特集 2018年12月19日

おれは板橋のバンクシー

破壊の美学をご家庭で!

この秋、あのすごくかっこいい謎のアーティスト、バンクシーとの距離が縮まった瞬間が、このたそがれた会社員の私にも、たしかにあったのだ。俺はバンクシーだ。板橋の、バンクシーだ!

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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シュレッダーと私

去る10月27日、デイリーポータルZのイベント「地味ハロウィン(地味な仮装をするハロウィン)」が行われ、「自分の番でシュレッダーのくずがいっぱいになった人」の仮装で参加した。

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家から会場までこの袋を地下鉄で運ぶのはきつかった。


シュレッダーのくずがいっぱいになった人を演ずるには当然、いっぱいのシュレッダーのくずが必要になるわけで、くずを生産するためにシュレッダーを用意した。

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ゲット!アイリスオーヤマ製!


1ヶ月以上かけていらないチラシなどを細断し、機密情報のいっさい存在しないクズを生産していたのである。
 

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チラシなんかもいろいろ収集しているのでいらない紙がなかなかできなくて困った。

 

バンクシーさんもシュレッダーを!


東京の片隅で、チラシの細断がもはやライフワークになりかけていたのと時を同じくしてシュレッダーが世界を席巻していた。正体不明の覆面アーティスト、バンクシーがサザビーズのオークション会場で落札された自身の作品をシュレッダーで切り裂くという騒動を起こしたのだ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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これを見た私はふと「あ、うちにもシュレッダーあるな」と思った。家にはなぜかバンクシーの作品集も存在した。

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 激しさとユーモアと優しさを内包したグラフティ達をオールカラーで堪能できる。


このバンクシビリティあふれる符合はどうした事だ、これは啓示ではないのか。今こそおれはなれる、いや、なるべきだ!板橋の、バンクシーに!(Q:なぜ板橋のバンクシーかA:筆者が東京都板橋区在住なので)

で、何をしたいのか簡潔にまとめると,額に飾ってある絵がシュレッダーでガリガリッと刻まれるのをご家庭で楽しもうということだ、レッツ・バンクシー。
 

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市販の額縁を改造


 

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覆面アーティスト、板橋のバンクシー(私ですが)
スプレーが家にゴキジェットしかなかった。

 

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シュレッダーをラックに仕込んで……。


 

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はい、おうちでバンクシー。


バンクシーがシュレッダーで切り裂いた作品は「風船と少女」。彼は同じモチーフで都市や紛争地の壁に、それぞれの地域の社会問題をえぐり出すようにグラフティを残し、それを見た人々の心を動かし、行動に駆り立てている。
私も以前、社会問題に則したテーマで年賀状用に描いた絵を額に飾ってみた。「そういえばスカスカのおせちすごかったなあ」それだけの衝動で描いたものである。
 

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板橋のバンクシーこと伊藤による「グルーポンのおせちのある静物」コミュニケーションの希薄なネットビジネスへ警鐘を鳴らした作品である(うそ)


 

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70円で落札、その時!ゴゴゴゴゴゴ......



 

動画でもどうぞ。ゴゴゴゴゴゴ……

無理矢理コンテクスト


細断されたバンクシーの「風船と少女」はそれでも高値で落札され、「愛はゴミ箱の中に」と改題されている。
板橋のバンクシーは切り刻まれてどこに落ちたのか。
 

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愛はネコのトイレの中に。本家よりはるかに粉々である。

商業主義に隷属した現代アートへの批判と、実家のネコのトイレとして再利用できたらいいし褒められるぞという自己の承認欲求との対話を表現したコンセプチュアルな作品である。ちなみにネコのトイレは実家に打診したら「別にいらない」と断られた。板橋のバンクシーを何だと思っているのか。

開発!バンクシーひも

バンクシーはなんせ謎アーティストなので会場で、はいどうもじゃあこの絵切り刻みますねなんて事はできない。WEBではメイキングも公開されているが遠隔操作でシュレッダーを作動させている。すげえな。

一方、私といえばこんな事に熱中するテンションの出所が謎なくらいで会社にマイナンバーを提供し顔、素性、身分とも朗らかなまでに明らかな身だが遠隔操作というコンセプトは守りたい。

しかしあんな大がかりな装置は使いこなせないし予算も無い、そもそもシュレッダーが家庭用だし。
 

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スマホを背後に取り付けて振動させ、絵を下に落とすというプランも考えたがいろいろ無理があってあきらめた。作戦名はスルーしてください。

そこで採用されたのがバンクシーひもである。

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要は絵を留めているクリップに釣り糸をつけて引っ張るだけだが。

これで触れずして絵がすこんと落ちてシュレッダーのえじきとなるのだ。
 

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次なる作品は「ダリダリ君」。シュルレアリスムの代表的な作家と国民的人気のアイスを言葉遊びとビジュアルで融合させた試みである。(つまりただのダジャレ)

 

ガリガリ君のCMみたいに♪ダ〜リダ〜リ〜君 ダ〜リダ〜リ〜君 ダ〜リダ〜リ〜く〜んって口ずさみながら見ると気持ちいい感じで作っています。


なんかサクサクやっているように見えるがシュレッダーの口はトーチカの開口部のようにせまく、ちゃんと紙が落ちてくれないので成功率がかなり低い。

たいていこんな感じでつっかかる。ほっそいシュレッダーの穴に落ちて行かないのだ。

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トライ&エラーを繰り返すうちにうまく細断するには上図の①と②が必要だということがわかった。

そこで、絵の下にこんなパーツをつけてみた。
 

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これのおかげかどうかはよくわからないが劇的に成功率が向上!


試行錯誤しながらバンクシーもシュレッダーがままならなくて秘かにこんなビラビラを付け足してたりしていたのか(してないだろう)と思うと胸が熱くなった。板橋でバンクシー追体験してよかった。 

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3作目は妊婦さんが身につけるキーホルダーの社畜版。資本主義社会へのアイロニーである、となんとかバンクシーっぽくしようとしている。

 

始末書ごとばっさり。


バンクシーはインスタグラムの投稿の中でパブロ・ピカソの「破壊衝動は創造の衝動でもある」という言葉を引用した。
その言葉通りかどうかはわからないが、彼の破壊活動はネットを通じて世界に広がり、様々な物語を生んだ。板橋のバンクシーもまた、その断片なのだ。 

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ラストはただの思いつきだ(今までもそうだが)


そんなミステリアスで壮大な本家にないものをひとつだけ、板橋のバンクシーは持っている。それは素顔も素性も明らかなトレーサビリティ性がもたらす安心・安全・おてごろ感だ。顔の見えるバンクシーのちいさな運動はここで終わる。ごきげんよう、私が会いたかったのはあなただった。

どかん!額がもんどりうって倒れた


バンクシーさんすいませんでした。でも家にこもってシュレッダーとたはむれるのはとても楽しかったです。
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バンクシーも掃除とか大変だったのではないだろうか。
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