ハンコをめぐる冒険はここでいったんおしまいです
全5回に渡ってハンコを作ったり押したりしてきました。ハンコを作り、押すことで、ハンコの正体が少しだけ分かったような気がします。『深淵を覗くとき深淵もまたお前を除いている』みたいなアレがありますが、ハンコも同じでした。ハンコは深淵だったのです。
ハンコを押すとき、お前もまたハンコに押されている。
うん、意味わからねーニャ。ありがとうございました。
ハンコに逆風が吹く昨今。僕はそもそもで言えばハンコみたいな儀式めいた事が嫌いな人間なんですが、逆風が吹いていると聞けば敢えて逆らってみたいタチなのでこの様な無駄をしています。
芋ばんから始まって3Dプリンターを使ってハンコを作ったのが前回まで。今回は自作から一歩進み、業者の力を使います。
編集部よりあらすじ
逆風のハンコに光を当てる連載。ハンコづくりはついに家内制手工業から工場制手工業のフェーズに!
※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!
前回うちに棲み着く茶白の猫、じゃんけん氏の肉球ハンコを作りましたが、今回は先住猫のなつめ氏のハンコを作ります。
なつめ氏は14歳。もうじじいなのでたまに死にかけますが今は元気になっています。なつめ氏に協力いただいて、肉球の印影を作っていきます。
なかなか良い印影が出来ませんでしたが、なんとかそれっぽいのが押せました。
パプリというWebサイトでハンコを注文できます。以前ゴム印を作ったことがあり、今回はシャチハタのXスタンパーを作ってみることにしました。
なんやかんや編集して、こんな感じ。ハンコとして使うのに名字もなにも入ってないと意味不明なので、篆書体で『松本』と入れておきました。
僕はいつでもギリギリの男です。ライターはみんなそうかも知れない、いや、きっと人類はみんなそうでしょう。締切がないと仕事が出来ません。
僕がパプリにハンコを発注したのは年末も年末、大晦日でした。年内の仕事は大晦日の夕方に終わり、元旦はまた別の仕事をしてました。自由業は1年365日働き続ける自由があります。羨ましいだろう。
年末年始はみんなが休み。だから、注文したXスタンパーの納品は1月8日でありました。
1週間待って到着しました。たぶん、年末年始でなければもっと早く到着するんだと思います。
開封の儀。
本当にあの印影がプリントされています。笑う。
印面を見ると、思った以上の精度で刻まれています。すげぇな。
押してまいる。
これは良いものです。とても良い。なつめ氏の肉球押し放題だし僕の認め印としても使えそうです。
なお、インクが黒なのはミスです。注文の際に色を替えるのを忘れてました。大晦日にカニの事を考えながら注文したせいです。カニの赤で頭が一杯で、インクの色を替え忘れました。
でも、黒猫のハンコだから黒インクでもいいだろうと納得することにします。そうです、これは黒猫のハンコだから黒でよかった!むしろ!(自分を納得させるのが楽しく生きる秘訣です)
ニャニャニャっと押していきます。
ハンコが完成してしまったら、あとは押す以外の展開を僕たちはまだ知らない。
肉球ハンコをたくさん押していくと、自分の手が猫の手になったという錯覚が起きます。気分的にはまったくもって、猫です。
前回作った3Dプリンターハンコは朱肉を使う必要があるので押印に途切れがありました。シャチハタはどんどん押せるので余計に猫の手感を味わえます。
肉球シャチハタを押すことで、人は猫になれますニャ。
考えてみれば、ハンコとは『その人が認めた』という意味で押すものです。ハンコを押す者はハンコによってハンコから認められ、ハンコが宿るのかも知れません。
つまり、ハンコを押している俺がハンコだ!(錯乱)
興奮して、押したハンコをなつめ氏に見せたら嫌がられました。
なつめ氏は賢い猫なので、僕に宿ったハンコの力を避けたのかも知れません。猫だけに。(ニャー)
全5回に渡ってハンコを作ったり押したりしてきました。ハンコを作り、押すことで、ハンコの正体が少しだけ分かったような気がします。『深淵を覗くとき深淵もまたお前を除いている』みたいなアレがありますが、ハンコも同じでした。ハンコは深淵だったのです。
ハンコを押すとき、お前もまたハンコに押されている。
うん、意味わからねーニャ。ありがとうございました。
※小出し記事は書けたところから即、小出しに公開する連載企画です!
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