猟に必要なのは責任感
午前中に車に乗せてくれたベテラン佐藤さんが午後の猟から帰ってきた。

佐藤さんの銃には正確に狙いをつけるためのスコープがついていない。そんなものなくても当たるから、ということらしい。実際に佐藤さんは、射撃の大会なんかに出るとたいてい若手よりも当てて帰ってくるのだとか。
そんなレジェンドに狩猟のコツを聞いた。
佐藤「自分の責任を全うすることやな。撃ち損じても誰も怒らんよ。ただ無線ですぐ報告しなきゃいかん、それが責任。逃がしたのが鹿だったのかシシ(イノシシ)だったのか、どのくらいの大きさだったのか、どっちの方向に逃げたのか。そうしたら次の手が考えられるだろ」
人は撃ち損じるとだいたい「たいしたことない大きさだった」とか「何頭かで分かれて逃げたからよくわからない」とかいってごまかしたくなるのだとか。わかる。しかしそれでは責任を果たしたことにならない。猟はグループで行っているので、情報がすばやく共有されれば撃ち損じは他のメンバーによってカバーできるのだ。
あとで同じグループの人が「でも佐藤さん、外すとすげえ怒るよ」と言っていたが、それはまあそういうものなのかもしれない。

これまでの写真を見てもらうとわかる通り、今回お世話になった猟師のみなさんの多くは僕の親の世代、60歳、70歳、さらにはそれ以上の年齢だった。親方と呼ばれるリーダーの石井さんは85歳である。
毎日山に入って張り詰めた緊張感の中で獲物と対峙していると年を取るのを忘れるのだろうか。なによりみんなこの人生が好きで、動ける限り動物と向き合いたいと考えているように見えた。つまり本気なのだ。




猟師は山にいました
長々と書いたが、僕は近くで猟を見せてもらうまで、猟師という職業が実在していることすらリアリティを持って認識していなかった。
しかし今ならわかる。猟師は僕たちが知らなかった山の中で、自分たちの責任を背負って毎日動き回っているのだ。
知ってしまったからには、猟師、気になって仕方がありません。


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