拭くジャイル
どんどん拭いていこうぜ、ということなのだ。拭いて綺麗にして行こうぜ、ということなのだ。タオル的なものを持ち、それを旋回させ拭いていくのだ。衛生的にもいいだろうし、水滴でカバンなどが濡れることもなくなる。そういうことなのだ。どうか、空より爽やかな気持ちでご理解ください。
温度差というものがある。この温度差で生まれるのが水滴だ。夏の暑い時期に自動販売機で冷たいペットボトルのジュースなどを買い、しばらくするとそのペットボトルの表面は水滴で濡れている。
これが問題なのだ。全てを飲みきることができずに、カバンなどに入れてしまうと、その水滴により、カバンの中のものが濡れてしまうのだ。拭かなければならない。ペットボトルの表面の水滴を拭かなければならない。そう、カッコよく。
我々は常に水滴との戦いだ。冬の寒い時期にエアコンをつけて車を運転すると、フロントガラスが曇る。水滴である。安全な運転のためには水滴は敵だ。自宅でも窓やサッシに水滴がつくことがある。カビやダニが発生する原因になる。水滴は敵なのだ。
夏にも水滴は発生する。温度差があるところに水滴は必ず発生するのだ。ペットボトルの水滴。これもなかなかに厄介だ。一度に飲み切れればいいのだけれど、後で飲もうとカバンに入れると、水滴によりカバンの中が濡れちゃうのだ。
もちろん普通にこのペットボトルの水滴を拭いてもいいだろう。しかし、水滴はペットボトルの汗でもあるのだ。そう考えてみようではないか。ペットボトルが言っているのだ。「汗」と。そうなると登場するのは彼だろう。
そういうことなのだ。どういうこと? と思ったかもしれない。でも、私としては、そういうことなのだ、としか答えようがない。山より深い気持ちでご理解ください。ペットボトルの汗(水滴)を、華麗に拭き取り、ペットボトルの実力を最大限に発揮させてあげるのが、彼の役目なのだ。
なるたけ説明できるように努力しよう。手術中に執刀医は様々な指示を出す。すべてはドラマで得た知識だけど、「メス」や「せっし」などだ。その一つに「汗」がある。汗という名の水滴が手術中には邪魔なのだ。その指示を受けて誰かが拭くのだ。そういうこととは、こういうことなのだ。
もちろん普通に拭いてもいいだろう。でも、それでは味気ないじゃない。カッコよく拭きたいじゃない。医療ドラマを見ているとカッコいいじゃない。だからこそ、カッコよく水滴を拭くには、この格好ということになるのだ。
もちろん彼が拭くのはペットボトルの水滴だけではない。自分の生活を考えてほしい。水滴に邪魔されることがあると思うのだ。そんな時に、普通に拭いてはカッコよくない。いつだって、カッコよくなければならないのだ。
こういうことなのだ。どういうこと? と思ったかもしれない。でも、こういうこととしか説明できない。海より広い気持ちでご理解ください。簡単に言ってしまえば、ある意味、メガネの汗である雨の水滴が綺麗になった、ということだ。
もちろん彼が拭くのは水滴だけではない。水滴以外にも拭かなければならないものはたくさんある。ぜひ自分の生活を思い出してほしい。拭く、という行為はたくさんの場面で出てくる。ということは、彼の出番もあるのだ。
カップ麺にお湯を入れた時に、お湯が跳ねて服やメガネについて、拭くという行為が出てくる、と思ったかもしれない。違うのだ。まだなのだ。我々は基本的には注意深く生活している。お湯を跳ねさせたりはしないのだ。
カップ麺の湯気でメガネが曇り、彼が現れると思ったかもしれない。そうではないのだ。冬ならばそういうこともあるだろう。しかし、季節は夏なのだ。温度差があまりないので、メガネは曇らない。つまり彼はまだ現れないのだ。
食後には口を拭きたいのだ。なんか付いている気がしちゃうから。そこで彼の登場ということになる。常に口の周りは綺麗にしておきたい。口の周りの汗とも言える汚れは許されない。彼により綺麗に拭き取られるのだ。ありがとう。
もちろん自宅でも拭くことはある。我々は拭くという行為をたくさん行っているのだ。もちろん全てに彼は登場しないだろう。着替えたりで大変だから。でも、可能な限り彼は登場する。なぜならカッコいいし、ヒーローだから。
窓は綺麗であってほしい。窓を開けない状態でも外をいつもクリアに見たいから。雨降っているかな、とか音以外でも確認したいから。そうなると彼の出番ということになる。手術着を着ているから服も汚れずに掃除できていいかもしれない。窓が綺麗にぴかぴかと光っている。
レトルトなのであっという間に完成した。美味しそうだ。そして、ここで彼の出番となる。もうお分かりだろう。盛り付けが終わった瞬間に彼の足音が聞こえていた。彼はどこにでも現れてくれるのだ。
料理はただ食べるだけではダメなのだ。美しさも必要になる。お皿にちょっと付いてしまったカレーを拭き取るという心遣いが、料理をより美味しくするのだ。そこで彼の出番ということなのだ。彼によりこのカレーはピカピカに輝き出すのだ。
どんどん拭いていこうぜ、ということなのだ。拭いて綺麗にして行こうぜ、ということなのだ。タオル的なものを持ち、それを旋回させ拭いていくのだ。衛生的にもいいだろうし、水滴でカバンなどが濡れることもなくなる。そういうことなのだ。どうか、空より爽やかな気持ちでご理解ください。
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