
印刷製本は職人の優しさでできている

編集部古賀さんから「印刷屋さんを取材に行きたいんですけど、きだてさん興味ありませんか?」という連絡が来た。
僕、実はキャリアの最初が印刷会社のデザイン部門なので(3年ほどしかいなかったけど)、まぁなんとなくレベルだけど、印刷や製版のことは知ってるつもりだ。
古賀「で、今回は印刷の綴じ部門と折り部門を見せてもらおうと思って」
え? そこ? 印刷そのものじゃなくて、綴じと折り? 確かにそこはあんまり知らない部分だけど、地味じゃないか?
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かなり真面目に印刷の知らなかった部分を見るツアー
というわけで、なんだかピンとこないままに、取材当日である。
今回の取材先は、江東区東陽町にあるアルプスPPSという印刷会社さん。対してこちらは編集担当古賀さんに加えて、広告案件なので広告担当の安藤さん、カメラマンとして編集藤原くん、あと僕。なかなかの大所帯だ。

駅からの移動途中、安藤さんに「今回の取材先って、なんか特殊な印刷屋さんなんすか?」と聞くと、「ネットからの注文を多く手がける印刷屋さんなんですけど、すごく真面目な会社さんです」と言う。
そっか、真面目なのか…。
今までデイリーの記事広告というと、僕が担当したのでも「養命酒のパッケージを爆破」とか「ドラマの撮影現場にこっそり文房具を置いて写り込ませる」とか、あきらかに悪ふざけな内容ばかり。
真面目な印刷会社の、中でも普段は光の当たりにくい部門を普通に取材して、成立するのか。この時点では不安しかない。冷静に考えたら、悪ふざけに身体が慣れすぎだろう。
あ、これは悪ふざけ無しだ、という説得力
アルプスPPSさんにお邪魔して、まず対応してくださったのが、新規事業開発部 部長の羽田さんである。
通された会議室にはやたらウェイウェイしたパーティー用フォトプロップスやアニメキャラのPOP(特殊印刷の見本?)がずらりと並び、パッと見には賑やかそうだが、実は場の雰囲気はそんなに軽くない。

羽田さんが真面目で無骨で職人然としているのに対して、対面している我々が、悪ふざけに慣れきった印刷完全素人3人+印刷キャリア3年で早々にリタイアした半素人の僕、という構成なのだ。
ぶっちゃけ、なにか変なことを聞いて怒られたりはしないか、という我々の緊張感よ。ただでさえ事前に安藤さんから「真面目な会社さんなので」と念押しされてるし。会話が始まる前からこちらだけヤケにピリピリしている。







そもそも“綴じ”ってどういうことか
車で5分ほど移動して着いたのが、綴じ部門の入っている工場だ。
おおー、入るとインクの匂いと紙の匂いが入り交じった、ザ・印刷工場の匂いがする。もう20年以上前の記憶だけど、最初にいた会社を思い出して、知らずにスッと背筋が伸びる感じ。


さて、冒頭からなんの説明も無しに進めてしまったが、綴じというのは、ざっくり言うと印刷したページをまとめて冊子を作る作業である。
綴じそのものはいくつかタイプがあるんだけど、多いのは、真ん中を針金で綴じる「中綴じ」と、ページの背に当たる部分を糊で貼る「無線綴じ」だろう。(他にも、平綴じ・糸綴じ・あじろ綴じなどあるけど、今回は割愛)

で、まず見せてもらうのは、ページが少ない冊子に向いていて製本コストの安い「中綴じ」である。パンフレットや週刊誌など、ページの中央をゴツいホチキス針みたいなので綴じているやつを見たことあるだろう。あれが中綴じ製本だ。
あー、印刷会社で働いていたときもあんまり見たことなかったけど、確かにこんな機械はあったなー。もちろん当時も製本されたばかりの完成品を確認することはあったけど、綴じる行程をきちんと見たことは無かったのだ。
アルプスPPSで中綴じ作業を主に担当するのは、篠瀬さんと板垣さんのお二人。どちらもかなりのベテランとのこと。
まずは、どういう感じで印刷したページが中綴じされて本の形態になるのかを見せてもらった。











そう、写真や図・文字が見開きでドーンとあるやつは、折りや綴じの段階で中央からズレてしまうことがあって、そうすると一発でダメな感じになってしまうのである。
例えば僕が昔にやった仕事だと、工業機械の中綴じパンフレットで「細いコード類がいっぱいウネウネとしている機械」を見開き中央にドーンと配置してくれ、という発注があった。そんなの、製本の段階で0.5㎜でもズレたらコードの位置もガタガタになるやつだぞ。
完成したパンフはピタッときれいに写真が合ってたけど、あれ、中綴じの人が頑張って位置合わせしてくれたんだろうなぁ…。





古賀さんの興奮が止まらなくて、篠瀬さんと板垣さんがやや引き気味になってるのが分かる。
でも確かに、見開きがピッタリ合ってるのって当たり前の話ではなくて、実はわりとすごいことなのだ。






さて、中綴じの次はもう一つ、無線綴じを見せてもらおう。
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