ライターインタビュー 2021年4月10日

35歳より前は意識不明状態だった ~九九はなぜわからないのかを考えたきっかけ

3月に人気だった記事を書いたライターへのインタビュー。

今回は「算数が苦手なやつが考えた7の段が難しい理由を詳しい人に聞いてもらう」が好評だった西村まさゆきさんに話を聞きました。

インタビュアーは同じく九九が苦手な編集部の古賀です。

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算数が苦手なやつが考えた7の段が難しい理由を詳しい人に聞いてもらう03.jpg
九九は7の段が難しい。自分だけじゃなくそういう意見は多いようだ。なぜどうして、7の段は難しいのか、算数が苦手なぼくなりに考えて、数学に詳しい人に訴えた。

恨みつらみをぶつけました

古賀:
なぜ七の段はむつかしいのか、その答えが明らかになったのがすごかったですね!
これ、大人がわからなさを精密に訴えるのが記事としてのおもしろさを支えていましたよね。西村さんのパワポ芸がさく裂するという。

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入魂のパワポで七の段のむつかしさを数学に詳しい識者にぶつけた

西村:
ほんと、マジわかんないから、その恨みつらみをぶつけました。
わからないことを、なぜわからないのか考えるのは、それはそれでおもしろいなっておもったんですよ。

古賀:
「なぜわからないのか」ってすごくおもしろいですね。あれは鉱脈だなと思いました。
わからないことを「わからない」って言うと、「いや、わかろうとしてないでしょ?」って言われること多くないですか。

西村:
あー、はい言われます。言われるし、言いがちかも。子供にもの教える時に言っちゃいがちかなあ。

古賀:
自分であれ相手であれ、わかる側にとってはなんでも「なんでこんなことがわからないのか!?」と思えるわけですよね。
今回はあの有名な「なんでこんなことがわからないのか」その理由が明らかになったんですよね。

西村:
妻が、歴史が苦手っていうんですけど、その理由が「名前が全員同じ」っていうんです。それ「わかろうとしてないだけだろ」って思ってましたけど、そう思っちゃいけないですね。(※編集部注 西村さんは歴史にとても詳しい)

古賀:
私も歴史とても苦手です。足利は全員同じ人物だと思っているふしがありますね……。

西村:
徳川将軍も、全員「家なんとか」だから。あと、世界史の王様も、あれはマジで名前同じヤツ多すぎますね。

古賀:
ルイ〇世問題ありますしね。

西村:
番号で違いつけられても、14だっけ、16だっけみたいになりますもんね。数字に特徴を見いだせてないのかな、おれは。

古賀:
興味がないっていうのはクリティカルだとは思うんですよね、それで「わかろうとしない」というのもあるっちゃあり……。
でも今回の九九に関しては、記事の冒頭にもあるんですが、西村さん興味はあるけどわからない、だからわからなさを説明できたんですよね。

西村:
そうなんですよ、興味はあるんです。

数学ができると文章を書くとき有利

西村:
最近、三角関数ってなんだったのかってYouTubeで動画みまくってますよ。予備校の先生の説明とか、マジわかりやすいですよね。

古賀:
うわ!そうなんですか。私でもわかるかな。三角関数とか、微分積分とか、数学用語って文章で使えるんですよね。おぼえとくとライティングの幅が広がるよなーと私も思ってめちゃくちゃ興味はある!

西村:
そう!

古賀:
最大公約数とか! 急に小学生レベルの用語になりましたが!

西村:
いや、だいじですよ

古賀:
素数がまさにそうだしなあ……。キャッチーなんですよね。

数学はことば

西村:
算数とか数学って、ものの考え方を勉強する学問だと思うんです。

古賀:
ほほう。

西村:
四則演算とか、解の公式とか、算数や数学にはいろんなルールありますけど、概念を文字に書き表してるってことでいえば、あれは全部言葉なんじゃないかと。数の現象や考え方を言葉で説明している。

古賀:
解説のコンテンツということですかね。

西村:
で、そのルールに矛盾が生じないように、記述していく、というのが算数とか数学のような気がしていて、結局は国語というか、言葉の学問なんですよね。

古賀:
コミュニケーションみたいなとこありますもんね。

西村:
数学者が「数学は、紙と鉛筆さえあればできる」っていいますけど、それはつまり言葉を扱う学問だからなんですよね。

古賀:
お手紙だ。

西村:
いろんなものごとを、矛盾を生じさせないように記述する、つまり作文するにはどうすればよいのか……そういう考え方は、ライティングするときに重要だと思います。

古賀:
あっ! そうか。私が言ってたのは単に比喩表現として使えるな、くらいの気持ちだったんです。基礎教養みたいな。「スラムダンク」を知っていると「先生……おれ、バスケがやりたいです!」って文章に書けますよね、そういうのが三角関数とか微積分にもありそうだなって。でもロジカルに書けるというも、確かにそうですね。

西村:
なんか、すげー偉そうなこと言ってるから、変なこと言っとこう、うんこちんちん。

古賀:
はい!

「しち」がいいづらい

古賀:
七の段は「しち」がいいづらいって以前から思ってましたか? 私も九九苦手なんですがその発想なかったんですよね。

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七の段のむつかしさを「しち」の言いづらさが原因と指摘した西村さん

西村:
あれ、しちが言いづらくないですか? 子供の頃から、しちはいいづらいっておもってて、わりとみんなそう思ってると思ってました。

古賀:
わたしは記事でもとりあげてもらったんですが、1の位が躍動するのが気持ち悪い、その1点でした。

西村:
1の位の躍動は、答えがわかってよかったですよね。

古賀:
ほんとに! うわ~~~ってなりました。法則あるじゃんけ~~!って。不規則で怖いって本当にずっと思ってたから。

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数学の世界からやってきた鯵坂もっちょさんが教えてくれた、かけ算の1の位の数字がどんな順番で現れるかの図。これは二の段

西村:
7の段でさえ、法則があったのが驚きだったな。

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これが七の段、ちゃんと法則があった!!

古賀:
数学すごいですよね。気持ちの揺らぎみたいなものがない。ぴしっとしてますよ。

西村:
そう、気まぐれに思わせといて、実は法則があったという。見かけによらないけどいいやつだなみたいな。

古賀:
「悪い奴じゃないんだけど」ってのはだいたい悪い奴ですが、数学は信頼できますね。

西村:
逆に、1の位の順序が、ランダムになるような段ってあるのかな。本当に気まぐれな段。

古賀:
あ~~、13の段とかトリッキーな予感しますね。「互いに素」とかいうやつがなんかキーっぽかったですね。あれ、不明の入り口を感じました。

西村:
そうですね。こういう、ちょこちょこ出てくる疑問をいちいちぶつけたいです。小中高学校のときにもっと数学の先生に質問しとけばよかった。

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35歳より前は意識不明状態説

古賀:
学校で質問しておけばってそれは本当に思いますよね。学校ってすごい場所だったんだなと今になっては思います。

西村:
ほんと、なんでボケーってしてたのか。もっと質問せえよ俺って思いますわ。

古賀:
ボケーっとしてましたよね。さぼってマンガ描くとかそういうクリエイティビティもない、ただボケーっとしていた。

西村:
そう! クリエイティビティもない。なにもしてなかった。

古賀:
悪さとかも一切してない。早弁すらしてない。

西村:
本を読むぐらいしかしてなかったな。ゲームしてたか。まあでも、無でしたね。

古賀:
わたし本当に座ってた気がするんですよね、ぼーっとして。

西村:
「あれ、これじゃいかんな」って気づくの、めちゃくちゃおそかったですよ、ぼくは35歳ぐらい。35より前は意識不明状態だったと思う。

古賀:
意識不明状態、わかる! 私も35歳くらいでやっと「これじゃいかんな」意識が芽生えた感じしますね。35歳で靴下を買いましたよ。それまで裸足でしたから。

西村:
はだし。

古賀:
ええ。歯も磨いてなかったし。なんなんだ。

西村:
いやほんと。それ、おなじですね。

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35歳の西村さんが何をしていたか調べたところ、デカ目になるプリクラのすごさを確かめるためにお面をかぶってプリクラ撮ってました(こちらの記事より)
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いっぽう古賀35歳は足の小指を骨折。原因はへんな靴下のはき方をしていたため。靴下!(こちらの記事より)

古賀:
35年遅れをとりましたね。

西村:
やっと気づいてから10年でなんとかね、7の段がなんで難しいかわかるようになりましたよ。できるようになったわけじゃないというね。

古賀:
いろいろなことがまだまだこれからですね、西村さんと私に共通してるのって「生涯学習」ということばのような気がします。「学びなおし」か。

西村:
ほんとね、放送大学とか受講しようかまじで考えてますから。

放送大学へのあこがれ

古賀:
放送大学いいですよね……。

西村:
妻がいま、受講してて、こないだ博物館が学割になったんで、マジでいいなとおもいました。

古賀:
えっ!奥さんなにを受講してるんですか。

西村:
なんだっけ、なんか会社のキャリアなんとかの試験に必要なやつっていってました。

古賀:
会社の研修を放送大学でやるパターンあるのかあ、いいなあ。

西村:
あれ、全科履修生じゃなくても、興味があるやつだけでもいいんですよね。

古賀:
私は表現文化研究というのを取ってみたいです。

西村:
あー、いいですねー。放送大学受講してるひとに話きくのおもしろそうだな。

古賀:
おお、良い企画ですね!

西村:
あれ、手帳みたいなテストに解答して、15円切手貼って送るんです。

古賀:
15円!?

西村:
たぶんなんですけど、通信教育の郵便料金って安くなるように法律できまってるんでしょうね。

古賀:
あっ!郵便が15円で送れるということなんですね! すごいな。(調べました)「第四種郵便」ってやつか! 文部科学省から認可された通信教育で使えるんだそうです。へえ~~。

西村:
すごいですよね。普通郵便だと94円ぐらいかかりそうなやつなんですよ。

古賀:
バグですね。

西村:
バグです。郵便料金ってそういう抜け道みたいなルールがけっこうあるんですよね。九九の記事から話変わってますけど。

ポストクロッシングをご存じですか

古賀:
郵便っておもしろいですよね。私もめちゃくちゃ好きで。

西村:
そうそう。さらに話かわりますけど、いま、ポストクロッシングやってるんですよ。海外のひととエアメールを交換するウェブサービスなんですけど。

古賀:
え~~~~っ!!! 楽しそう!!!!!

西村:
おもしろいですよー。

古賀:
むかし海外にペンパルを作る通信サービス使ってました。よく少女漫画雑誌に広告が出てたやつ。

西村:
ポストクロッシングは、エアメールのやりとりは基本的に一回きりなんで、続かなかったみたいな心残りがないんです。

古賀:
それは良い……。

西村:
切手と絵葉書の柄にめちゃめちゃ凝って送りたくなるんですよ。家に大量に残ってた絵葉書と切手が使えてうれしい。切手は可愛い柄のやつを、ヤフオクで落札するほどです……。

古賀:
西村さんの「好き」が詰まったサービスですね。

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西村さんは切手ファン。パワポ芸で切ってへの愛を披露したこともある(そのパワポがこちら

西村:
ポストクロッシングのサイト、自分のプロフィールに「あなたが普段たべる好きな食べ物おしえて」って書いてるので、各国のひとがどんな他食べ物を食べているのか教えてくれるのも良いんです、英語でですけど。アメリカ人が、手羽先のやつが好きとか、インドネシアの人が、さつま揚げみたいなのが好きだとか。そういうのがわかっておもしろいですよ

古賀:
なにからなにまで最高だ。というか、これも記事にできるんじゃないでしょうかね!

おれたち郵便好き

古賀:
郵便のシステムも詳しい人に話聞いたりしたいですね。ちょっと封筒に切れ目いれると本が安く送れたりしますよね。書籍小包だったかな。

西村:
書籍小包って、今でもあるのかな。

古賀:
もうないのか!

西村:
むかしはありましたよね。中身が本ってわかるように切れ込みいれるやつ。いま、ゆうメールになってるみたいです。

古賀:
めちゃくちゃふわっとした名前、ゆうメール。最近は「クリックポスト」とかサービス増えてますよね。いったん整理したい。郵便を。

西村:
そうですね。封書の値段がいくらかも怪しいですからね。

古賀:
はがき、封筒、パッとわからないですよね……。郵便の種類も取材しよう。九九の話を離れていろいろネタが出ました! 35歳からはじまった学びの人生、充実させていきましょう!

(おわり)

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