磁石で貼り付いて、自動で鳴き出すセミのおもちゃ
この記事の公開月は1月である。夏なんてもう遠い昔のように感じられる。なのに「セミ」である。季節感がまったくないなあ、と思うかもしれないが、「冬に夏を感じる」のが目的なので、みなさんもこれを読みながら暑かった頃の気持ちを呼び起こして欲しい。
そんなわけで、思い付いたセミのおもちゃを早速つくってみた。
セミが磁石で家電にくっつく
→ 裏側にあるスイッチが勝手に押される
→ それにより音声再生がONになり、セミが鳴き出す
という単純な仕組みである。
普段は木にとまるセミが、家中のいろんな家電にとまって鳴き出すのだ。飛んでいる(手で持っている)ときには鳴かず、とまってから自動で鳴き出すという点が絶妙だと思うのだが、どうでしょう。
鳴いている様子が動画じゃないと分からないので、ぜひこちらをご覧あれ。
ミンミン鳴くのはミンミンゼミで、ほかにも日本にはいろんなセミがいる。なので鳴き声は3種類搭載して、毎回ランダムで変わるようにした。
シンプルに楽しめるおもちゃが完成した。これの中身がどうなっているのかも、少し紹介したい。
セミの外装をがんばって作る
このネタ、実は半年以上前から考えていたのだけど、なかなか制作に踏み切れない理由があった。それは、自分は昆虫の見た目が苦手だということ……。普通こういうのは「好きだから作る」のだけど、今回に限っては苦手なのに作らないといけない。
じゃあ作らなければいいじゃん、と思うかもしれないが、ネタとしてはすごく気に入っているのだ。見た目さえ我慢すれば良いものができるに違いない。そういう確信を持って、強い心で制作に望んだのである。
あくまで「セミっぽく見えること」を追求したので、特定の種を再現したわけではなく、かなりデフォルメしてある。もしかすると、昆虫好きの方には奇妙な形に見えるかもしれないけど、そこはごめんなさい。
セミの中身をコンパクトに作る
あとは、「スイッチを押すとセミの声を鳴らす」機能を実現するための回路が必要だ。小さいセミの中に収めるためには、コンパクトに作る必要がある。
電源は、ボタン電池だとパワーが足りなかったので、「4LR44」というカメラ用の小さい6V電池を使用することにした。
動作を制御するマイコンは、「ATtiny85」という小さいチップを使用。入力電圧を5.5V以下にする必要があるので、6Vから3.3Vに降圧する「DCDCコンバータ」を置いて、あとはセミの鳴き声を再生する「MP3再生モジュール」と「スピーカー」を配置すれば完成だ。
セミをいろんなものにくっつけて遊ぶ
磁石がくっつくものなら、どんなものにでもセミをくっつけて遊ぶことができる。家のなかにあるものだと、主に家電が遊び場になるだろう。木ではなくて、家電に生息する新種セミだと妄想しながら遊ぶと楽しいよ。
楽しい。楽しいのだけど、やっぱりちょっと怖いかも。寝ているとき枕元にこれを置かれると、ビックリして飛び起きてしまう自信がある。
外装がプラスチック系の家電だと、セミをくっつけて遊ぶことができない。そんなときにはこれを使おう。
どういう風に鳴くのか、まだ動画を見てない方は最後にぜひ見ていって下さい。
もともと見た目が苦手だったセミ。でもここまで作る過程でだんだんと慣れて、愛着がわくまでになってきた。これがあれば、冬でも夏の感傷にひたることができるし、がんばれば屋内でもセミ取りが楽しめる?
わりと手軽に遊べて面白いおもちゃに仕上がったのではないだろうか。
磁石で貼り付けるとスイッチが押される構造について
セミで採用している仕組み、どこかで見たことがあると思った方がいるかもしれない。
これ、私が以前つくって商品化が決まっている「なんでもぜんまい」と同じ構造なのだ。
実はこの「磁石で貼り付けることでスイッチが入る(そしてモーターが回転する)」というアイデアで、実用新案を取得している。せっかく知財を持っているのと、取得するのにかなり費用がかかったこともあり、この仕組みを他にも応用できないか? と考えていて、ピッタリとアイデアがハマったのがセミだった。
よく面白いアイデアに対して「特許を取った方がいい」とアドバイスする方がいるのだけど、必要な費用について考慮されていないことが多い。実用新案は約2~30万円で、特許だと約5~60万円かかるのが一般的なようだ(弁理士に依頼する場合の総額。自分で全部やればもっと安いけど、慣れないと特許の文章を書くのは大変だし、回避可能な意味のないものになってしまう可能性がある。経験者以外はやめといた方がいいと、個人的には思う)。
しかもその後、維持費が毎年かかり続けることになる。確実に権利を活用できる保証がなければ、個人で取得するのは厳しいだろう。
何が言いたいかというと、「個人で特許を取ってガッポガッポ」というのは、一筋縄ではいかないということです……。セミ、流行らないかなあ。