特集 2019年7月3日

日本の回転火鍋は、けっこう本格的な本場の味

これから伸びてほしいB級海外グルメの大穴「回転火鍋」。

日本の外食といえば定食屋・居酒屋・ラーメン・カレー・ファミレス・焼肉・パスタ・回転寿司などだろうか。日本に長く住んでいれば、それらはおなじみの味で安心の味でもある。

とはいえたまには予想を超える食事を食べてみたい。知らない味が食べたい。

でも外国料理はマイナーなポジションだ。誰かと食事をする時に正体不明の食事を提案したところで「それはちょっと…」と断られても仕方がないところ。

そこで外国料理の中で推しのひとつ、中国「回転火鍋」を紹介したい。中国からやってきた回転火鍋は、回転寿司をアレンジしたものと思われる。回転寿司同様、回転火鍋もおひとりさま歓迎なのだ。

ぼくは中国によくいるので、 中国のカルチャーとどれほど違うのか気になっている。どこまでリアルなのか、どこまで入りやすいのかをレポートしたい。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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大久保・回転火鍋

大久保駅北口改札口からすぐのところに回転火鍋の店、その名も「回転火鍋」がある。日本初登場だからこそできる店名だろう。

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大久保駅からすぐ。新大久保じゃないよ。

中に入ると、回転寿司のようにレーンがある。お昼どきで人は少なかったけど、中国語ネイティブな人たちが時々話しては鍋をつついている。

まさに本家回転火鍋!

中国でもたまにあるけどめったに見かけない回転火鍋が日本でお目にかかれるなんて!

しかも中国人のお客さんが多いとはいえ、外には日本語の看板があり、中では日本語も使える。つまりハードルがすごく低いのである。

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寿司でないなにかがまわっている!(感動)
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好きな場所に座って注文しよう!

まず値段はこうなっている。

・スープ298円
・火鍋タレ100円
・1品100円
・肉680円
・食べ放題2980円

肉とスープとタレで1078円で、そこからお皿をとっていくことになる。肉がなければ398円スタートだ。お腹いっぱい食べても1000円台で済むので食べ放題にしなくてもいいだろう。

ここでマストなのはスープと火鍋のタレだ。回転寿司のようにとった皿の食べ物を生で食べるわけにはいかないので、茹でるためにはスープが必要になる。スープは辛いと辛くないのを両方用意。火鍋のタレもマスト。茹でた食材を自作のタレにつて食べる。

肉はマストではないが、鍋には肉を入れるのが自然なのでひとつはオーダーしておきたい。野菜などは回転寿司のように流れてくるので、好きに皿をとるといい。

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スープとタレは火鍋店によって様々なバリエーションがある。ここはカレー味が珍しい。
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様々なソースを思う存分入れてまぜる!
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肉はこれらから選択。
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一串いくらなので、お椀をとらずに串をとる。
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この白菜の場合は、串に刺さってないので皿を1枚とる。
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この場合は串でとる。
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刺身も100円。さすがに白菜とは原価が違いそう。
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中国らしさとは

中国らしいポイントは鍋や利用者だけではない。飲み物も、日本のものにくわえ中国のものがソフトドリンク、アルコールともに用意されている。

中国ではよくみる、各テーブルにあるQRコードをスマートフォンでスキャンすることによる注文も可能だ。中国のテクノロジーが大久保の火鍋屋に導入されている。

おまけに中国の日本料理屋にいくと変な日本語があるが、ここでも変な日本語がある。まさに店内は中国だ。

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60種類以上の食材を用意しているというが、どうみても数がたりない。この適当なゆるさがいい。
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ペットボトルで工作した食材加湿マシンがある。なければ安く作れ、が中国流。
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「イガ」
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中国と同じようなシステムで頼めるうえに、同じような変な日本語がある。

具のラインアップはまさに中国。むしろ中国同様の具材を日本でよくそろえたなあと驚いた。すばらしき再現率。

おそらく日本の中国系食材屋から仕入れているのだろう。中国系食材屋が気になりだしてきた。

結局ラム肉と皿・串4個食べて値段は1597円。一皿のボリュームも中国の本家同様で、回転寿司のように皿の山ができることはない。

ところでレシートで、この店の名前は「回転火鍋」でなく「らーしんず」と知る。ともかくおいしかった!

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ごちそうさま!
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新小岩・串串香

もう1軒の回転火鍋の店、新小岩の南口駅前にある「串串香」は大久保の「らーしんず」とは、結構違う。

大久保のらーしんずは上海よりちょっと南の福建省の人がやりくりしているが、串串香は中国東北の一番北の黒竜江省の人がやりくりしている。

火鍋はどちらかというと、内陸の重慶というところが有名で、重慶発のメジャーな火鍋チェーン店もある。ということで黒竜江でも福建でもない。

地域性は鍋スープにあり、例えば重慶や四川とかだとめちゃ辛いのだ。回転火鍋は、スープも食材も選べるので、地域的な食の伝統とか関係なく食べれちゃうのだ。

フリーダムな串串香は、鍋スープに味噌汁を選択することもできる。火鍋という名前でありながら火鍋を超越したグロウバルな鍋にメタモルフォーゼしていた!ちなみに味噌汁で食べてみたけどあまりおいしくなかった!(笑)

ちなみに値段では、ひとつ88円、スープが380円、各種肉がひと皿485円と安い。2店目にして早くも価格競争が起きている。

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新小岩南口のここから、少し小道を入ったところにある。
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昼も夜も回転してます!
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山盛りの串!
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中国の点心系も流れてくるのがうれしい。なおせんたくばさみのようなもの1つで串と同様88円
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ラーメンどんぶりで流れてくるすいかとパイナップル

このように、食材が山盛りで、1品あたりの単価が安い。皿ではなく串に統一されているのも特徴だ。

また、真ん中についたてがないため、向かいの人の顔が見えるのもここの味。

こちらも中国人のお客さんが絶えず来ている。中国通の人と行くと中国通の人がうれしくていろいろ喋り、そこに周りの人々が「中国に興味ある日本人と話せる」とばかりに話しかけてきて、いろいろ交流ができるだろう。

中国の本家火鍋屋や食堂でもあまり会話をほかの人とすることはないけれど、中国に関心がある日本人が珍しかったのだろう。日本語で国際交流できて得した気分だ。

中国人と交流をしつつ、グルメを味わいたいなら串串香は要チェックだ。

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中国のタレの味は濃いめ。これがやみつきになる。またパクチーもいくらでもかけられる。
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中国のタレでなく、ポン酢であっさりといくこともできる。伝統的火鍋の常識の枠を超え、フリーダムだ。味噌汁とポン酢縛りで食べてみてもいい。
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鍋だけど、他人を気にせず食べたいだけ食べよう!フリーダムだ。
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麺でシメは日本も中国も同じだ。
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オーナーさん「ありがとー、駅前の安い物件さがしてるよー」
2号店も出す気まんまんだ。いろんなところに広がってほしい。加油!

回転しゃぶしゃぶや回転焼き肉がほしい

実は回転火鍋については以前ライターのネッシーあやこさんも記事にしているのだが、中国在住者からの視点も交えて改めてレポートしてみた。

最近では東京をはじめ日本各地でエスニックフードが増えていて、韓国、台湾、中国、タイ、ベトナム、インドなど様々な料理が食べられるようになった。

しかも外国人による外国人のためのレストラン・食堂だから、味も日本人に媚びない本格派だ。最近ではタピオカミルクティーがブームになり、インドのビリヤニも少しずつ認知されてきた。

とはいえ何を食べればいいかわからない、メニューを見てもわからないという中で、おひとりさまでも食べられる回転火鍋は気軽に楽しめる異文化料理だと思った。

あと回転火鍋があるなら回転しゃぶしゃぶとか回転すき焼きとか回転焼き肉とかお一人様用のがあるといいなあ。

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