体感時間の3分、実際は何分か
体感時間のはかり方はこうだ。楽しい時や辛いときにストップウォッチを持って、3分たったと思ったら止める。ストップウォッチの時間が4分であれば、4分の時間がたっているのに3分と感じたわけで、時間はそれだけ速く過ぎている。逆に2分だったら、時間を遅く感じたということだ。
言葉で説明してもちょっとわかりづらいので、さっそく実例に入ってしまおう。まずは辛いとき、どれだけ時間を長く感じるかの実験からだ。
おあずけ
なにかを待っている時間というのは長く感じるものだ。一口に長く感じるといっても、はたしてどのくらいなのか。
それを計測すべく、編集部メンバーとお昼にやってきた。この日の僕は朝ご飯も抜いて、胃の中は空っぽだ。さて、実験開始。
注文してしばし待つと、テーブルの上に大盛りのランチプレートが置かれた。
僕はじっと見る。ただじっと見る。食べたいけど、我慢。
他の人には先に食べ始めてもらった。みんな楽しくおしゃべりしているけれども、僕は完全に上の空だ。口の中にどんどんよだれがたまり、もう我慢できない!となったとき、懐からおもむろに取り出すストップウォッチ。我慢が限界にきたときの時間の進む速さを計るのだ。
3分たった!と思ったところでストップすると、タイムは2分20秒。2分20秒を3分と感じたということは、やっぱり長く感じている。計算すると、だいたい実時間の0.8倍の速さで僕の時間は進んだのだ。
要領はわかっていただけただろうか。この「タイムが短いほど時間がたつのが遅く感じる」というのは直感的にわかりにくいので、太字になっている「僕の時間は実時間の何倍のスピードか」の部分を中心に見ていただければ幸いです。それでは引き続き、いろいろな場面で体感時間を計っていきます。
走る
中学や高校でやった持久走大会、走っているのはたかが15分やそこらなのに、ずいぶん長く感じた。冗談抜きで2時間くらい走っていたように思うのだ。改めて体感時間を計ってみたい。
軽快な走り出し。ちょっと余裕過ぎるかな…と思って途中からスピードを上げたくらいだ。そしてすぐに後悔。走りながらの3分って結構長い。
公園を1周半くらいしたあたりで早くも息が上がってきた。公園の端に沿って走っていたのが、だんだん内側に寄ってくる。体が少しでも楽をしようとしているのだ。時間で計っているから距離なんて関係ない、頭ではそれはわかっているのだけれども。
そんなことを考えているうちに、一瞬タイムのことを忘れてしまっていた。しまった、ちょっと長すぎたか。慌ててストップウォッチを止めると…。
タイムは2分半強。全然ながすぎることなんてなかった。時間は約0.9倍のスピードで過ぎた。
これを15分走り続けたら、時間の経過はもっと遅くなって、2時間くらいに感じるんだろうか。興味深い実験だと思うが、全身全霊を込めてお断りしたい。
痛いのを我慢する
最初のお昼ごはんの実験もそうだったが、やはり長く感じるポイントは「我慢」ではないだろうか。僕が考える世界3大我慢、「痛いのを我慢」「熱いのを我慢」「寒いのを我慢」のうち、今回は痛いのを我慢してみよう。
痛い!洗濯ばさみの口は小さく、細かくつままれた腕は思っていたよりずっと鋭い痛み!ほっぺたつままれた程度のものかと思っていたけど、これは挟まれたと言うより噛みつかれたに近い。洗濯ばさみは容赦なく僕の腕に食い込んでくる。
あと、ひとつ発見した。人間、痛いと笑う。
タイムは1分8秒40。時間は0.4倍のスピードでしか過ぎてくれなかった。ダントツの鈍足ぶりだ。
いいわけするわけじゃないが、決して痛いから早く終わらせようと思ったのではない。むしろ、痛いのによく3分もがんばった、って思ってた。でも時計見たら1分。全然がんばってねえ。
辛い時間の過ぎる速さ・まとめ
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辛い時間は長く感じる、それがちゃんと結果にも表れた。次のページでは楽しい時間は早く過ぎるかどうか、検証します。
楽しい時間は早く過ぎるのか
それ以上自分を痛めつけるのはもうやめて!誰もそうは言ってくれなかったので、自分で言った。辛い毎日とはもうさよならだ。ここからは楽しい時間をすごして、時間の速さを調べるのだ。
マンガを読む
いきなり地味ですみません。体を張ったあとは、マンガでも読んで、だらりとすごそう。好きなマンガに没頭している時間は、きっと短く感じるはずだ。
大学時代に好きだったマンガを、久しぶりに読み返してみる。たまにこういうことをするとマンガの内容と一緒に当時の思い出なんかもよみがえってきて、なんだかソワソワした気分になる。
ただでさえソワソワしているのに、ハトが柱の上に乗っかったり、子供がぐるぐる回り始めたりと、小規模に変なことがいろいろ舞い込んできて、気は散り放題だ。
それでも負けるものかと必死で集中した体感時間3分。もはや楽しかったのかどうかもよくわからないが、結果は4分15秒65だった。実際の時間より、1.4倍速く感じた。
ショッピング
次はショッピング。欲しいものが見つかっても見つからなくても、趣味のものに囲まれる時間はそれだけで楽しく、時間を忘れてしまうものだ。そんな楽しい時間を過ごすべく、近くのレコード屋にやってきた。
滞在時間3分という制限時間があると、かえって集中力が高まるものだ。このとき中古盤の新入荷の箱をパタパタとチェックする僕の手際のよさは、熟練した職人のそれであったはずだ。すぐに箱は端まで見終わり、あとはどの棚を見ようか、ちょっと考えているうちに、そろそろ3分の予感がきた。
店から飛び出してストップウォッチを止めると、3分13秒03。正確な時間の約1.1倍と、ちょっとだけ速く時間は過ぎた。
駅でビール
マンガ、中古CDときて、駅でビール。なんだか自分の「楽しい」観のだらしなさがどんどん露呈してきた。どんな自堕落な休日を過ごしているか見透かされそうで恐ろしいが、実験はつづくのだ。
ビールを一口あおると、頭の中で昼間の苦労がよみがえる。たくさん走って、強烈な痛みにも耐えた。体を張った撮影のあとは本当にビールがうまい。体を張った、といっても両方合わせて4分にも満たないわけですが。
結果は2分41秒97。実時間の0.9倍と、予想に反してちょっと遅く感じている。ホームの端からは遠くまで線路が見えて眺めがよく、ずいぶん楽しい気分だったのだ。それでも時間を長く感じたのは、特にやることがなくて手持ちぶさただったからだろうか。それとも酒が入って時間の感覚がぐにゃんとねじれてしまったのか。
楽しい時間の過ぎる速さ・まとめ
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ということで、楽しいことはやっぱり短く感じる。でも酒が入るとちょっと怪しい、という結果になった。
次のページではちょっと視点を変えて、あの場所での時間の経過を探ってみます。