やっぱり山形は山がいい
旅のあいだ、いろんな山の表情が見られてとても癒やされるまちだった。羨ましいのはそういった自然の景色はなかなか無くならないし変わらないという事だ。300年以上前に芭蕉が見た山の景色、90歳になる白十字のおばあちゃんが若い頃に見た山の景色が、行けばまた同じように見られるのだ。
あの美しい夕焼けの景色も、この先も変わらず山形にある。そういう景色がたくさんあるのがとても羨ましく感じる旅だった。
山形市街地では本当に多くのカフェを薦めてもらった。長く続く名店も多いし、芸工大生が地域を活性化しようとオープンしているカフェもある。
どこにしようかと迷った挙げ句、やってきたのは90歳になるおばあちゃんが営む「白十字」という喫茶店だ。
この辺りに60年くらいいるそうだが、そんなおばあちゃんのお勧めはどこなんだろう?
「やっぱりこの辺りが一番好きよ。あとは、昔は暇さえあればお友達と西蔵王に車で行ってたね。」
私が車が運転できないと言うと「あら珍しい。私は昭和30年頃にとったの。当時は車自体があまりなくて、私が受けた試験会場では女性3人しかとってなかった。お店はこの辺だけだったから、みんな自転車で充分だったのよね」と教えてくれた。
いまだに自転車をこいている自分が時代遅れに感じた。
改めて自転車で行ける範囲でお勧めを聞いた。時おり常連さんが会話に入ってくれて、とても和やかな時間を過ごすことができた。
で、やってきたのは文翔館。今回の旅でたくさん候補にあがった一つである。
むかし県庁として使われていた所で、なんとおばあちゃんが喫茶店を始める前に勤務していた所でもある。
しかし残念なことに、この日はメンテナンスで入ることは叶わずだった。
だけど、若かりし頃のおばあちゃんが働いていたというエピソードが加わったことで、外観だけでも充分楽しむことができた。出会った人の背景に触れられるのが、この旅の一番の醍醐味なのだ。
おばあちゃんと常連さんのお勧めはもうひとつ。今でもしょっちゅうお茶会をしているという回遊式庭園をもつ公園だった。もみじ公園と呼ばれる通り、紅葉の時期が特に美しいそうだ。まちの中にこんな落ち着いた場所があるなんて素敵だ。
こんなに手入れされてるのに、なんと無料で開放されている。
園内の庵で出会った学生は気に入りすぎて授業の合間にしょっちゅう来ていると言っていた。
さて、そろそろ旅も終盤。締めくくりは、汗を流しに百目鬼というこわい名前の温泉へ向かった。田んぼの真ん中にあってちょっと面白いらしい。行ってみると利用客も多い人気の日帰り温泉だった。
お湯はぜいたくに、源泉かけ流し。ちょうどいい温度でヌックヌクだ。だがここは3分以上は浸かってはならないというルールがある。なんでも高濃度の成分のため、それ以上つかると湯あたりをしてしまう恐れがあるそうなのだ。
湯船には腰をかける石がたくさんあるので、3分ほど経ったら石にあがる、を繰り返した。ただ、内風呂はそれで良いのだが露天風呂でやると田んぼから丸見えになってしまうので要注意である。
こんな感じで、裸で開放感いっぱいのなか、最後はとても山形らしい景色を堪能することができた。
「車がないのは致命的!」といわれながらも、地元の皆さんのおかげでずいぶん満喫することができた。文翔館に入れなかったり芸工大のナポリタンが食べれなかったりと残した課題は多いので、また来なければと思う。
その時また自転車で登場するかもしれないけど、そこは許してほしい。
旅のあいだ、いろんな山の表情が見られてとても癒やされるまちだった。羨ましいのはそういった自然の景色はなかなか無くならないし変わらないという事だ。300年以上前に芭蕉が見た山の景色、90歳になる白十字のおばあちゃんが若い頃に見た山の景色が、行けばまた同じように見られるのだ。
あの美しい夕焼けの景色も、この先も変わらず山形にある。そういう景色がたくさんあるのがとても羨ましく感じる旅だった。
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