一部の方からは「食べ物で遊ぶな!」とお叱りを受けてしまいそうでもある今回の企画ですが、実際にやってみると発見や感動も多く、普段ただ漫然と生きていただけでは出会えなかった新しい美味に出会えましたし、そして単純に、ものすご~く楽しかったです。
大前提である「食材を無駄にしない」をモットーに、ぜひみなさんも、この新しい食の冒険、楽しんでみてはいかがでしょうか。
1軒目「ファミレス」
もちろんそこらの大衆酒場でやっても楽しそうなんですが、こうして記事にするわけですし、なるべく多くの人が共感しやすい店選びをと、今回は「お酒が飲めるチェーン店」という縛りで、3軒のお店をハシゴすることにしました。
1軒目は、ファミレスの「デニーズ」。
本日の参加者をご紹介しましょう。
まずはさっそく難しい顔をしている、

かけ合わせの家元として、負けるわけにはいかないという意気込みが写真からも伝わってきますね。


そして、「コンビニかけ合わせグルメ」の本にオリジナルレシピを寄稿されていて、さらに、「放っておくだけで、泣くほどおいしい料理ができる」という料理本の著書もある、漫画家の、

そして、実は同じく本にレシピを寄稿させてもらっている、僕ことパリッコと、編集部より古賀さん。

本日のルール
進め方ですが、まずはじっくりとメニューを眺め、参加者それぞれが「これぞ!」というかけ合わせレシピ案を決めます。
そして、専門家である百合おんさんのかけ合わせメニューを1品、それから、初心者軍団である残り3名のレシピ案のうち、一番やってみたいのを1品、つまり1店舗につき、合計2品のかけ合わせメニューを誕生させ、どちらがより美味しかったのかを判定していきたいと思います。
さて、近年「ファミレス飲み」はすっかり定番となり、メインの食事系以外にも、かけ合わせの素材となりそうなサイドメニューが山ほど。


いよいよ実践!
あーだこーだと言っているだけで楽しくて、あっというまに10、20分と時間が過ぎてゆくので、タイムリミットを設け、1店舗目のメニューをそれぞれ決定。
このようなラインナップになりました。
・「卵にこだわった濃厚カルボナーラ×コーンスープ」百合
・「特製ポテトサラダ×自家製フレンチトースト(2コ)」谷口
・「洋なしのゼリー仕立て×カットステーキ」パリ
・「特製ポテトサラダ×海老フライ」古賀
百合おんさんによれば、かけ合わせグルメいちの無作法は、食材を余らせてしまうこと。
例えばパスタとカレーライスをかけ合わせ、白米だけが余ってしまう、なんてのは言語道断。
2品、3品をかけ合わせ、きっちりと1品、もしくは食材の入れ替えを駆使して新しく別の2品の絶品メニューが生まれる、といった形が理想的というわけです。
そんな百合おんさんのメニューは、さすが経験値が違うというか、間違いないことがすでに頭の中で想像できている組み合わせだそう。
それに対し、初心者軍団の案はそれぞれにやりたい放題感が漂います。
僕のアイデアは、奇跡的なマッチングが生まれることにかけて、スイーツを肉のソースにするというもの。
古賀さんはインスタ映え(これもかけ合わせグルメには重要な要素だそう)を意識し、ポテサラの上に海老フライを「金のシャチホコ」状に立てたメニューを。
中でも満場一致で味に興味が惹かれた、谷口さん提案の、ポテサラとメープル風味のフレンチトーストの組み合わせで勝負に出ることに!


まずはポテサラが届いてみてびっくり!
ボリューム感自体がかなりのものな上、ゴロゴロとしたジャガイモが見るからに美味しそうです。
そんで安い!
フレンチトーストは「余らせない」を意識し、4個ではなく2個をチョイス。



正直に言って、この時点で少しポテサラが余ってしまいました。
バランスを考えるとフレンチトースト、4個のほうで良かったんだ。
という減点ポイントを反省しつつ、いざ実食してみると……






というわけで、結果はいきなりの超絶品!
リンゴや千切りキャベツまで入ったポテサラの、複雑な食感や味わいがフレンチトーストと喧嘩せず、仕上げのメープルシロップも大変良い仕事。
予想を超えた甘じょっぱい相乗効果を生み出しています。
かけ合わせ視点からすると食材を余らせてしまったのはマイナスですが、普段使いでこの2品を注文し、ポテサラの半分は普通に、半分はフレンチトーストに乗せてつまみにしてたら、それはかなりのファミレス飲み上級者ですよ。
本気でおすすめ!
さて、お次はプロの出番。

こちらをかけ合わせてゆくそうです。



実際のところはどうなのでしょうか。


上の表情が全てを語る通り、普通に美味しいんだけど、必然性までは感じられない、かけ合わせ業界で俗に言う「混ぜただけの味」という結果に。
1軒目は、百合おんさんの守りの姿勢が裏目に出、初心者軍団に軍配が上がる結果となりました。
2軒目「中華屋」
気を取り直して2軒目は、腹ペコな若者も、ちょい飲み志向の酒飲みの心も満たしてくれる庶民の味方、中華チェーンの「日高屋」。



そして、ここで出揃ったメニューはこちら。
・「バクダン炒め×ちくわの磯辺揚げ」百合
・「やきとり丼×マカロニサラダ」谷口
・「ワンタン×揚げワンタン」パリ
・「キムチ炒飯×韓国キムチ」古賀
百合おんさんは、好きが高じてフレンドリーに「磯部」(磯野、野球いこうぜ! のイントネーション)と呼ぶほどの好物「ちくわの磯辺揚げ」をピリ辛な肉野菜炒め「バクダン炒め」とかけ合わせ。
谷口さんは、マヨ風味が加わるのは間違いないであろうと「やきとり丼」に「マカロニサラダ」を。
僕と古賀さんは同じ方向性の考えかたで、共通の食材の2種の食感が一度に味わえる組み合わせを提案しました。
その中から今回は、「ワンタンと揚げワンタンを一緒に食べた時の感想が気になる」と言う理由から、僕の考えた「ワンタン×揚げワンタン」が採用に。
中華料理は熱々のうちに食べたいこともあり、まずはワンタンスープと揚げワンタンを注文し、待つこと数分。

無論、誰もこの皿には手をつけず、ワンタンスープの到着を待ちますが、これが待てど暮らせどやってきません。
10数分後、さすがにおかしいと思って店員さんに確認すると「すみません、揚げワンタンしか承っておりません」とのこと。
なるほど、つまりこう受け止められてしまっていたということか。


確かに大の大人4人で日高屋にやって来て、いきなりワンタンと揚げワンタンだけを注文する集団というのも異様でしょうし、完全にこちらのミスです。
読者のみなさん、中華屋でワンタンと揚げワンタンを同時に注文する時は、
「すみません、信じられないかもしれませんが、『ワンタン』と『揚げワンタン』をひとつずつください」
とはっきり伝えましょう。
以上、かけ合わせ豆知識でした。


さっそく実食してみますが、なんだか質感の違う2種類のワンタン、一緒にたべようとすると、やたらと食べにくいです。




気を取り直して百合おんさんのメニュー。

を合体して、



こちらは相乗効果が爆発。

のうまいことうまいこと……。
衣の香ばしさや油のコク、ちくわのフニャッとした食感と、野菜のシャキシャキのハーモニーも秀逸です。

というわけで2軒目は、専門家の面目躍如、百合おんさんの勝利となりました。
3軒目「大衆酒場」
ここに来て自分に、あるひとつの疑問が生じていました。
「居酒屋かけ合わせグルメ」は間違いなく楽しい。
そして、これまで1軒ずつきっちりと、おもしろいように大成功メニューが誕生してきた奇跡は、かけ合わせの神様からのプレゼントに違いない。
現状は、専門家と挑戦者チームの1勝1敗。
果たして、この3軒目ではっきりと勝敗をつけることに、何か意味はあるのだろうか?
そこで最後のお店では、勝ち負けの概念を放棄し、全員がその場で思いついた「かけ合わせおつまみ」をどんどん試しつつ飲む、「かけ合わせ飲み会」に趣旨を変更させてもらえたらと思います。
決着好きの読者のみなさま、大変申し訳ありません!
舞台となるのは、リーズナブルでめちゃうまい焼鳥/やきとんのチェーンとして東京都内を中心に店舗数を広げる「四文屋(しもんや)」。
僕もこれまで数限りなく飲んだことがある大好きなお店ですが、谷口さんにいたっては、先日リニューアルされた雑誌「東京ウォーカー」で始まった新連載「スキマ飯」の第1回で、熱すぎる四文屋愛を語っていたほどの大ファン。
かけ合わせ飲み会の舞台にはもってこいだ~。

よく考えると、これまでの2店舗が親切すぎただけであって、一般的な大衆酒場のメニューといえばたいていこんな感じ。
もしもこれまで同様の「かけ合わせバトル」だった場合、どれだけのメニューを把握しているかも鍵になってくる勝負でした。
が、もはやその必要もないわけなので、好きなものを頼みましょう!




このあたりを素材としまして、思いついたものを手当たり次第にかけ合わせていきます。

パーフェクト!

未知のホルモン刺しみたいな食感が楽しい。
うまい!

感想が出てこない味!

大きさが一緒という以外に特筆すべき点なし!

百合おんさんがぜひ試したかったというこちらのメニュー、またもかけあわせの神様がほほえみそうな組み合わせですが、実際どうか……


具体的に説明すると、「ごま油を使えばなんでもうまくなると勘違いした一人暮らし始めたての大学生が作った創作スープ」的な味がしました。
そんな中、四文屋で満場一致で最高の評価を集めたのが、こちらの、

四文屋の煮込みといえば、一部で「煮込み界の天一」と呼ばれるほどの旨味濃厚トロトロスープが特徴。
これをご飯にかけた「煮込みライス」は公式メニューで、飲んでいる時は基本ご飯ものは食べない僕でも例外的に頼んでしまう魅惑の一品。
が、焼きおにぎりをここに浸してしまうという発想は、こんな機会でもないと思い浮かばなかったでしょう。

う、うますぎる~!!!
こりゃあ間違いなく今日一番、次元が違う。
ただでさえ絶品な煮込みライスの「おこげバージョン」とでもいいますか、煮込みの濃厚な旨味を香ばしい炭水化物がしっかりとまとい、もはや世紀の大発見と言っても過言ではないレベルです!
