ハンバーガーおいしいけど食べにくい問題
ハンバーガーって、食べにくくないですか？
手はソースで汚れるし！
具がこぼれ出ることも多々！
しかし、ハンバーガーって世界で一番食べられているフードだなんて聞いたこともあります（ほんとかどうかはともかく）。おいしいとしても、わざわざ食べにくいものを。同じような声をネットで見たことある。同志は多い。
それなら、ハンバーガーのプロに聞けばいいのでは？
つまり、ハンバーガーショップのオーナーさんに聞けばいいのでは！？
ハンバーガーのプロに食べ方を教えてもらう
ネルソン水嶋（以下、ネ） ：突然すみません！ 奇特なことを聞きまして。池上さん（以下、池） ：いえいえ！ なんでも答えます。食べ方、あんまり考えたことなかったけど……。
池上裕吾（ゆうご）さん。ベトナム中部の街・ダナンにあるハンバーガーショップ『Burger Bros』オーナー。
お店はいつ行ってもお客さんでごった返し！ 私も完全に胃袋を掴まれている
国際色豊かな客層
場所がダナンという人気観光地ということもあり（最近Googleが統計をとった旅行先トレンド世界一位にもなった！）、店内にはベトナム人はもちろん、欧米圏の方に加え、日本人も韓国人も中国人も…。そんな世界の人々から愛されるハンバーガーをつくりだす方なら、いろんな食べ方を見てきたはず。
サンプル写真じゃないです、頼んで撮った実物写真。
“ヨコを持つ”でなく”ケツを押さえろ” ネ ：まず、具がこぼれない食べ方が知りたいです。池 ：食べ方……ふだん僕がやってるのでもよければ。ネ ：それ！ それがぜったいお手本なんだと思います。池 ：まず、持ち方ですね 。ネ ：持ち方？
こうじゃなくて、こう！
ネ ：ほう！！池 ：ケツをちょっと押さえる、これで具が後ろにずれるのを防ぐんですよ 。日本の人は横から持つパターンが多くて、こぼれがちなんです。ネ ：言われたら納得だけど、コロンブスの卵だなぁ。
包み紙をおりおりするスタッフのみなさん
池 ：あとは、包み紙をうまく使う。ネ ：というと？池 ：紙で包んでバーガーの上半分だけを出したり 。お店で使ってる紙にもよりますけどね。アメリカにある『IN-N-OUT』ってお店では最初からそんな状態で出てきます。ネ ：言われてはじめていろんなアプローチがあると気づけるな…。
『IN-N-OUT』はこんな形で出てくる、食べやすそう。
はみ出た部分は”修正”しながら食べてしまえ ネ ：それでも具がはみ出したときはどうしたらいいですか？池 ：はみ出した部分を修正するつもりで食べましょう 。ネ ：え？ 回しながら食べるってこと？？池 ：そうです。ネ ：うおー！ あれは”はみ出すさだめ”くらいに思ってた……。
はみ出したら直そうとせずに思い切って食べる！
話を聞いていると、コツは”思っているよりも雑に扱う”なのかもしれない 。
「食べ物で遊んじゃいけません」という言葉が日本にはあるだけに、いやそもそも和食において手食文化を聞かないだけに（詳しくないので違ったらすみません）、そんな発想がなかった。
食べ方というよりは、“取り回し”を工夫すれば、結果的に食べやすくもなるワケか。と、そんな調子で感心していると、本国アメリカのアンビリーバブルな食べ方を教えてもらった。
アメリカンスタイルは”食べる前につぶす”
池 ：まー、あとは、つぶすとか……。ネ ：つぶす？ 今”つぶす“っておっしゃいました？？池 ：はい、アメリカではよく最初につぶしますね 。
やってみたらなかなか背徳感ある……！
ネ ：なんでつぶす！？池 ：それはやっぱり、バンズやパテや具が組み合った状態で食べたいから です。ネ ：はーなるほど池 ：僕ロサンゼルスに住んでいたんですけど、男女問わずつぶす人は一定数いました。ネ ：食べ物で遊んじゃいけないと言われる日本でまず出ない発想ですよね、超合理的。池 ：僕もたまにやるんですけど、例外もあります。ネ ：なんですか？池 ：マクドナルドのチキンタツタとかは、ふわふわのバンズと固めのチキンの食感がいいのでそれはしませんね。ネ ：なるほど～～。池 ：あと、パルプフィクションだったかな。映画でマフィアがハンバーガー食べるシーンがあってカッコいいんですよ。あれでもつぶしていた……ような。
VIDEO
つぶしてはいなかったけど、持ち方はシッカリとケツをホールドしていた。
以降、お店の人気バーガーBEST3に写真とともに、キャプションにて池上さんが『Burger Bros』を開くまでの経緯を三回に分けて挟みます（ハンバーガーなだけに）。
人気第３位：ブルーチーズバーガー（©︎2015-2019burgerbros）／日本で築地の仲卸業勤務→イタリアン→LAで寿司屋にラーメン店と、食べ物に関わりつづけてきた池上さん。ハンバーガーはもともと好きでLAのお店を食べ巡ったこともあり、いつか自分でお店をはじめてみたいと考えていたという。
韓国とヨーロッパはナイフとフォーク？
池 ：うちは韓国からのお客さんも多いんですが、8割くらいの方がナイフとフォークを使って食べます 。ネ ：へ～！ へぇ～～～！！池 ：それとよく、包み紙を広げてお皿みたいに敷かれていますね。ネ ：なんで？池 ：なんででしょう。ネ ：なんでだろうね……。
話を聞いている最中も、実際にナイフとフォークを使っていた韓国人のお客さん
池 ：韓国と日本の女性の間にもおもしろい違いがあって、韓国の方は一番大きなハンバーガーを頼むんですが、日本の方は小さいものを頼むんですよ 。ネ ：ナイフとフォークを使うから、かぶりついて化粧が落ちることもない、とかかな……。池 ：それもあると思いますけど、基本的に日本の女性は少食っていう気はしますね。ネ ：隣国なのにずいぶん違うもんだ、それがハンバーガーを通じて見えるとは。
この背景になにがあるのか、韓国人の友人に聞いてみたら「むずい（回答が）」とのこと。決定的なものはつかめませんでしたが、個人的には、以前から韓国の国民性のひとつに「合理性」があると感じているので、それもあるのかもしれない。
日本人と並んで中国人も手で食べる人が圧倒的多数派。肉まんとかあるしな。
人気第２位：ミーケバーガー（©︎2015-2019burgerbros） ／LA時代の友人がいたこともあり、自らもベトナムへ。サーフィン好きで、海の街ダナンが気に入り、そこで飲食店を立ち上げることに。ジャンルをラーメンかハンバーガーで悩んだという。
あまったバーガーソースはフレンチフライにつける 池 ：前に欧米人の方でハンバーガーを食べ終えた方に「下げますか？」と聞いたら、「待ってくれ、ソースにフレンチフライをつけて食べたいんだ 」って言われました。ネ ：なるほど！ ブルーチーズとか最高でしょうね。池 ：そうですね、アメリカでもブルーチーズソースはメジャーですし。
言われてみれば合理的かつ味も変わって楽しめる！
アメリカはケチャップ派、フランスはマヨネーズ派 。池 ：うちはフレンチフライにはケチャップを出してるんですけど、フランス人の方からはよくマヨネーズをリクエストされます。ネ ：”フレンチ”フライにはマヨネーズが王道ということか……。
せっかくなのでダブルでお願いしました。
ストローを串代わりにする 池 ：これも韓国の方ですが、BLTサンドウィッチみたいに、固定するため串代わりにストローを挿したり。ネ ：ストロー！？ まぁ……固定はできる……確かに。
ヨーロッパの方はフレンチフライをばらしがち 池 ：フレンチフライはカップに入っているのですが、皿の上にいったんザッと出す。ヨーロッパの方に多いです。ネ ：湯気で湿気るから、とか……？
こんな感じ
親子でバンズと具を別々に食べる 池 ：ベトナム人親子の方はよく、バンズ（パン）を子供に食べさせて、具は親が食べます。ネ ：”一杯のかけそば”みたいな！ ベトナム相場ではハンバーガーは安くもないけど。池 ：ひと組じゃなく、たまに見かけるんですよね。ネ ：バインミーでそういう食べ方が多いのかなぁ。
バインミーは、ベトナムのフランスパンに総菜を挟んだサンドウィッチ。
人気第１位：ベーコンエッグバーガー（©︎2015-2019burgerbros）／開店後まもなくから知ってるが、2015年当時この周辺の飲食店はほぼ『Burger Bros』だけ。誇張なしに、このお店が今のこのグルメ街の核となった感はある。
以上、ハンバーガーの”うまい食べ方”でした。
最後に今回聞いた話の中で、あまり人目を気にせず今日から使える方法をまとめます。
・ケツを押さえて持って具のはみ出しを防ぐ
ではみなさん、よきハンバーガーライフを！
共通フォーマットで国民性がよく見える
前に世界のコーヒー事情を記事にしたが（「コーヒーと世界史 」）、同じフォーマットだと国民性がよく見えておもしろい。そういえば、外国のコンビニ（雑貨店）やデパートを覗くが好きだ。「こういうもの」という思い込みを次々と打ち壊してくれるからだ。
最後に、Burger Brosの私のオススメは、ブルーチーズバーガーか、ミケバーガー、チリビーンズの入ったNAM-O Burgerです。めちゃくちゃおいしいよここ、私が食べた中で一番おいしい。
後日、実践したら人生史上一番きれいに食べられた。
取材協力 HP / Facebook
１号店（An Thượng店）
２号店（Nguyễn Chí Thanh店）（©︎2015-2019burgerbros）
お知らせ
ネルソン水嶋です！突然のお知らせですが、海外ZINEの編集長を退任することになりました（報告記事はこちら ）。それに伴い2018年6月よりつづけてきたデイリーポータルZへの記事提供は今回が最終回となります、これまで反響やコメントを通してたくさん勉強させていただきました！本当にありがとうございます。海外ZINEそのものはつづきますので、今後ともよろしくお願いいたします。また、ネルソン水嶋個人としてのデイリーポータルZでの執筆も継続します。あわせてよろしくお願いいたします。
