特集 2023年8月16日

デカいハンコでQOL爆上げ

大きいはんこをボンとおすと、清朝の乾隆帝さながらの充足感が得られました。書類上で自分が強い立場になったかのような気分になれるし、チラシにボンボン捺印していくのもまたよしです。ちょっぴり生活の質をあげましょう。

大阪生まれの大学院生。工作や漢字が好きです。ほら貝も吹けます。先日、教授から「あなたは何を目指しているのか分からん」と言われました。

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> 個人サイト 唐沢ジャンボリー

デカハンコ乾隆帝

東アジアには、鑑賞した人が作品の余白に詩を書いたり、ハンコ(印章)をおしたりする文化があります。

 

こういう寄せ書きっぽいの見たことないでしょうか。

ある日、中国の友だち・李さんと美術談義に花咲かせていたところ、

 

「乾隆帝のハンコがデカすぎて邪魔」と漏らしていました。

なんでも、中国の名高い作品におされた乾隆帝のハンコが目立ちすぎているそう。

乾隆帝は、清朝が最盛期を迎えた頃の皇帝で、めちゃくちゃブイブイいわせてたことで知られています。

彼のハンコがおされた実際の作例を見てみると、

 

右上にどーん 
顔真卿「祭侄文稿」(国立​​​​故宮博物院蔵) 国立故宮博物院HP典蔵精選より引用

 

絵の上に2つどーん
李氏「瀟湘臥遊​​​図巻」(東京国立博物館蔵)国立文化財機構所蔵品統合検索システムより引用
すごい自己主張です。

乾隆帝は「みんな〜、朕やで!」と言わんばかりに、ぼんぼんスタンプしていっています。ブイブイいわせてる自覚があるかのようです。
 

きっとデカい判子をおしまくるのは爽快だったことでしょう。たとえ代わりに別の人に捺印させてたとしても、自分のデカハンコが入った作品を見て、満ち足りた気持ちになったのではないでしょうか。

私もおしてみたい・・・!

私は清朝のトップに君臨して、紫禁城にあつめた名品に印をおすことはできません、しかし、せめて日常に大きなハンコをとりいれたい、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を上げたい・・・そんな夏です。

 

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巨大な消しゴムハンコを作る

乾隆帝のハンコは材質も彫刻もとてもゴージャスで、現代のオークションでとんでもない価格で落札されています。

私は資金力が全くなく、普段はもやしを食べているので、消しゴムでハンコを作ることにしました。

普段使っている印鑑が1〜2㎝くらいなので、ここはドンと10㎝でいきましょう。

せめて形だけは・・・と篆書の辞典で文字を調べます。
「唐沢麦子之印」と書いています。篆書の「之」を見るたびいつも、「コート掛けみたいやなあ」と思います。
地道に彫っていきます。

デカいので時間がかかり、ラジオ番組を3本くらい聞いてしまいました。

つづいて持ち手の部分も作っていきましょう。

 

「もくねんさん」という乾くと木みたいになる粘土を用意しました。
お坊さんみたいなイメージキャラ「もくねんさん」が光る説明書。
(パッケージには登場させてもらえてなかった)

 

持ち手ができました。

ずんぐりむっくりで厚ぼったいですが、「デカいはんこ」らしさは十分です。

試しに、
ボンっとおしてみると・・・
よかった、うまくできた!

そしてとにかくでっかい!(左下は通常の印鑑のサイズ)

くーっ!こりゃええ

自分の名前をドンとスタンプするのは初めての体験です。これは爽快です。

さて、おしておしておしまくりましょう

めんどい書類に

私たちが日常ではんこをおす場面てのは、えてして「めんどい書類を記入している時」になります。

たとえばこんな誓約書を書いたあと、

捺印!

まるでこちらが強い立場みたいに!

書類において、ハンコの大きさ=強さです。自分が個人ではなく会社になったような気分です。

 

出張の交通費の清算書は、細かく乗り換えを書かなくちゃいけなくてウワーっとなりますが、

最後に大きな判子をおすと、

締めくくり感!

すごくスカッとします。「あー頑張って書いてよかったー」と思えます。


書類が2枚になったら、

割印!

ちっちゃいハンコでやるよりも、2つのピースがカチッとはまる感じが・・・!書類に重厚感がでちゃってしょうがありません。

記入中に書き損じたら、

 

訂・正・印!

まわりの文字にがっつりカブるのすら心地よいのです。

ポストにいっぱい入ってるチラシに

これはもう、どんどんおしていきたい。「私が見た」という証を残していきたい。

偉い人がたくさん紙に印鑑をおしていく、あれをやりたい。

ポストに入っているたくさんのチラシに、
ことごとく「見たよ」のハンコ!
あこがれの「でかいハンコいっぱいおしていく偉い人」の気分になれました

空手教室の宣伝、健康食品の紹介…興味のないチラシも、見るのがたのしみになります。


廃品回収でまとめるときも、

我が印をおすだけで愛おしい・・・

なんだか上質な仕上がりに。もうちょっとながめていたいので、とりあえず今週の回収日は見送りましょう。

すべてが唐沢グッズになる

デカいハンコを作ると、

ハンコがおせるものを探してしまいます。

捺印する必要があるからハンコを用意するのではなく、ハンコがあるから捺印できるものを用意する。

大きいハンコにはそうさせる力があります。

家中の余白をかき集め、

おせるだけおしました。

すべてが「唐沢が認めた​“​唐沢グッズ”」に。

自分のハンコや〜と思うと、やっぱり嬉しいものです。知人に配りたい気持ちもふくらみます。

このグッズ類の写真を仲良しの四谷くんに見せると、

童心が溢れていたようです。

大きいハンコにはそうさせる力があります。

 

LINEスタンプにも

写真に撮ってLINEスタンプのように使うのもありです。

「見たよ、唐沢は見たよ」というメッセージになり、既読無視回避のスタンプになります。

 

ただ、相手からはこのスタンプを当たり前に無視されます。

我がハンコを愛する身としては「ちょっとくらい触れてや」と物悲しくなります。

みなさんもデカハンコを一つ持って、QOLを爆上げしてみてはいかがでしょうか。


 

持ち手用のねんど

中子粘土『もくねんさん 300g F-1572』

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