懐メロのようなまち
懐メロを聞くと、私たちはその時代を思い出すことができる。
もうその頃に戻れないことにキュンと切なくなるけれど、そういう思い出がある事自体が喜ばしいことだと知っていて、最後は心があたたまる。
上田で見た、温泉街や田園風景、別所線の丸窓電車や木造校舎もそれと同じだ。
ところどころで、自分が懐かしいと思える風景に出会うことで昔を思い出し、キュンとなって、そして最後はあたたまるのだ。
またきっと、訪れよう。
続けてお土産をもう一つ。
長野県一帯に展開するスーパーのリンゴである。むかし上田に住んでいたというご夫婦は、毎年この時期になると温泉ついでにツルヤでフジリンゴの箱買いの予約をするという。
並んでいたリンゴを全種類買い、家で食べ比べた。
これがどれも見事に当たり。シャッキシャキで瑞々しく、濃厚な味がした。
シナノスイートは王道のTheリンゴといった味、ぐんま名月りんごはハチミツ入ってるのかと思うくらい蜜たっぷり。中でも気に入ったシナノゴールドは、洋ナシのように芳醇で、しかもダントツで大きいのでお得感がすごかった。
すっかり暗くなってしまったが、おじさま方に人気の上田城跡にむかった。
城跡と聞いていたので何もないのかと思ったら、立派な櫓門や石垣が残っていた。
この断崖の下には、昔は千曲川の分流が流れており、天然の要害だったそうだ。
約450年たった今、川の位置からだいぶ離れているのが時代を感じて面白いのだと言っていた。
上田駅周辺で圧倒的に人気だったのは柳町だった。
300mほどの小さな通りには格子造りや蔵造りの家々が並び、いい雰囲気。
今は食事処やカフェとして使われているのだという。
私が眺めていた建物は「ルヴァン」というパン屋さんだった。
たまたま外で出会った人がそこの店主で、お店が全て閉まっているのを憐れんでか「パンいる?」と言ってお店に残っていたパンをひとつくれた。ウソみたいな話だが本当だ。
甲田さんはこの柳町が地元だそうだ。
おススメは、烏帽子岳という標高2000mほどの山。
まさに烏帽子のようなとんがった形で、ここから眺めるのも、登るのも好きなのだと言っていた。
甲田さんのお店は渋谷区の富ヶ谷にもお店があるようなので、今度絶対行く。
さて、いよいよ旅も終盤。
別所温泉の旅館の若旦那が好んで通っていたというフォーク酒場へむかった。
楽器が演奏できるのだという。
私は何も弾けないのだが、誠実そうな若旦那が一番熱をこめてススメてくれた場所だったので気になってしまったのだ。
しかも夜の0時まで開いているというのがありがたい。
思い切って入ってみると、日曜日だからかお客さんはまだいなかった。(前日の土曜日は入りきれないほど満杯だったそうだ)
予想外ではあったけれど、店内にはたくさんの楽器が並び、店主が面白そうだったので一杯飲むことにした。
すると店主の山崎さんがいろいろ楽器を弾き始めてくれた。
ユーミンや吉田拓郎、それに上田市出身で中学の同級生だというH₂Oの「想い出がいっぱい」なんかを弾き語ってくれた。
山崎さんが若いころに流行った曲は、ちょうど私が音楽の授業で習っていた曲だったりして、不思議と懐かしさを共有できた。
山崎さんは、歌いたい人がいれば何でも弾けるように人間ジュークボックスでありたいと言っていた。そう、ここは歌ってもいいのだ。
ほかにお客がいないのをいいことに、思い切って歌ってみることにした。
だって伴奏者がいる状況で歌うなんて、なかなか経験できないからだ。
カラオケとはまるで違った。音程や早さ、長さなんかを合わせてくれる。
音程が頼りなくなると、サポートするように一緒に歌ってくれたりもする。
超気持ちいいじゃん!
最後に「あの素晴しい愛をもう一度」を一緒に歌った。
私は小さいときに父がよく送り迎えの時に歌ってくれたことを思い出してちょっと泣きそうになってしまった。山崎さんは笑顔で「音楽ってそういうのが良いんだよな!」と言ってくれた。
アルペジオの居心地が良すぎて、すっかり遅くなってしまった。
本当はどこかでご当地グルメの「美味だれ」を食べる予定だったのだが、そんな余裕はない。美味だれとは、にんにく醤油のタレがかかった焼き鳥のことだ。
しかしこんな事もあろうかと、イトーヨーカドーでタレを買っていた。地元の人がこのタレと鶏肉さえあればなんでも美味だれだ、と言っていたからだ。
22時発の最終の新幹線の中で食べた。
こんな感じで、上田の旅は終わった。
上田市の皆さんのお陰で、美味だれのように濃厚でパンチのある旅となった。
ありがとうございました!
懐メロを聞くと、私たちはその時代を思い出すことができる。
もうその頃に戻れないことにキュンと切なくなるけれど、そういう思い出がある事自体が喜ばしいことだと知っていて、最後は心があたたまる。
上田で見た、温泉街や田園風景、別所線の丸窓電車や木造校舎もそれと同じだ。
ところどころで、自分が懐かしいと思える風景に出会うことで昔を思い出し、キュンとなって、そして最後はあたたまるのだ。
またきっと、訪れよう。
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