特集 2024年2月17日

書き出し小説大賞 276回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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月イチリニューアル一発目の書き出し小説でございます!

十年以上隔週でやってきた連載が月イチペースになることで、締め切りは遅く感じるものの、月日の流れは相変わらず、加齢に伴い加速中というトリッキーな時差ボケを体感しております。あと見ていた番組が知らないうちに所さんの番組になってることがよくあります。歳なのでぼちぼちやって行きます!よろしくお願いします。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門 

中年男としていま産まれたと思えばいい。おはようございます。
正夢の3人目

生まれ変わり系ではなく、生まれ直し系ノベ

私が「プロフ…見て…」と言い始めたら、迷わず撃て。
八十嶋

ベンチャー社長の人生訓をリツイートしだしたら殺して。

口付けは煙草の味がした。ふやけたフィルターから1秒、貴方の唇を奪ってやった。
さくさく

こういう切れ味のいいハードボイルドはもう小説の一節にしかないのだろうか。

膝から崩れ落ちた。コーンフレークが宙を舞った。
レモンういろう
あの5尺玉もキミの瞳に映れば5ミリほどだ。
節度亜図夢
バックミラー越しに勝訴の文字を見た。
もんぜん
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尿酸値バトル!俺のターン!高血圧メタボからの痛風再発でエンドだ!
いずも

勝った感じの勢いだけど自爆だよねこれ(笑)

「あらやだ。若白髪。・・・私ったら自分で"若"だなんて。ふふふ。」鈴木幸三、四十四歳。山羊座のAB型。
カズタカ

容赦なく素性を明かすという新しいレトリック

果汁、それは血液。
井沢
勝手に神にされて、勝手に殺されちゃった。
たこフェリー
3年ぶりに会う父は法被を着ていた
ナックルボール

法被にしか出せない哀愁ってあるよね。

「この街は、私の想像が生み出したの。ほら、そこを曲がると教会」彼女は俺の家までの道案内をしだした。
七世
ストローで退屈を吸い込む彼はこんな商品を買っています。
白石ポピー

着地が見事。

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家を出て5分で帰宅。俺は散歩が下手だ。
吉田髑髏
僕以外、ハワイ行きに乗った。
ろっさん

40年後のマコーレー・カルキン

スコップで掘っただけの簡易トイレに苦虫を噛み潰したような顔で大便をひりだし枯れ葉で尻を拭いてベルトを締め直した大尉は言った。北だ。
高田
「気をつけ」と「選手宣誓」を繰り返して僕は背泳ぎ。
ビールおかわり

たしかに背泳ぎそういう動き(笑)

カップ麺の蓋を最後まで剥がさない君に恋をした。汁を飲み干したのを見て恋が醒めた。
鯨谷いさな
鼻のてっぺんにできたニキビを連れて、初デートに向かう。
S.マウンテン
三年ぶり四回目の没落だ。
prefab

七没落八栄華だよ!

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書き出し規定部門・モチーフ『オノマトペ』

つづいては規定部門。今回のテーマは『オノマトペ』でした。絶対音感ならぬ絶対語感をもった作家たちのシン・擬音をお楽しみください。 

犬がフローリングの床をかしゃらんかしゃらんかと歩いてきた。
もんぜん

軽く滑りながら駆け寄る感じ、出てる!

すっこもりん、と布団に潜り込んだ。
おもち
この甘エビ、ヌリヌリの食感だ。
吉田髑髏

⏩ ドケドケ言っていた救急車はドウモドウモと去って行った。

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