秩父線がかっこいい
熊谷駅にもどって秩父線に乗る。


秩父線は三峯神社のラッピングトレインだった。神社のラッピングトレイン。聞いたことない現象だったので2回言ったぞ。
秩父線は各駅停車なので、駅に止まるたびに窓の外を眺めることができる。

初めて乗った秩父線、前半は思いのほか住宅地を走っていたのだけれど、寄居駅を過ぎたころからだろうか、窓の外が急に観光地っぽくなってきた。




長瀞駅の雰囲気の良さといったらなかった。
駅の前には広場があって、ちょっと座って休めるように売店がおいしそうなものを売っている。駅を出てどちらに向いて歩いても品のいいお店が連なっている。けっして木刀とか売っていない(どこかで売られていたらすみません、今度買います)。



この素晴らしい世界が都内からだと1時間くらいなのである。この時点でもうすっかり埼玉のことを好きになっている。



こういう甘い豆みたいなお菓子がびっくりするほどおいしいのも旅情である。

商店街を歩いて旅の雰囲気が最高潮に高まった頃、目の前にすごい景色が現れる。ここからが長瀞の本気だった。




長瀞の石だたみはごつごつしつつも、ちょっと歩くとソーシャルディスタンスを確保しながら座れる岩が見つかる。みんな自分の岩をみつけて弁当を食べたりお茶を飲んだりと、めいめいに流れを眺めてはぼーっとしていた。
寝てる間にここに連れてこられたら天国に来たと思うに違いない。
そしてこの天国のような場所から10分くらい線路沿いを歩くと、でかいサメがいるから絶対行ったほうがいい。

埼玉県立自然の博物館
埼玉県立自然の博物館は長瀞の川をすこしだけさかのぼったあたりにある。

このでかいサメは「カルカロドンメガロドン」という名前の古代ザメ。この巨大なサメの歯がほとんどまるごと長瀞の川のほとりで見つかった。それをもとに復元したのがこのカルカロドンメガロドンの模型である。全長12mある。

サメ好きでなくてもメガロドンという名前を聞いたことがある人は多いんじゃないか。映画「MEGザ・モンスター」の中でジェイソンステイサムが戦った古代ザメである。あのときジェイソンステイサムは最終的に素手で戦うのだけれど、このでかさを見るとそれはないなと思う。
このあたりでは古代ザメ以外にも珍しいパレオパラドキシアという哺乳類の化石も大量に見つかっている。

海なし県といわれる埼玉にも、かつては巨大なサメが泳ぐ海があったのだ。
化石や石にちょっとでも興味のある人はうかつに近づくと一日中いることになるので注意である。僕がそうなりかけた。


宝登山神社へ続く道
長瀞の石畳と自然の博物館で石欲(そういう欲がある人は)を満たしたあとは、いったん駅にもどって逆方向に歩いてみてほしい。駅でおすすめされた宝登山(ほどさん)神社の鳥居がある。

参道の両側にはたくさんのお店が立ち並んでいて、とても全部紹介するわけにはいかないのだけれど、いくつか僕のおなかがゆるす限り食べたものを紹介したい。
まずは長瀞せんべい。

竹で編んだかごにせんべいをぽいぽい入れて店内を買いまわるスタイルである。中でも気になったのがこちら。

濃い味好きの人のために2度づけせんべいというのを見たことがある。硬くてしょっぱくて美味いやつだ。
しかしここは5度つけてきた。

5度づけせんべい、味の方はどうかというと。


体に罪悪感を感じるくらいにしょっぱい。
こういうサービスが過剰になってる商品って、おもしろいけど味は二の次な場合もあるんだけど、この5度づけせんべいは期待通りというか、予想していた倍は濃かった。ここまでやっていいんだ!と自信をもらえた感じである。
せんべいのしょっぱさに呆然としながら歩いていると、今度はものすごく優しい香りがしてきた。
たい焼きである。しかもそば粉を使ったたい焼きらしい。


そば粉たい焼きは目隠しされて食べてもそば粉たい焼きだとわかるくらい明らかにそば粉たい焼きだった。隠し味とかではなくそばの味が前面に出ている。もうほとんどそば。そばの中にあんこが入っていて、焼いてあるのだ。しかもこれが美味い。今度そばにあんこを乗せて食べてみようと思った。

観光地によくある石売ってる店も、長瀞にあると不思議と説得力がある。マダムたちが石売り場を取り囲んで品定めしていた。

建立から1900年の宝登山神社
寄り道しすぎたけど、たどり着いた宝登山神社は荘厳なたたずまいだった。


宝登山神社はなんと建立から1900年という。すごい、三国志よりも古い。

そして参道からすこし外れるとこの景色である。埼玉の底力を見た気がした。

この夢みたいな景色から、振り返ると酒蔵があるのは反則だと思う。とくにだれに勧められたわけでもないけど、土地全部が勧めてきてるだろうこれは。


酒蔵は醸造風景を見学もできるし、併設のお店でできたての日本酒を買うこともできる。

飲みたいのはやまやまだけれど、まだ取材途中である。ここはぐっとがまんして、と思ったら甘酒を見つけた。やった!


ちょうど桜の時期だったのはラッキーだったが、お店も博物館も天国みたいな岩畳も、いつ来てもどれだけいても飽きないと思うのでおすすめです。