特集 2024年1月20日

「私はロボットではありません」をチェックするロボットを作る

「私はロボットではありません」

ネットで会員登録をするときにこのような表示が出て、チェックを求められることがある。
ロボットプログラムによる不正登録を防止するためのものだ。

これを見るたびに毎回思っていたことがある。
プログラムではなく現実世界で動くロボットを作って、それでチェックを押したらどうなるんだろう。
いまやるしかない。令和のとんち王におれはなるのだ。

1987年兵庫生まれ。会社員のかたわら、むだなものを作る活動をしています。難しい名字のせいで、家族が偽名で飲食店の予約をするのが悩みです。(動画インタビュー

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これが「私はロボットではありません」を押すロボットだ

不正登録を防止する仕組みのことをCAPTCHA(キャプチャ)という。
ぐにゃぐにゃになった文字を読まされたりするやつだ。
ちなみにぐにゃぐにゃになる文字で百人一首を作った記事を以前書いたので読んでください。

で、今回取り上げたいのはこれだ。

これこれ。一度は見たことがあると思う。

色々なCAPTCHAの仕組みがある中で、この「私はロボットではありません」はGoogleが作っている reCAPTCHA v2というものだ。
ちなみに信号機の写真を選ばされるやつも reCAPTCHA v2だ。あれ、まじで難しいときがありますよね。

ということで、「私はロボットではありません」を押すロボットを作りました。これです。

じゃーん。

ロボットというにはだいぶ荒々しい作りではある。まぁまぁ、動けばなんでもロボットでしょう。

ロボットの動きの流れはこのようになっている。

  1. スマホを台に置き、ボタンを押す。
  2. カメラでスマホに表示されている「私はロボットではありません」を読み取り、タッチペンをその位置に動かす。
  3. タッチペンを前進させて、「私はロボットではありません」を押す。
動作検証用に「私はロボットではありません」だけを表示するページを作った。この世で一番無意味なページかもしれない。
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動作を見よう!

細かい仕組みはあとで説明するので、まずは早速動かしてみよう!!

ロボットが動いて押す!
しっかり押す!
これがロボットが押した「私はロボットではありません」だ!

ちゃんと押せた。いいのかGoogle。

技術的には押せてしまったが、倫理的にいいのかという気持ちにはなる。
アイザック・アシモフのロボット三原則とかに反していないかな。

一応気になったので、動いているときに「私はロボットではありません」と音声を流すことでGoogleを欺く対策は施した。これでどうにかバレていないはずだ。

しかしこれで「自分はロボットではないと主張するロボット」が出来たと言えるのではないだろうか。シンギュラリティだ!

それは言いすぎだろうと思った人もいるかもしれない。言いすぎです。

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細かい仕組みを説明します

ところで今回の内容を編集部石川さんに相談したところ、こんな回答が返ってきた。

もうやってる人がいた!

すいません、シンギュラリティは7年前に起きてました。

しかも3000万再生目前だ。

ロボットアームを使ってパソコンを操作することで実現している。
悲しみに暮れたが、思いついたからには自分で作ってみたい。

違いを出すためにスマホをタッチするという手段を取ることにした。
カメラでreCAPTCHAマーク(矢印がぐるっと回っているマークだ)の位置を探すのである。

スマホの後ろにあるのがカメラで撮った映像。赤枠で囲んだマークが認識出来ている。

これで画面をスクロールしても位置がわかる。
あとはこの位置で画面をタッチすればいいのだ。

ということで用意した機構がこれだ。

4本の棒をひし形につなげて、一番上にタッチペンを通している。
根本にモーターを2つ付けていて、軸を回転させるといい感じに動かせる。

手で動かしてみるとこんな感じ。ぐにゃぐにゃといろんな位置に動かせて楽しい。

これと先ほどのカメラを組み合わせると、「私はロボットではありません」の位置にタッチペンを動かすことが出来るという寸法だ。

スクロールさせるとそれに従ってロボットも動く。

ここまで出来れば、あとはタッチペンをスマホの画面に押し付けるだけだ。
そこで登場するのがこれだ。

タミヤの「ラック&ピニオン ギヤセット」である。

これ、ずっと使いたいと思っていたが3年くらい寝かせてしまっていた。
個人的には満を持しての登場である。

ラックという直線状のギヤの上を、緑色のピニオンギヤが回転することで直線運動を実現出来る機構だ。

スイッチと組み合わせると往復運動がいい感じに出来る。楽しい~~~~~~~~

最高だ。これを使うのを待っていたのだ。
合体させて、ロボットの完成である。

正月から2週間ずっとかかってしまった。完成があまりに嬉しくて写真をたくさん撮ったので貼ります。

合体させるとメカ感が出ていいですね。色々むき出しだけど。
モーターを固定するところは3Dプリンターが大活躍。
カメラの邪魔にならないようにしゃがみ込むタッチペンが推しポイントです。
タッチペンは人間の手で持たないと画面の反応が悪くなってしまい、感度が良いものを追加で購入することに。

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