今回の麻辣湯を巡る旅は、巨大な氷山の一角を味見した程度だが、知らないことだかけでとてもおもしろかった。私はある程度狭いジャンルの中での、店ごとの違いや個性を深掘りするのが好きなのだろう。さぬきうどんとかミールスとか。
次は麻辣湯屋の麻辣湯じゃないスープを巡ってみるのもおもしろそうだ。あるいは牛骨スープを唐辛子や花椒と煮て、具材を集めて俺だけの麻辣湯を自作しようかな。
最後に訪れたのは『楊国福麻辣湯』の池袋店。池袋が続くけど全部別の日に訪れている。楊国福は日本風にヨウゴクフクか中国風にヤングオフーと読むらしい。お好きなほうでどうぞ。
有識者の話によれば、楊国福こそが世界一の店舗数を誇る巨大麻辣湯チェーン。サイトを確認したら中国および海外10カ国に7000軒以上と書かれていた。日本初上陸は2017年。
訪れたのは平日の12時ちょっと前。この日たまたまなのかもしれないが客層が原宿のクレープ屋くらい若く(例えが昭和だ)、私の場違い感がすごかったけど四軒目なので大丈夫。きっと大丈夫。隣にある家系ラーメンの店と間違えているのではと思われていそうだが。
この店のシステムは、最初に訪れた新大久保の李暁七麻辣湯とほぼ同じだった。李暁七麻辣湯が後発だろうから、そちらが楊国福麻辣湯を参考にしたのだろう。テーマカラーも同じくオレンジ色。
スープは牛骨湯、麻辣湯、トマトスープ、麻辣拌(和え)、そして新商品の激香赤ラー油湯(ってなに?)。色々と気になってしまうが、他の店と比べるために麻辣湯を普通の辛さにしておこう。
ここは店員さんに呼びこまれてから店に入り、店内の列に並ぶシステム。麻辣湯を気に入りすぎて、こうして並んでいる時間がテーマパークで人気のアトラクションを待っている人くらいウキウキする。値段はシンプルに全商品100グラムあたり400円の量り売り。個人的には内臓肉系の充実がうれしく、骨を抜いた鶏の足(モミジ)まであることに感動した。さすがは世界一の麻辣湯チェーン店である。
しっかり白濁した牛骨ベースの麻辣湯は、とても濃厚でコクがあり、そりゃ世界中で流行るよなと改めて思ってしまう。
普通の辛さにしたけどなかなかの辛さ。この刺激的でクリーミーな麻辣牛骨スープだからこそ、内臓系の肉が欲しくなるのかもしれない。
辛さが不安な人は、辛さ無しの牛骨スープか小辛にしておいて、つけダレコーナーのラー油で調節するのが無難かも。
私が思っていた以上に麻辣湯はおもしろくておいしかったのだが、そもそも麻辣湯とは一体どんな食べ物なのだろう。そして私が知っている火鍋との違いはどこにあるのか。
その謎を解くために『旅する火鍋』(著:佐藤貴子/グラフィック社)という本を紐解いたところ、火鍋とは「火にかけながら食べる鍋料理のこと」と書かれていた。赤くて辛いから火鍋なのではなかった。あれは麻辣火鍋であり、中国全土には様々な火鍋が存在するのである。
麻辣火鍋の発祥は四川省重慶市で、現地では重慶火鍋と呼ばれるそうだ。牛脂で大量の唐辛子や花椒(中国山椒)を煮出して冷やし固めた、まるでカレーのルーみたいな素がベースとなる。
後に四川省成都市から世界に広まった火鍋(こちらは麻辣火鍋のスタンダードになる)は水分や植物油が多く香辛料の種類も豊富なのだとか。詳しくは本を読もう。
そして話は麻辣湯に戻る。
佐藤さんから一つ注意点を教わったのだが、この記事では『麻辣湯』と書いているが、本来の表記は『麻辣烫』。『湯』はスープという意味だが、『烫』は沸騰した湯やスープに具をさっとくぐらせ火を通した料理のこと。
烫が日本にない漢字のため、代用として湯が使われているのだが、料理法のニュアンスが違うのだ。
麻辣烫の発祥地といわれる四川省南部の楽山市では、麻辣スープで串刺しの具材を煮て、串から外してタレで食べるスタイルの麻辣烫が定番だとか。同じく重慶市では煮え滾った麻辣のスープで、テボに具材を入れて火を通したもの(スープは無し)が出てきたそうだ。
西南地方の四川省で生まれた麻辣烫は、屋台料理として人気を博した後、地理的に真逆の東北地方でチェーン化されて、芝麻醤(ごまだれ)や汁有りが普及していく(こちらの記事に詳しい)。
さらにはだんだんと味のバリエーションも増えて、もはや麻辣ではない汁煮込み料理に魔改造されつつ中国全土へ、そして世界へ。その自由な変化と拡大は今も止まらない。
このような背景があり、日本には汁のある状態で伝わってきたため、『麻辣湯』という表記で意味が通っているのである。
今回の麻辣湯を巡る旅は、巨大な氷山の一角を味見した程度だが、知らないことだかけでとてもおもしろかった。私はある程度狭いジャンルの中での、店ごとの違いや個性を深掘りするのが好きなのだろう。さぬきうどんとかミールスとか。
次は麻辣湯屋の麻辣湯じゃないスープを巡ってみるのもおもしろそうだ。あるいは牛骨スープを唐辛子や花椒と煮て、具材を集めて俺だけの麻辣湯を自作しようかな。
佐藤さんの本です
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はげます会限定おまけ
池袋で麻辣湯を食べたついでに、中華食材店で購入した『牛脂鍋の素』と書かれた中国版鍋キューブで、オリジナルの麻辣湯を作ってみた。
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