ヤンバルクイナを求めて
生き物を見たいという話をしていたら、ヤンバルクイナは確実に見ることができますよ、とオススメしてもらった。
ヤンバルクイナは沖縄の固有種で、日本で唯一の飛べない鳥。天敵がいないために進化の中で飛ぶことをやめた鳥だ。
私は飛べない鳥が好きで、ニュージーランドの飛べない鳥「キーウィ」も、天王寺動物園に見に行ったことがある。
沖縄でお会いした観光客の方は「見た」と言っていた。地元の方でなくてもヤンバルクイナを見ることができるのだ。
沖縄の中でも本島北部にしか生息していない。絶滅危惧種に指定されており、1500羽程度しかいないそうだ。その辺りの道路を走っていると、ヤンバルクイナを轢いてしまうこともあるようで、上記のような看板をよく目にした。
朝や夕方、雨上がりによく目撃できるそうだ。私も車を走らせながら轢かないようにヤンバルクイナを求め、車を止めて探したりもした。だって見てみたいのだ。しかも、オススメしてくれた方は確実に見ることができると言っていた。
国頭村に「ヤンバルクイナ展望台」があった。高さが約12メートルもある巨大なヤンバルクイナの形をした展望台だ。本当のヤンバルクイナは全長30センチちょっとなので、比べられないほどのデカさ。足の太さに驚く。
実際のヤンバルクイナの足も太いのだけれど、そんなの比じゃない。私は大きいことはいいことだ、と思っている。だって本来は30センチちょっとなのに、12メートルくらいのあるのだ。大きいことに痺れる。しかも中からは景色も楽しめるのだ。どんだけ多機能なのかと。
大きさに危なく満足するところだった。ヤンバルクイナを見たいという夢をこの巨大ヤンバルクイナで満たしてしまうところだった。違う、私は本物のヤンバルクイナを見たいのだ。探さなければならない。
巨大カジュマル
この巨大ヤンバルクイナの後ろ側に「大石林山」がある。ここもオススメしてもらった。空気が違う、とその方は言っていた。ヤンバルクイナを探しは継続しつつ、「大石林山」を訪れた。
地球とはなんだろう、と思う。難しい問題だ。しかし、ここに来たらいきなり解決した。「これが地球だ!」と書いてある。地球とは大石林山なのだ。2億5千万年前の古生代の海の中で形成された石灰岩が、地殻変動で地表に現れできたのが大石林山らしい。
空気が違う、とオススメしてくれた方が言っていた意味がわかる。簡単に3文字で説明すると「パワー」、1文字で説明すると「力」である。そのようなものを感じるのだ。山の中に石灰岩があり、それらが雨風で侵食され、独特の形を形成している。
大石林山には大小合わせると数千本のガジュマルがあり、その中でも巨大な「御願ガジュマル」は樹冠のまわりが日本一広いと言われている。確かにその前に立つとパワー、あるいは力を感じた。
大きい、やはり大きい。先のヤンバルクイナもこのガジュマルも大きい。大きいことは人を興奮させる。このような大きな人間になりたいと心から思うのだ。いまダイエットしているから、適度に大きくなりたいけれど、私は。
生ヤンバルクイナ
大石林山でパワーをいただいた。この力で私はヤンバルクイナを目撃したいと思う。パワーを得た私には不可能はないのだ。絶滅危惧種のヤンバルクイナを目撃できるのだ。なぜならパワーを得たから。
私は一言も野生のヤンバルクイナを見たい、とは言っていない。ヤンバルクイナを見たいとだけ言っていた。そして、オススメしてくれた方も確実に見ることができると言っていた。それはなぜか、国頭村にヤンバルクイナ生態展示学習施設があるからだ。
こちらの施設ではヤンバルクイナが生息する環境を再現した観察ブースがあり、そこに「クー太」というヤンバルクイナが暮らしている。彼はかなり賢く、観察したいんでしょ、という我々人間の期待に応え、広いブースなのに、ガラスの前に来てくれるのだ。
足が早く時速40キロで走ることもできるそうだ。餌の時間を理解しており、その時間になると走ってもくれる。目線ください、と言っていないのに、心を読んでくれるのか、バンバンに目線をくれる。嘴も鮮やかでかわいい。
ヤンバルクイナに関する資料も充実しており、ヤンバルクイナを生で見ながら学ぶことができる。そのつぶらな瞳を見ていると、守りたい、彼らを守りたいと強く思う。ロードキルをしないように安全運転が必要だ。