生まれついての猟師
ーー佐藤さんはどうして猟師になったんですか
佐藤「最初はよ、親父が猟師だったもんで、中学の頃から連れられて山に入ってたわけさ。それから鉄砲撃てる年齢になったらもうずーっと猟師。理由とか考えたことないわな」
猟師として育ったから猟師になった、そういうことだろう。
僕たちも動物なので、もしかしたら狩りの遺伝子が受け継がれているのかもしれない。うちの猫が朝方に鳥の声に反応して目を輝かせるのと同じように、狩りをする環境があれば狩りに出るのは自然なことなのだろうか。
ーー危ない目に遭ったこととかありませんか
佐藤「ついこないだ、鹿が20頭くらい群れておれんとこ向かってきてよ。こりゃもうだめだーって思ってたらおれの両側を駆け抜けていったんよ。木だと思われたのかもしれないな」
猟銃には規則で3発までしか弾を込めることができない。つまり20頭で来られたらもうどうしようもないのだ。
猟師なら誰しもそういう「死にかけ」の体験を一つや二つ持っているのだという。それでも佐藤さんは中学から一度も山に入ることをやめたことがない。
チームの誰かが獲物を仕留めたら、その獲物を山からおろすためにみんなで集まっていったん下山する。その後は勢子(せこ)のみなさんが猟場を回って、獲物を追いかけていた犬たちを回収していく。
佐藤「鹿がよ、犬に追われて体が熱くなると海に飛び込んで逃げちゃうの。それを追っかけて犬も海に入っちゃったりするとさ、回収するのがたいへんよ」
ぜんぶの犬を回収するのに夜中までかかることもあるらしい。
猟に必要なのは「一に犬、次に足、最後に鉄砲」の順らしいのだが、実際について行ってみてそれがすごくよくわかった。猟、かなり犬頼りだ。
午後の猟
弁当をかきこんだらすぐに午後の猟である。誰も昼寝とかしない。みんなとにかく勤勉。
この一帯の山で猟をするのは今僕が見学させてもらっているグループに限られているのだという。ふらりとよそから来た人たちがここで猟をすることはない。
それは見学させてもらって理解したのだけれど、地元の山をすみずみまで、それこそ動物と同じくらいに知り尽くしていないと猟はできないからだ。

