デコ屋敷でひょっとこの面を買う
次も観光案内所で教えてもらった情報より。デコ屋敷である。
デコ屋敷というのは玩具の故郷といわれていて、この一帯の家々が昔ながらの伝統そのままに張り子人形などを作っている場所らしい。
「伝統」といわれるとなんでも許してしまいがちだが、デコ屋敷はただならぬ雰囲気を発していた。
インパクトのあるだるまや天狗にひるみそうになるが、意を決して中に入るとかわいい張り子やお面なんかがたくさん飾られていてさながらピューロランドのようである。
屋敷では観光客用に張り子人形の色付け体験などが行われている。店内のお面やら張り子やらはどれも売り物で、見ているだけでも楽しいのだけれど、中でも一角に売られていたひょっとこ面に目が留まった。というかこれを見て見ぬふりできるお客はたぶんいない。
そういえば福島といえばひょっとこ踊りなのだ。JRの駅を降りたところにもこんなアピールがあった。
ひょっとこ面を買おうかどうしようか迷っていると、お店のお父さんが出てきてかぶり方を説明してくれた。
この時点で気づいたがこのおとうさん、さっきの看板に出てた人だな。
戸惑う僕のすぐ目の前で、おとうさんはひょっとこへと少しずつ変身していく。
そうすると…
―あっというまに完成ですね。
「いや、これで完成ではないんです。こんなぼーっとつったてたらひょっとこじゃない」
―え?
お父さんが面をかぶり、腰を落とした瞬間、座敷が舞台と化した。
「ひょっとこはせっかく口が出てるでしょう、だから口で表情を出す。それには母音を口にするといいんです。」
―母音?
「そう、母音。見てて」
ひょっとこ踊りがおとうさんの導火線に火をつけた。周囲の温度が上がったのか僕の体温が上がったのか、いつのまにか僕までほんのり汗をかいていた。
おとうさん曰く、ここで作っているひょっとこの面は他とは違って、裏面に汗止めの塗装が施されていたり、鼻に大きく穴をあけてあったりと、踊り手にやさしい作りになっているのだとか。
おとうさんの本気を見せられては手ぶらで帰るわけにもいかない。デコ屋敷のひょっとこのお面を買ってきた。読者プレゼントにしたいと思いますので、欲しい方は(全員欲しいと思うけど)ご連絡ください。この記事の文末に応募要領を書いておきます。
郡山名物クリームボックス
次はホテルで教えてもらった情報より。郡山名物「クリームボックス」である。
クリームボックスは厚く切られた食パンにミルククリームが分厚く塗られた地元パンで、福島県、とくに郡山で人気だという。
県内だとスーパーでも売られているし、パン屋さんにはだいたいあると思うのだけれど、なかでもここ「ガトーナカヤ」のクリームボックスが美味しいと聞いてやってきたのだ。
ではさっそく、クリームボックスをください!
店にあるクリームボックスを全部くれ!という勢いで注文した。
売り切れていた。
磐梯山にのぼってから来たので閉店ギリギリになってしまったのだ。聞くと、人気の日は昼過ぎに売り切れちゃうこともあるのだとか。この日も15時ごろに完売したらしい。まじかー。
クリームボックスが食べられなかった悲しみを胸にいったんホテルに帰って風呂に入った。泊まったホテルには大浴場があって最高で、すぐに復活した。
ラーメン「郡山ブラック」
郡山には「郡山ブラック」と呼ばれるスープが黒いラーメンがある。富山にも黒いラーメンがあったように思う。富山と福島は新潟をはさんでいるので、オセロだと新潟も黒くなるところだろう。
ここ「ますや」は郡山ブラックの有名店らしい。
店員さんにおすすめを聞くと、やはり郡山ブラックと呼ばれる黒いスープの「伝」」というラーメンが人気だという。それをください。
さすが郡山ブラックと言われるだけあって、黒い。これはしょうゆ入れすぎではないのか。
と思っておそるおそる一口食べてみると
スープの黒さからは予想できない繊細な味である。コクもあるし甘みもあるし、もちろん出汁の美味さも感じる。とくべつしょっぱいわけではないのだ。なんというか、昔ながらのラーメンを進化させ続けて美味しくなった感じ。
よく、飲みに行った帰りにラーメン食べる人がいると思うが、僕はどうもあれになじめずにいる。僕にとってのラーメンは食事なのだ。気合を入れて全力で食べに行くものだ。
全力で挑んだラーメンが美味しくて、この日はすっかり満足して帰ってすぐに寝た。