特集 2018年12月27日

回転火鍋の具は、揚げパンと魚卵入りの魚のすり身が最高だ!

なんということだ。ほぼ同時期に2店舗もオープンしたという。

最近、インターネットを賑わせていた「回転火鍋」をご存知だろうか。回転寿司のようなレーンの上を、火鍋の具がくるくると回っており、好きな具が選び放題。一人でも存分に火鍋を堪能できるというものだ。

今から1年と2か月前、上海ではじめて回転火鍋と出会った(その時に書いた記事がこちら)。そして思ったのだ。近所にもほしい。無理なら、東京都内に上陸してくれないかと。

そんな願いが先方に届いたのかどうかは定かではないが、この冬、奇跡が舞い降りてしまった。これは、行くしかない。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。

前の記事:牛丼の松屋じゃない松屋をめぐった

> 個人サイト たぶん日記

布エプロンをしながら食べる、新小岩の回転火鍋

 2018年11月、東京都内に「回転火鍋」のお店が、2店舗立て続けにオープンした。2店舗あるなら、両方行きたい。まずは新小岩の「串串香」へ。駅の北口を出て、歩いて1〜2分の距離にお店はあった。

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細い脇道の先に看板が光る
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「一人一鍋 健康飲食」 1串88円
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おお、具が右から左にゆっくりと動いている

店内の中央にぐるっと回転レーンが敷かれており、席数は15席〜20席くらいだろうか。満席になると、トイレまでの道のりが、きゅううっと極細になる規模感だ。店員さんとも、他のお客さんとも距離が近い。

鍋のスープは8種類。

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「焼き鳥ねぎま(塩味)」が存在したこともあったのか

メニューにあとから足されたらしい、手書き文字の勢いがたまらない。「藤椒」がなんのことを指すかわからず、尋ねたところ「青い山椒」だという。山椒のビリビリ感が好きな者としては頼まざるをえない。

鍋の汁を待っていると、「エプロン使いますか?」と聞かれ、手渡されたのは茶色い布だった。左胸あたりに「串串香」と店名が刺繍してある。え、これ、着ていいのか。

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布エプロン。ほんのりバイト気分が味わえるな
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白菜や春菊が1食分ごと、束ねられた状態でくるくる回る

さて。具材の数々に目をやると、白菜、春菊などの馴染み深い食材が並ぶ一方で、名前をお尋ねしたくなる具材も多数目に留まった。

見たことあるような気がするけど、何かが違う。パラレルワールドの食べ物みたいだ。この感覚は、上海で食べた時の印象に近い。

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かなり太いが、春雨?
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これはたぶん干豆腐
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こちらは凍り豆腐だそうだ。店員さんいわく「高野豆腐とは、似て異なる」。スポンジみたいな食感だなぁと思った。スポンジ、食べたことないけど
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内臓と思わしき部位

見たことはあるが、鍋の具として使うのは初体験な具材も通り過ぎていく。

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なぜあなたがここに
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厚切りですね
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ブロッコリーの鍋、なくはないけど、火鍋と合うのか
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さすがにこれは……と思っていたら、鍋用じゃなく、デザート用なんだそうだ

鍋のスープだけでも十分味がしっかりしているのだが、タレも大量に常備されている。

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タレは無料。腐乳は、沖縄の豆腐ように近い味
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砂糖や昆布ぽん酢もある
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刻みパクチーも取り放題。トング、ねずみの国の人の手の形だ

「ゴマダレ」「腐乳」「ニラペースト」の周辺を眺めていたら、「その3つは人気よ!」と後ろから声がしたので、たっぷりお皿に盛ってみた。どのタレも美味しいんだが若干しょっぱめだ。

お酒をください。

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ホッピーセットがある!

おすすめは揚げパンと魚のすり身

数ある具材のなかから、一押しを2つ紹介したい。

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まず、この油麩みたいなやつ

これはおそらく、中国の揚げパン「油条」ではないかと思う。

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火鍋用の鍋、自宅っぽさ満点である
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ぐつぐつ煮ると、鍋汁をいい感じに吸い込みながら、ほろほろ、とろっとろに溶けていく

食感は、せんべい汁、もしくはオニオングラタンスープを吸い込んだパンに近い。これだけずっと一週間くらい食べていたい。最高だ。

もう1つは魚のすり身(魚卵入り)である。

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正体を知らぬまま、口に含もうとしたその時、先端から、細かいブツブツが漏れ出し「ファッ!?」と声をあげそうになった
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まるごと食べようとすると高温すぎて火傷がこわい。だが、分解すると、魚卵が外界に漏れ出しそうになる

食べ方の正解がわからない。だが、味は美味しいので、おすすめはする次第だ。食べ方知っている人、いらっしゃったら教えてください。

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ちなみにお肉は、回転レーンから取るのではなく注文式だった。ラム肉は480円
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店員さんから「中にしゃぶしゃぶ足します、すぐ食べます(原文ママ)」と解説があった乾麺。たぶん「すぐ茹で上がる麺ですよ」と伝えたかったんだと思う
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1分しないうちに茹で上がった

人は大きく分けると、未知なる食べ物をすぐ口にしたがる勢と、なるべく避けようとする勢の二手に分かれるのではないかと思う。もし前者だった場合、気をつけてほしい。

回転火鍋は、つい我を忘れて、いろんなものを放り込みたい衝動にかられがちだ。欲望が目の前を巡回するのは危険すぎる。自分の欲望と、実際に食べられる量とのバランスを見失う。誘惑の鍋だ。

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自制心を働かせたつもりが、気がついたら12種類、鍋にぶっこんでいた。なお、お会計は、串やクリップを数えて計上する

日本初登場じゃないぞ。ぎらぎら看板の夜のお店

さて、もう一軒行きます。大久保の「辣辛子(らーしんず)」というお店である。こちらも駅から近い。大久保駅の北口を出てすぐ、1分かからないくらいだ。

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入り口の様相が鮮烈だ。歓楽街を彷彿とさせる

階段の装飾も激しい。

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全部の階段に「回転火鍋」の文字。ちなみに日本初登場の回転火鍋店は2017年末に誕生した札幌のお店なはず。君は、日本で2番目か3番目だ

ところで、わたしがよく利用している三軒茶屋駅の階段は、一段一段に文字が刻まれており、無言ながら声が大きい階段なのだが、それと少し似ているなぁと思った。階段は情報過多になると声を発するのだ。

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これが三軒茶屋駅の階段。回転火鍋に比べると優しいかも
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ちなみに回転火鍋のお店は、階段を昇ってもなお、歓楽街を継続していた
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蘭の花が大量にある。総額いくらだろう

深夜22時半ごろに向かったところ、回転レーンのまわりで鍋をつつく客は、わたし以外にいなかった。大丈夫だろうか。色々。

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いや、時間のせいかもしれない。ちなみにこちらは1串100円。肉類は680円。
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タレは一皿100円。こちらにもぽん酢がある
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こちらの鍋の汁はぜんぶで6種類。「椎茸風」「カレ風」も気になるが、今回頼んだのは「重慶風マーラー味」(辛かった)
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ドリンク類。ハングルが並んでいるの、大久保っぽい
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なんとなく手にとってしまったお茶
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当初「ハチミツフウミ」の文字に不安を感じていたのだが、するする飲めた。ただし筆者は飲み物の違和感に鈍感なほうなので、この感想、たぶん参考にならない
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魚卵入りの魚のすり身、こちらのお店にもあった!
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ブロッコリーもあった
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ぺらぺらした餅。手に持った当初、カピカピだったが、さすが餅。鍋汁のなかで大復活を遂げた
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見た目的にいちばん動揺したのはかぼちゃの皿だ。冬至とはいえ、生のかぼちゃがレーンをくるっと回る光景は、犬が麦わら帽子をかぶっているみたいな不思議さがある

ところでこのお店、店内奥にカラオケルームが2部屋ある。回転火鍋とカラオケが併設されている……ってどういうことだ。情報量が多い。

カラオケルームでは、外国語を話す男女混合の若者グループが、ウェイウェイな空気を醸しながら大いに盛り上がっていた。

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詳しいことはわからないが、小田和正の「ラブストーリーは突然に」が聞こえた
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カラオケルームに持っていく食べ物を、店員さんが「写真撮る?」と見せてくれたので、撮影したやつ

そしてわたしは、「東京に回転火鍋がやってきた」という現実を堪能した結果、「やっぱり本場(中国)に行きたいな」と思い始めていた。

異国情緒が目の前でくるくる回っていると、海の向こうの食文化への渇望に火が付いてしまうらしい。まさか、こんな展開になろうとは。夢がかなっても欲望に終わりはなかった。

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回転レーン、ぴかぴかだ。どこで販売しているのだろう

こらえるべく、しばらくは、しょうゆ味や味噌味の和風鍋をたらふく食べて、気持ちをそらしたい。


次は何が回るのだろう

ところで2018年、原宿では回転スイーツが流行った。皿に乗ったてのひらサイズの可愛いスイーツたちが、回転レーンの上で、くるくる回るという。

今や東京は、スイーツも鍋の具も回る場所になったのである。新たにまた何かが回り始めても不思議はない。今度は何が回るのだろう。食べ物は動いてなくても美味しいけど、動いていると面白いから、もっと色々回ってみてもいいのかもしれない。

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新小岩のお店のトイレに「奥の院」と書いてあるの、良かった
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