背徳感が生む美味しい
完成品に手を加えることで、さらなる世界を見ることができる。それがこのノンアルコール飲料にアルコールを足すというものだ。めちゃくちゃ濃くて美味しくなるのだ。しかも、アルコール度数としては低いのでそこまで酔わない。我々の宅飲みは終わらないのだ。
ノンアルコール飲料というものがある。ノンアルコールビール、ノンアルコールハイボール、ノンアルコールレモンサワーなど、本来はお酒が入るものの、ノンアルコール版が存在するのだ。
飲んでみると意外に再現度は高く、お酒が入っているものと、味の違いはほぼない。大きな違いは酔うか否かだけ。つまりノンアルコール飲料は美味しいのだ。これをさらに美味しく飲む方法を発見した。
近年はいろいろなノンアルコール飲料が発売されている。本来はお酒が入ることでその飲み物の味が決まるはずだけれど、企業努力なのだろう、お酒が入っていなくても十分にその味を再現している。
ハイボールはウイスキーと炭酸水により作られたカクテルだ。ウイスキーはアルコール度数が40度前後と高いけれど、そこに炭酸水を入れることで、飲みやすく喉越しのよいカクテルとなる。居酒屋ではもちろん、スーパーのお酒コーナーなどでも人気のカクテルだ。
ノンアルコールハイボールが売られていた。偉そうだけれど、これがなかなかに優秀で、飲んでみると普通のハイボールの味を忠実に再現している。美味しいのだ。私の作ったハイボールよりも美味しい。つまりノンアルコールなのに、もはやハイボールなのだ。
ハイボールには「濃いめ」が存在する。ウイスキーの比率を増やして、ウイスキーの味をもっと楽しめるようにしたものだ。ただ濃いめは酔う。さらにお酒臭さが気になることもある。また炭酸水の量が減るので喉越しが減少することにもなる。
我々はハイボールを作る際に、ウイスキーを炭酸水で割らなければならない、という考えに取り憑かれていた。違うのだ。ウイスキーをハイボールで割るのだ。すると味が濃くなるのだ。喉越しも保持されるのだ。
厳密に言えば、ウイスキーをノンアルコールハイボールで割る。するとウイスキーの比率は普通のハイボールと変わらないけれど、「濃いめ」のハイボールが完成する。しかも、ノンアルコールハイボールで割っているので、お酒臭さもなく、喉越しも素晴らしいものになる。
ウイスキーのよいところだけが出たハイボールが完成した。ノンアルコールハイボールにウイスキーというアルコールを足す、が世界の真理だったのだ。飲んでみると濃い。めちゃくちゃ濃い。ただアルコール度数は普通のハイボールと変わらない。夢のような濃いめのハイボールの完成だ。
酔いにくいし、お酒臭さもない。ウイスキーの旨味だけがこのハイボールには存在する。ノンアルコール飲料の新しい使い方なのではないだろうか。ノンアルコール飲料にアルコールを足すが美味しいお酒への答えだった。
ノンアルコール飲料はハイボールだけではない。実は「ノンアルコール飲料にアルコールを足す」は多くのカクテルに革命をもたらす。お酒臭くない濃いめの、喉越しも保持された、お酒のよいところだけを集めたカクテルが誕生するのだ。
レモンサワーも人気のカクテルだ。広義では2種類以上のお酒などが混ざっていればカクテルということになるので、この記事ではカクテルと呼んでいる。そして、レモンサワーは上記のように作る。
レモンサワーは人気なのでやはりノンアルコールレモンサワーも存在する。飲んでみるとやはり普通のレモンサワーと遜色ない。ということは、なのだ。先の至高のハイボールでわかったように、焼酎を足してしまえばさらに美味しくなるのだ。
これがとにかく美味しい。めちゃくちゃ濃いのに清涼感で溢れている。フレッシュと言いたい。レモンなんて倍の倍に感じられる。夏の暑い日に飲みたくなるような、深みのある味わいと喉越し。もはや今までのレモンサワーには戻れない。
レモンサワーは焼酎と炭酸水の比率にそれぞれこだわりがあると思う。しかし、答えは炭酸水の代わりにノンアルコールレモンサワー。今までの比率はそのままに、濃くて爽快感、清涼感のあるレモンサワーになる。
梅酒を炭酸水で割ったカクテルを「梅酒ソーダ」と言う。やっぱりこれも美味しくて、炭酸を使うことで喉越しもよくなる。ちなみに先に梅酒を入れて、その後に炭酸水を入れるわけだけど、液面に炭酸水を注ぐのか、氷に当てて注ぐのかでも、喉越しは変わる。カクテルは奥が深いのだ。
やはり炭酸水で梅酒を割るので、お酒臭さはなくなるけれど、同時に梅酒の味も薄くなってしまう。今回のお酒全てに言えるのだけれど、炭酸水で割るから薄くなるのだ。そこで登場するのがノンアルコール飲料。今回だとノンアルコール梅酒ソーダだ。
このノンアルコール梅酒ソーダも素晴らしく、先に作った梅酒ソーダをノンアルコールで完璧に再現している。酔わないのに梅酒ソーダ。もはや神の域なのだ。それをさらなる神の域「大神の域」に押し上げる梅酒ソーダをご紹介したい。
梅酒をノンアルコール梅酒ソーダで割るのだ。梅酒の味は濃くなり、炭酸水による喉越しは保持される。それでいてお酒臭さもない。梅酒のいいところだけが出現する。
私は濃い味は正義と思っている。それを実現するのがこの方法。ストレートの梅酒より梅を感じることができる。心から美味い、と言い切れる味になっている。至高の梅酒ソーダとなるのだ。
ノンアルコール飲料にアルコールを足せば美味しいとわかった。ただし、必ずしもそうなるわけではない。例外もある。それはビールにノンアルコールビール。これは不味かった。お互いの悪いところが出ていた。
安い味になってしまった。駄菓子屋さんのような味。ビールにトマトジュースを注いだ「レッド・アイ」というカクテルはあるので、ビールに何か足すのがダメなわけではないと思うが、炭酸に炭酸はあまりよくないのかもしれない。先のものは全てお酒に炭酸要素はなかった。これがノンアルコール飲料にお酒を足す際のポイントとなるだろう。
完成品に手を加えることで、さらなる世界を見ることができる。それがこのノンアルコール飲料にアルコールを足すというものだ。めちゃくちゃ濃くて美味しくなるのだ。しかも、アルコール度数としては低いのでそこまで酔わない。我々の宅飲みは終わらないのだ。
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