ビタ止めCMの世界を見て、あなたの心には何が残りましたか?これからはビタ止めCMをテレビで目撃したら、「タレントも二人羽織したりパネル切り出したり、大変なんだな~」と思ってあげて下さいね。
手法②『パネル法』
人力だと多少動いてしまうし、辛い思いをする人が出てきてしまう。ならば商品を持った手のパネルを置くのはどうだろう?
ちなみに、林さんにデイリルツのパッケージ作成や印刷などを発注したのはGW中だった。その上、当日のパネル切り出し作業もすべてお任せ。またもや酷使してしまっている。
誰か一人に皺寄せがいくと、やがてはプロジェクトの破綻を招く。私はディレクターとして、紙の端を押さえるなど出来る限りの協力をしたのである。
さて、二人羽織法と同じくパネルの適正位置を探る。
試行錯誤の末見つけた最適解をご覧あれ。
おお! これは素晴らしい。頭を思いっきり振っても、パネルはほとんど動いていない。印刷した紙と人間の肌の質感の違いを恐れたが、それもあまり気にならない。
だが、まだまだ工夫の余地はある。さらなる高みを目指し、安藤さんにも商品を持って貰う。
素晴らしい。このプロジェクト、良い風が吹いてる。
手法③『リアルタイム合成法』
最後はPC上で腕を合成して撮影してみる。
今回はPC上で腕の位置を探ることになるので、被写体である安藤さんは自分がどういう状況に置かれているのかまったく分かっていない。
この方法なら何をやっても腕は1mmも動かないので、ビタ止めレベルで言えば最上級。思う存分顔を動かして商品名と宣伝文句を叫んでもらった。
おお、これだ! 今まで試した中では、テレビで見るCMの違和感に一番近い。やはりビタ止めCMには完全なる停止が求められるのだ。
せっかくなので、今までの手法を全部盛りにしてみる。
これだけのインパクトがあれば、CMを見た消費者は悪夢にうなされ、翌日にはフラフラと薬局に飛び込むはず。我々には泣きながら握手を求めてくるクライアントの姿がはっきり見えた。
探求心は尽きず
我々は見事にビタ止めの技術を習得した。しかし既に存在する手法に追いつくだけでは、ライバル社を出し抜くことはできない。せっかくなら、むしろクライアント側が頭を下げて仕事を依頼してくるぐらいの圧倒的表現を生み出したい。
私の心中を察してくれたのか、今回のプロジェクトチームはここから真の力を発揮してくれた。メンバーが自主的に様々なアイディアを試しだしたのだ。
その結果、我々は新しい表現を幾つも生み出してしまった。今回は特別にビタ止め界のオープンソースとして皆さんにも公開するので、是非参考にしてみて欲しい。
すしざんまいポーズ的アピールの最上級
商品を持つ手が障害物を突き抜けてアピール
比率とか無視して、商品を目立たせることに全振り
腕が信じられないくらい長い人
帰り道、ふと我に返る
こうして我々は「ビタ止めCMの技術習得」というタスクを通り越し、新たな手法の確立まで成し遂げた。今回のプロジェクトチーム、本当に素晴らしかった。林製薬への納品が楽しみだ。
私は皆に心から礼を述べ、編集部を後にした。そして帰り道に思った。
「机から手が突き抜けたあたりから、ビタ止め関係なかったな。あと俺の仕事は小さな飲食店の経営だから、クライアントにCM頼まれることなんてなかったわ」