特集 2026年4月14日

いまさら麻辣湯(マーラータン)入門

楊国福麻辣湯へ

最後に訪れたのは『楊国福麻辣湯』の池袋店。池袋が続くけど全部別の日に訪れている。楊国福は日本風にヨウゴクフクか中国風にヤングオフーと読むらしい。お好きなほうでどうぞ。

有識者の話によれば、楊国福こそが世界一の店舗数を誇る巨大麻辣湯チェーン。サイトを確認したら中国および海外10カ国に7000軒以上と書かれていた。日本初上陸は2017年。

訪れたのは平日の12時ちょっと前。この日たまたまなのかもしれないが客層が原宿のクレープ屋くらい若く(例えが昭和だ)、私の場違い感がすごかったけど四軒目なので大丈夫。きっと大丈夫。隣にある家系ラーメンの店と間違えているのではと思われていそうだが。

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斜め向かいの回転寿司から『スシ食いねェ!』が流れてきたが、ここに並んでいる人達の何割が知っているだろうか。

この店のシステムは、最初に訪れた新大久保の李暁七麻辣湯とほぼ同じだった。李暁七麻辣湯が後発だろうから、そちらが楊国福麻辣湯を参考にしたのだろう。テーマカラーも同じくオレンジ色。

スープは牛骨湯、麻辣湯、トマトスープ、麻辣拌(和え)、そして新商品の激香赤ラー油湯(ってなに?)。色々と気になってしまうが、他の店と比べるために麻辣湯を普通の辛さにしておこう。

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麻辣湯は牛骨湯がベースなのかな。
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「一定金額以上で麺サービスは麻辣湯の定番なんですよ」と、誰かにしたり顔で語りたい。
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SNSはX(Twitter)でもいいだろうか。恥ずかしいからしないけど。

ここは店員さんに呼びこまれてから店に入り、店内の列に並ぶシステム。麻辣湯を気に入りすぎて、こうして並んでいる時間がテーマパークで人気のアトラクションを待っている人くらいウキウキする。値段はシンプルに全商品100グラムあたり400円の量り売り。個人的には内臓肉系の充実がうれしく、骨を抜いた鶏の足(モミジ)まであることに感動した。さすがは世界一の麻辣湯チェーン店である。 

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ここでも覆面取材に来たウェブライターのふりをして列に並ぶ。でもよく考えたら今頃になって麻辣湯を取材するウェブライターなど実在しないのでは。

 

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麺類も練り物類も葉物野菜も品揃えが豊富。キクラゲなど濡れているものをとるときは水気をしっかり切りたい(節約のため)。
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肉類も充実。個人的にハチノスやセンマイなどはぜひ入れたい。
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あえての春雨抜きにチャレンジ。キクラゲと山クラゲが夢の共演。ようやく私が麻辣湯に求めるものがはっきりしてきた。それは歯ごたえのオーケストラだ!
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サービスの麺は牛すじ麺。牛すじのコラーゲンを練り込んだ麺かと思いきや、澱粉などを加えて牛すじっぽい食感にしたムチムチの小麦麺のことであるは予習済み。
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366グラムで1460円。会計を済ませると座る席を案内してくれる。
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充実のつけダレコーナー。私は使わないのだが一応確認。

麻辣湯っておいしいな

しっかり白濁した牛骨ベースの麻辣湯は、とても濃厚でコクがあり、そりゃ世界中で流行るよなと改めて思ってしまう。

普通の辛さにしたけどなかなかの辛さ。この刺激的でクリーミーな麻辣牛骨スープだからこそ、内臓系の肉が欲しくなるのかもしれない。

辛さが不安な人は、辛さ無しの牛骨スープか小辛にしておいて、つけダレコーナーのラー油で調節するのが無難かも。

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これが俺の楊国福麻辣湯。やたらと肉々しいぜ。
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スープの存在感が強いからこそムッキムキの牛すじ麺がとても合う。
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このサーカスのテントみたいな練り物が好き。
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床屋のサインポールみたいなやつは高級な魚肉ソーセージの如し。
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プルプルでコリコリの鶏の足がうまいのよ。見た目はチョコレートみたいな鴨の血は何回食べても味を覚えられないところがおもしろい。
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振り返れば毎回同じ服を着ていて、漫才コンビ『たくろう』の赤木さんみたいだなと思った。

おまけコラム:火鍋と麻辣湯の違い、そして『湯』と『烫』の違いについて

私が思っていた以上に麻辣湯はおもしろくておいしかったのだが、そもそも麻辣湯とは一体どんな食べ物なのだろう。そして私が知っている火鍋との違いはどこにあるのか。

その謎を解くために『旅する火鍋』(著:佐藤貴子/グラフィック社)という本を紐解いたところ、火鍋とは「火にかけながら食べる鍋料理のこと」と書かれていた。赤くて辛いから火鍋なのではなかった。あれは麻辣火鍋であり、中国全土には様々な火鍋が存在するのである。

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『旅する火鍋』の著者である佐藤貴子さん。『80C(ハオチー)』というサイトで一緒に「畑から始まるガチ四川」という記事を書いた。

麻辣火鍋の発祥は四川省重慶市で、現地では重慶火鍋と呼ばれるそうだ。牛脂で大量の唐辛子や花椒(中国山椒)を煮出して冷やし固めた、まるでカレーのルーみたいな素がベースとなる。

後に四川省成都市から世界に広まった火鍋(こちらは麻辣火鍋のスタンダードになる)は水分や植物油が多く香辛料の種類も豊富なのだとか。詳しくは本を読もう。

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池袋の中国食材店で売られていた麻辣火鍋の素。これは牛脂の塊だったのか。

そして話は麻辣湯に戻る。

佐藤さんから一つ注意点を教わったのだが、この記事では『麻辣湯』と書いているが、本来の表記は『麻辣烫』。『湯』はスープという意味だが、『烫』は沸騰した湯やスープに具をさっとくぐらせ火を通した料理のこと。

烫が日本にない漢字のため、代用として湯が使われているのだが、料理法のニュアンスが違うのだ。

麻辣烫の発祥地といわれる四川省南部の楽山市では、麻辣スープで串刺しの具材を煮て、串から外してタレで食べるスタイルの麻辣烫が定番だとか。同じく重慶市では煮え滾った麻辣のスープで、テボに具材を入れて火を通したもの(スープは無し)が出てきたそうだ。

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ものすごく辛そうな重慶市の麻辣烫。写真提供:佐藤貴子

西南地方の四川省で生まれた麻辣烫は、屋台料理として人気を博した後、地理的に真逆の東北地方でチェーン化されて、芝麻醤(ごまだれ)や汁有りが普及していく(こちらの記事に詳しい)。

さらにはだんだんと味のバリエーションも増えて、もはや麻辣ではない汁煮込み料理に魔改造されつつ中国全土へ、そして世界へ。その自由な変化と拡大は今も止まらない。

このような背景があり、日本には汁のある状態で伝わってきたため、『麻辣湯』という表記で意味が通っているのである。


今回の麻辣湯を巡る旅は、巨大な氷山の一角を味見した程度だが、知らないことだかけでとてもおもしろかった。私はある程度狭いジャンルの中での、店ごとの違いや個性を深掘りするのが好きなのだろう。さぬきうどんとかミールスとか。

次は麻辣湯屋の麻辣湯じゃないスープを巡ってみるのもおもしろそうだ。あるいは牛骨スープを唐辛子や花椒と煮て、具材を集めて俺だけの麻辣湯を自作しようかな。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
流行に乗るタイミングを逸してしまった皆さんこんにちは!この記事を読めばもう怖くない。しかも美味しいし、楽しい。躊躇せずに並んだ方がいいですよ。私も2回しか行ってないですが。
なんの具を入れたかで話ができるのもいいですよね。私は2軒めの店で玉置さんが揚げパン入れてるのを見てすごくうらやましかったです。次は絶対に入れよう。(林)

佐藤さんの本です

旅する火鍋 12か月のレシピと中国ローカル鍋紀行

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はげます会限定おまけ

火鍋の素でオリジナル麻辣湯を使ってみた

池袋で麻辣湯を食べたついでに、中華食材店で購入した『牛脂鍋の素』と書かれた中国版鍋キューブで、オリジナルの麻辣湯を作ってみた。

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これで麻辣湯ができるはず。

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