特集 2023年11月12日

書き出し小説大賞 272回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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テレビのドッキリにおける偽番組が好きだ。決して放送されることのない、ご当地グルメ番組の台本が気になってしかたない。
しかしわたしたちが生きるこの世界もまた、ドッキリ用の偽番組かもしれない……と、つねに現実を疑いながら、今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう。

書き出し自由部門

僕だった君へ。
おの

回想録のような気もするし、SFにもホラーにも読める。

十一月の蚊は頬から僕を吸った。
寂寥
うるせー説明書だな、俺のキスで黙らせてやるよ。
もろみじょうゆ

状況がいまひとつわからないけど、かっこいい(笑)

明け番の羊飼いは、自分で編んだ星座を持っていた。
さくさく
手にした花束は、想いを告げる前に枯れた。
さくさく

枯れちゃったけど、どうぞ。

君の常識はいつも僕の決意を揺るがしてくれる。
節度亜図夢
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名も知らぬ犬の微笑みが、ひとつ記憶に残っていた。
たごさく
犯人がパーカーを人質に立てこもった。
もんぜん

パーカーなのに助けたくなる。

生前葬の最中性欲と食欲が止まらなかった、僕は僕の葬式の最中誰よりも生きていた。
prefab

周りの人、さぞ嫌な思いをしたと思う(笑)

「父が粛清されたのは、12の時だったわ。」俺のこめかみに銃を突きつけながら、女は言った。
げたのにつけ
「ビッグバンの事をずっと考えてればいい。」
6期生
ショートカットのかわいいエミリー。本当はいないけど甘えん坊でオシャレなエミリー。
正夢の3人目

いないの知ってるぶんたちが悪い。

雨漏りの音を聞いたことがあるかい。最初は優しく、ほおっておいたらやがて滝のようになるんだよ。
葱山紫蘇子
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つづいては規定部門。今回のテーマは『温泉宿』でした。湯けむりの向こうの、謎の真相とは?!

書き出し規定部門・モチーフ『温泉宿』

湯は満ちた。
suzukishika

まだ何もはじまってないのに、いきなりマックスの書き出し。

「こんな源泉なんてなければよかったのよ!」とは犯人の女将の談。
青一月
こんな湯煙じゃダメだ!殺人事件が丸見えじゃないか!
おの

死体の性器とか見たくないし。

あの湯けむりに蒸されたのが俺、それを売ったのがあの人。
鯨谷いさな
お客さんお客さん、ここ……出るよ。
だん

湯が?!

宴会は、女将さんのベースソロから始まった。
八王寺義昭

⏩ かけ流しって、ジャズのCDのほうなんですか?

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