん騒動、こういう騒ぎは基本遠ざけるに限りますが、彼女が自らの炎上に対して放った言葉『見て欲しいものは見てくれないのに、見てほしくないものだけ見るーー!』にはなにか、SNSに留まらな世界の本質が宿っているように感じました。
期待はつねに裏切られる、夢が叶うのはたいていその夢をあきらめたときだったりする、そうしたままらなぬ現実へのもどかしさが世界を回しているような気がしてなりません。それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう。

書き出し自由部門

村長のこたつがしまわれた、春だ。
ぴすとる

こたつ収納の儀

思い出し笑いの原因が君だと気付いた粉雪の午後。
人馬一体勘
羽毛布団を捨ててしまって、きみの体温のかたちが思い出せない。
さくさく
冬眠が終わり、春眠が来た。
がらむまさら
暖かな陽射しを浴びながらいやらしいことを考えておりました。
寂寥
カメムシの浮いた湯船からは薬湯の匂いがした。
ぐるりん
私たちはもうチョコレートを溶かして再度固めることはないの。
井沢

同世代の男性陣はただうなずくしかなかった

彼のだった歯ブラシで鏡を磨く。いらなくなった私の髪が湿気で頬に張り付く。
なかもりばなな
今日は素晴らしい獣に従って歩いた。
kyou
いったん広告です
このテレホンカードの女性が妻なんです。
ナックルボール

テレカに印刷された名前も知らない清楚系アイドル、中年なら誰でも共有できるイメージ

こちら側のどこからでも切れます、の逆側に活路はあった。
prefab
泥酔した上司をみんなで担いでトランポリンに投げつけると、二度三度跳ねたのち、谷底へ落ちていった。
もんぜん
痛みのない痛みに身体を丸めて電脳の海を彷徨っている。
S.マウンテン
箸で砂肝を串からとる力でつくられた電気です。
にら将軍ハルナ

砂肝は串から抜いたあと転がる懸念があるので細心の注意が必要

植木鉢の土を入れ替えて気がついた。土の匂いは、子供の頃かいだ春の匂いだ。
おの
鶴はウインナーを食べない。
白石ポピー

イメージしてみる。たしかに食べなさそう

手毬唄をなぞるように連続下着泥棒の手口が変化していった。
g-udon
嘘だらけの遺書を生きてるうちに見られた。
たこフェリー
早口な男のボディランゲージは手話通訳を凌駕した。
ビールおかわり
これを指して「かわいい」は間違ってます、こういう種類の性病なのです。
さくさく

かわいいが正義とは限らない


 

つづいては規定部門。今回のテーマは『悪魔』でした。書き出し魔法陣にいろんな悪魔が召喚されましたよ!

書き出し規定部門・モチーフ『悪魔』

どちらを選んでもいいんですよと悪魔は親切そうに笑った。
beco

周到は悪魔は選択肢を用意する

そして君はサーバの電源を落とした。涼しい顔でエナジードリンクを飲みながら。
おの
大丈夫、カロリーは熱でとけちゃうからね。深夜二時、揚げたてのドーナツを差し出す笑顔はまるで聖母のようだった。
たごさく

⏩ 書き出し規定部門・モチーフ『悪魔』続きます

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