特集 2025年9月2日

インプ(印譜)のすすめ~ハンコあつめ本のうま味 

「インプ」、私の頭の中では「インプレッション」ではなく「印譜」へと一発変換されます。

「印譜(いんぷ)」とは、古いはんこのデザインをたくさんあつめた本のこと。

伝統の重みはありつつも、かわいい形のはんこや文字がたくさんあり、ながめるだけで楽しめます。

印譜の持つうま味を伝えるべく、仲良しの四谷くんと一緒に印譜をめくってみました。

大阪で生まれ育ちました。工作と漢字が好きです。チェキで盆栽を撮影したり、豆腐を千切りしたりしています。

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なぜ今「印譜」なのか

人々ははんこに踊らされたしょっぱい経験を積み重ねてきました。

「うわー印鑑持ってくるの忘れた、書類出せない!」、「やばい、実印どこに置いてたっけ…」の繰り返し

そしてついに世は「ハンコレス」・「電子はんこ」の時代へ。 

「便利にはなったけど、電子書類でもはんこが必要なんて不思議~」と思いながら、はんこの絵柄をドラッグ&ドロップする毎日、いかがお過ごしでしょうか。

 はんことの関係が薄れてきている今、みなさんにおすすめしたい、それは「印譜(いんぷ)」です。

狩野寿信 編『本朝画家落款印譜』上,(明治27年、大倉保五郎出版)より引用

これが印譜!

これも印譜!(『江川堂印譜』1928年、江川堂)

 印譜とは、昔の人のはんこのデザインをあつめた本のこと。

私は、伝統的だけどチャーミングなところもある印章(はんこ)がペタペタおされているページを見て、「きゃー!(黄色)」と胸をはずませてきました。

 仕事上ではんこへの負の感情が小さくなりそうな今、はんこのデザインを純粋に楽しんでみませんか。

印譜、自分に紹介させてください。

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仲良しの四谷くんに紹介

唐沢むぎこ:はんこ好き。清朝の乾隆帝みたいなでかい消しゴムはんこを作ったこともある

四谷くん:理系。はんこのこと何も思ってなさそう。かわいいものは好き。

陽射しがきびしいある土曜日、仲良しの四谷くんと神保町の古本屋を巡ったあと、「ちょっと休もう」と入った中華料理店。不意打ちで印譜鑑賞会をはじめてみました。

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(何の説明もなくごそごそと印譜を取り出す)どうぞ

 

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なにこれ
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印譜やで

 

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なにこれ
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近世・近代のはんこ好きの人たちが、研究とか鑑賞のために作ったはんこ集やで

 

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あはは、最初のページからかわいいね

これは『汗簡』という中国の本にのってる、ぐるぐるしたフォントの「雲」です。

(中国趣味のある昔の本には、冒頭にこういう書がのってることが多い)

同意なしで始めた印譜鑑賞会でしたが、かわいい文字で興味をひくことに成功しました・・・

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いろんなはんこがのってるね
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この『江川堂印譜』は、東京の四谷にあった、はんこ売ったり印刷したりする「江川堂」っていう店が1928年に出したんよ
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白抜きの文字?赤い文字?

左「印禅居」、右「愚林」
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文字が赤いやつと白ぬきのやつがあるね
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文字の線を彫って白ぬきにしたのが「陰刻」、文字の線を残して彫ったのが「陽刻」っていうねん。

 

こっちが陰刻
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白抜きの陰刻のほうが好きやなあ
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普段使ってる印鑑は陽刻やろ?
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だからこそ陰刻が雰囲気が新鮮でいいなあ。白い文字がかぎりなく太い方が好みかも。好みんちゅ。
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え?「好みんちゅ」ってなに・・・!?(その後四谷くんから「好みんちゅ」の説明はありませんでした)
「衣川清印」の印


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これ、お店のロゴなんかに使われてそうじゃない?
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たしかに。「ユニクロ」のロゴみたい。

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ユニクロは陰刻なんやなあ
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文字が絵みたい

「天香國印」の印
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これゴキブリに似てるわ。さっき古本屋で見たやつ。

 ※直前にふたりで「ドクロゴキブリの背中に小型バズーカを載せてもまっすぐ走るのかどうか」という論文が紹介されている本を読んだ

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ゴキブリて・・・たしかにちょっと虫っぽいけど・・・文字は「香」やで

印譜には、イラストっぽい文字が満載。なんの文字かわからなくても、「〇〇っぽい」で十分楽しめます。

安本春湖 著『新撰篆書字典』巻2,(大正13年、春湖書屋出版)より引用

はんこによく使われる「篆書」という字体が絵みたいでいい。 

「同甘共苦」の印
 
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えー!右下のやつ、なんか鬼の顔みたい

 

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ほんまや。ばいきんみたい
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かわいいな。弱そう
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左のやつもええな
 
 
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草をおでこにつけてゲリラみたい。表情も油断ならない感じ
 
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かわいいなこの2人
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このはんこ、「同甘共苦」って書いてるんやって。 

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だから、右下が「甘」で、左下が「苦」や
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「甘さ」と「苦しさ」でキャラたってる。いいな~

⏩ 印譜の悪夢

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