ソースせんべいとは
その前に、日本にはソースせんべいがメジャーでない地域もあるらしいので、念のため説明しておきましょう。
ソースせんべいとは、小麦粉、コーンスターチ、脱脂粉乳、甘味料などを混ぜて焼き上げた、お祭りなどの出店では定番の駄菓子。
100円くらいでルーレットが一度回せて、たいがいは平凡に10枚くらいという結果に終わるんですが、運が良ければ20、30枚、大当たりなら100枚くらい入った袋ごとが当たったりもして、子供の頃からあの、薄丸いせんべいが積み重なって円柱状になった大袋は、僕の憧れの存在でした。
そこに、定番はソースや梅ジャム、その他、いろいろと甘い味のソースなんかも用意されていて、好きなのを塗ってもらって食べるというもの。
「マジ絶品!!!」ではなく「あの素朴さが、なんかいいんだよね……」という類の味わいです。
とはいえ僕も、もう40歳。
毎年夏祭りのたびに神社に出かけて行っては「今年こそ!」と意気込みルーレットに挑戦し続けてきたわけではなく、何年か前、スーパーの駄菓子コーナーに売られているのをふと見つけ、懐かしさもあってふと手に取り、それ以来、たまに買ってみては、なんともいえない表情でかじる、といった付き合い方をしてきました。
元祖「梅ジャム」は残念ながら昨年製造をやめてしまったそうですが、僕が買った「花丸せんべい」に付いてたこれも、当時の記憶のままの味
ある日、天啓を得る
さて本題に入りましょう。
1ヶ月ほど前のある日、その日もこのせんべいを、どこか憂いを帯びた表情でかじりつつ、ちびりちびりとチューハイなど飲んでいたわけですが、突然、天啓を得たんです。
「あれ? こいつ、もしかして食材としてのポテンシャルない!?」と。
おもむろに立ち上がりキッチンへ向かうと、まな板の上にソースせんべいを1枚、ふわりと放ってみます。
お月さまみたいだね
大きさ一緒!
ピタッ! 気持ちぃ
そこからの記憶があまりないのですが、気づけば、スライスチーズ→せんべい→ハム→せんべいと重ねていたようで、
気づくとこんなものができあがっていました
ズバンズバンと包丁を入れ、4当分に切ってみたところ……
オードブル!
オードブルだ!
お正月に実家へ帰ると、たくさん並んだご馳走のお皿の端っこのほうに、こういうのが並んだ一角があった気がする。
正式名称はわからないけど、やたらと酒に合うオードブルだ!
というわけで気づいてしまった。
ソースせんべい、特定の食材同士をミルフィーユ状に重ねることにおいて、かなりのポテンシャルを秘めてるんじゃないかと。
乾燥バジルなど散らしてみました
これ、とりあえずホームパーティーで出せるでしょ。
一目で材料ソースせんべいだと見抜く人いないすよたぶん。
純粋におつまみとしてうまい
ソースせんべい自体は、けっこう甘い味がつけられてるんですが、幅広いソースを受け止める懐の広さを持っているので、意外と食材の味を邪魔しません。
何より、ハムとチーズを手づかみで気軽に、しかもちびりちびりと食べられるのが良い。
家の冷蔵庫にハムとチーズくらいしかなかったとして、しかたないからそれを箸でつまんで交互に食べているよりずっと優雅ですよ。
こっからはいろいろ試してみます
以上が、僕がソースせんべいの食材としてのポテンシャルに気づくまでの顛末でしたが、ここからは、他にどんなレシピが作れるか、思いついたものをいくつか試してみようと思います。
こんなのはどうだ?
食材をミルフィーユ状にするのに便利と言いましたが、「ミルフィーユ」といえばそもそもお菓子。
生クリームを何層か挟んだ、
「ソースせんべいのミルクレープ風」
です。
あんなに垢抜けなかった彼が、生クリームの洋風な洒脱さをまとい、まったく違和感なく美味しい。
ただ柔らかい食材を使うと、切る時、食べる時に、両サイドからムニュッと飛び出そうとしてしまうのが難点ではありますね。
そうだ、先日、「柿と生ハムとクリームチーズを一緒に食べるとうまい」という噂を聞いて、ちょうど試してみたいと思ってたんですよね。
せっかくなので、これもソースせんべいで挟んで小粋にいただいてみましょう。
「柿と生ハムとクリームチーズのソースせんべいミルフィーユ」
断面
あ、これうまい。
ワインがほしくなるやつですな。
が、柿がよく熟していたこともあり、やはり若干の「ムニュッ」問題が発生したので、
こんな風に
クリームチーズと生ハムを挟んだ時点で好きな大きさにカットし、その上に柿を乗せる、オープンサンドタイプのやり方もありかもしれません。
ミルフィーユ以外にも使えないかな?
そんな経緯で、我が家にソースせんべいのストックが潤沢だった先日、肌寒くなってきたこともあり、夕食に、今期初の水炊き鍋を作りました。
美味しい美味しいと食べ進み、ちょっとひと段落した時、たわむれに、思いつきで、入れてしまったんですよね……何をって?
もちろんソースせんべいを
自分でもどうなるか想像できていませんでした。
入れた瞬間に溶けてなくなっちゃう可能性も大いにあろうと。
が、
鍋の具材としてもいけた
箸でつまんで普通に食べられました。
食感はかなりお麩。
お麩にはない駄菓子的な甘みはあるのですが、鍋のダシをたっぷりと吸ってなかなか美味しいです。
何より、しゃぶしゃぶっぽく食べるのに適したこの形状と食感が楽しい!
肉や野菜と合わせて食べると、ジューシーさUP!
ふと気づいたんですが、これ、青森の「せんべい汁」っぽくないですか?
なんて言うと地元の方に、「八戸せんべいはそんな軟弱なもんじゃないから!」と怒られそうですが、ここはニュアンス的に、なんとな~く、ということでご容赦ください。
というわけで、
「ソースせんべい汁」
作ってみました。
鶏肉、根菜、キノコなどを醤油味で煮込んだ汁を作り、ソースせんべいをトッピング。
もう自分の中で、完全に鍋の具材として定着しました
追いSS(ソースせんべい)が止まらないくらいうまい!
そういえば先日、テレビで、青森のとある居酒屋が、八戸せんべいを土台にしたおつまみピザを出しているのを見ました。
塩辛とチーズを乗せて軽く焼いただけのシンプルなものだったんですが、あれ、うまそうだったんだよな~。
というわけで、
「ソースせんべいピザ」
めちゃくちゃ手軽で酒がすすむ!
塩辛はこのくらいで大丈夫
で、そこにピザ用チーズも控えめに乗せて、電子レンジ500w20秒でOK。
それ以上やるとイカが大爆発することもありますし、繊細なせんべいが発火しても怖いので、もし真似される場合は、慎重に様子を見ながらお願いします。
10秒くらいでもうチーズがじゅわじゅわ溶け出しますので。
最後はどうしても作らざるをえなかった一品を
「鴨のオレンジソースせんべい」
まぁダジャレですけども。
思いついてしまった以上、作らざるをえませんでした。
が、見てください。
かつてこれほどまでに高貴なソースをまとったソースせんべいがあったでしょうか?
もしかしたら本当に初なんじゃないか?
感想としては、記事前半のミルフィーユ的な使い方ほど必然性のあるものじゃあないですね、当然ですが。
けど、肉の脂や塩気を吸ったソースせんべいは良いつまみになりましたし、とりあえず肉料理なんかの下に敷き詰めておくのはありかもしれない。
お皿に流出した旨味の最後の一滴まで味わい尽くせますからね。
今回は以上のような感じですけども、今後もソースせんべいを使ったおつまみレシピ、思いついたら個人的に試し続けようと思います。
最終的には「ソースせんべいレシピ研究家」として、一生食うに困らないほどの財を成せたらいいな。
あ、そういえば、
これを食べて急に記憶がよみがえったんですが、そういえば屋台のソースせんべいにも、オレンジ味の「オレンジソース」があった!
フレンチのオレンジソースも、日本の駄菓子のオレンジソースも、根底では繋がっているんですねぇ。