すごいところでした
山口は思った以上にすごいところだった。ういろうも秋吉台も崖も海も、もっと売り出したら世界的にも引けを取らない観光地になると思う。もしかしたら僕が知らないだけですでにそうなっているのかもしれないけれど。
そういえば取材中にのらいぬを何匹か見かけた。最近ではあまりのらいぬいないだろう。
厳密には野良なのか放し飼いなのかはわからないけれど(懐いていたので放し飼いの可能性が高い)、これについても山口出身のアイデム藁品さんに聞いたところ、犬は昔からそのへんに普通にいた、とのことだった。きれいな水、そして野良犬。山口のイメージを構成する要素が徐々に積み重なっていく。
話はさらに脱線するが、上の犬の写真で他に気づくことがないだろうか。
ガードレールが黄色いのだ。
これは昭和38年の山口国体に向け、山口県としての特色を出そうと、ガードレールを名産の「夏みかん」色にしたものらしい。昭和38年は西暦1963年、つまり50年以上前の話である。
ガードレールってそういう感じに色を変えてもいいんだ、という疑問半分、そういうことを実際にやっちゃう行動力は偉いと思う。今年は東京オリンピックがあるので東京もガードレールを塗ったらいいと思う。
話は地元の人頼りの旅に戻る。鱒の養殖場でおじさんにお勧めされた元乃隅神社は日本海に面した側にある。
入り口だけ見ると普通の鳥居だが、ここでは鳥取砂丘や金閣寺なんかと並び、CNNが選んだ「日本の最も美しい場所31選(Japan's 31 most beautiful places)に選ばれたことがあるらしい。
海へと続くがけ下を見下ろすと、123基もの赤い鳥居がずらっとならぶ景色が見られる。これは確かに美しい。
この鳥居は実際に歩いてくぐることができる。ただ、途中ですごい斜度のスロープがあって雨の日には恐ろしいくらいに滑るので注意してもらいたい。
鳥居をくぐった先は岩山で、これがまた火星にでも来たみたいな景色で素晴らしかった。
鳥居の入り口まではよくある賑やかな観光地なんだけれど、この岩山まで来るとピタリと音が消える。まるで異世界に踏み込んだみたいなのだ。波の音と風の音だけが遠くに聞こえる。
ちょっと怖いくらいの荘厳さである。
この崖は龍宮の潮吹と呼ばれていて、波の高い日には打ち寄せた波が狭い岩の隙間を逆流して吹き上がってくるらしい。この日は穏やかだったので竜は吹き上がってこなかったけれど、吹きあがってきたらこんなところに立っていられないだろうなと思う。
岩山のてっぺんに祀られたお地蔵様には地元の方なのだろう、おじいちゃんが線香を灯してまわっていた。僕たちでも足を滑らせないか心配になる斜度の岩山である。おじいちゃんはまっすぐな足取りで登っては線香を灯して、降りては次を登って、を繰り返していた。
元乃隅神社は僕たちやCNNにとっては観光地なのだけれど、地元の人たちにとっては普通に手を合わせに来る場所なのだ。そこがちゃんと共存しているのが日本の神社だなと思う。
山口、よかった。天気だけが悪かったけど、それ以外全部がよかった。
日の入りまでまだちょっとだけ時間があったので、看板に従って「千畳敷」に寄ってから新山口へと戻った。
山口は思った以上にすごいところだった。ういろうも秋吉台も崖も海も、もっと売り出したら世界的にも引けを取らない観光地になると思う。もしかしたら僕が知らないだけですでにそうなっているのかもしれないけれど。
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