特集 2022年3月8日

今はもうない秘境の温泉に行く

温泉に入りたい。

3月である。猫の手も借りたいほど忙しく、あまりの忙しさに痔になった。痔になったことはどうでもいいが、いやされたい気持ちがすごい。そうだ、温泉だ。前に記事で廃墟のような秘境の温泉に行ったことがある。あそこでゆっくり温泉につかりたい。

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:ザ・ノンフィクションZ ~おれ、結婚できますか?~


温泉に行きたい

2015年に「秘境の温泉に行ったら人生を考えさせられた」にて取材した温泉。「ここを曲がっていいのか?」と思いながら行った記憶がある。温泉も気持ちよかったが、あのドキドキしながら向かうのが秘境感があってよかった。ボロボロではあるが、気持ちいい温泉。あの温泉にもう一度入りたい。

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逗子駅からバスで向かう。

渋滞などがあり、25分近くかかったが最寄り駅のバス停に到着。ここから歩いて20分ほどだった気がする。

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滝の坂に到着。降りるのは自分ひとりだった。
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自然にあふれる場所にその温泉はある。

川や畑などをこえて歩く。家はあるが人通りが少ない。

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花の美しさに目をとめながら
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人の気配がない道を進んでいく。

工事の人に「こんにちは」と声をかけられる。「こんにちは」と返す。静かなコミュニケーション。

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道を進むと、工事の工事の道具置き場がある。危険という文字が目に入った。
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小さな稲荷神社を見つけた。

道に迷う

地図を見ると神社を曲がるように指示されている。ただ、その道が本当に合っているのかと不安になる道だった。

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神社を曲がると地図には出ているが、
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ここを行くのか?

確かに「入っていいのか?」という道を進んだ記憶がある。しかし、地図で示されているのは木が倒れていたり、草が生い茂り人が通った形跡がない道だ。

ちょっと先に進んで、行ける道を探そう。

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進んだ先に坂を見つけた。進んで行くと、
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獣道しかない。

もしかして、あの温泉はまぼろしだったのか。自分の記事にヒントはないかと探すと、記事の中に載っている道と同じような道を見つけた。

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以前、この道を通っていたようだ。

そうだ、何かお店っぽいところの道を通った気がする。記事で通ったと思われる道を進んでいく。

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山の中へと進んでいく。
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処分すると思われる材木が出てきた。

到着した温泉は閉店していた

何かあるような雰囲気が出てきた。人が全くいないので不安ではあるが進んでいくと目的地に着いた。

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ここが温泉である。

ようやく見つけた「星山温泉」。ただ、人がいない。管理人のおじさんがどこにいないのだ。

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ここに風呂があった記憶がある。

周りを見ても、管理人のおじさんも入浴する人もいない。廃墟のような静けさと少しの恐怖。カラスの鳴き声が山の中にこだまする。

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ボイラーがあった場所にはゴミが置かれており、炊いている様子がない。

以前は割った薪を燃やして温泉を温めていたのだがその様子がない。釜だと思われる部分には大量のゴミが捨てられている。

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ただ、比較的新しいスコップなども見かける。

浴室はどうなっているのか。入ろうとしたが、シャッターで閉められており、鍵がかかって入れない。

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シャッターに鍵がかかっていて入ることができなくなっている。
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隙間からのぞくと使われていないようだ。

どうやら使用をされてないようだ。以前もギリギリの状態で営業をしていたようなので、もしかしたら閉店してしまったのかもしれない。

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敷地の奥にある建物たちも崩壊している。

奥へと向かってみる。ご主人が廃材などで建てた建物は崩壊しており、ここに温泉があったとは思えない光景が広がっていた。

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今となっては何が建てられていたのかわからない。
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まだ崩壊していない建物の中をのぞいても誰もいなかった。

バス停に戻るとき、農作業している近所の方に聞いてみたところ「だいぶ前に閉店してしまった」とのことだった。やはり、もう営業をしていないらしい。いい温泉だっただけに残念である。もう一度、お風呂上がりにあのおじさんの話を聞きながら、ほてった体を涼みたかった。

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帰る際に見つけた看板があったと思われる板。今はもう何もない。
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温泉スタンドに行ってみる

地元の人に聞いたのだが、逗子には自分でくめる温泉があるという。そこに行ってみよう。逗子駅から歩いて30分、温泉スタンドの看板が見えてきた。

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「お、足湯もあるのか」と思って中に入ったら、
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中にあった看板は倒れており、
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足湯だったと思われるスペースも崩れていた。

足湯に入れないのは残念だが、温泉スタンドが目的だ。この為に一度駅に戻り、100円ショップでボトルを買ってきた。癒やされたい気持ちが1年中ある。

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こちらが目的の温泉スタンド。
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10リットル100円である。水を買うよりも安く温泉が手に入るのだ。

コンビニで水を買うより安い。ただ、この温泉、飲めないので注意してほしい。

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パンフレットがあるようなので中を見てみる。
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「つめたいけど本物!」の文字がかわいい。

星山温泉の温泉も元々はつめたく、沸かしていたのを思い出した。この辺りはつめたい温泉が湧き出てくる地域らしい。

パンフレットには「地下400メートルから湧き出ている天然温泉」と記載がある。アトピーや切り傷、筋肉痛や関節痛、冷え性、疲労回復に効果があるそうだ。お肌もすべすべになるらしい。

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2台ある内の1台は壊れていた。

このような温泉スタンドを初めて見たがなかなか味のある姿をしている。昭和の時代を感じさせる色合い、文字の雰囲気、周りの崩れた建物たちを見ていると過去にタイムスリップしてきたような感覚になる。

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持って帰ろうと5パック買ってきたので入れてみる。
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ガソリンスタンドのホースみたいだ。

実際に入れてみよう

お客は自分ひとりだった。くみ放題である。100円を入れたらスタートすると思い、身構えた。

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100円を入れた。
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さあ、温泉出てこい!
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出てこないな。
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使い方を見たら「赤いボタンを押して10秒後に出ます」と書いてあった。

焦った。出てこないのかと思ったが、ボタンを押してなかっただけだった。

ドタバタコメディみたいな記事でなく、静かな記事をお届けしたいのだ。こういううっかりミスみたいなのはいらない。

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押すぜ!
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よし、今度こそ出てこい!
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あ、ガスの元栓みたいにホースについているレバーを開けるのか。(この時点で10秒経っている)
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高圧洗浄機ぐらいの勢いで出てきて焦る。
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やばい、早く入れないと終わる!
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勢いが強すぎて入んないじゃないのこれ!?
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あ、落ち着いてきた。
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お、たまってきた…
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止まった。
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これで本当に終わったことが信じられず、何度もボタンを押したが出てこなかった。
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終わったのか。
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本当に終わったの?
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終わったんだね。おれたちの夏が幕を閉じた。

まず、勢いよく出た温泉に「こんな勢いよく出るなんて聞いてない!」と焦り、落ち着かないまま止まっていった。止まったあと、「おれの甲子園は終わった」という気分になった。それぐらいの悲しさがある。

ポリタンクとかで入れるのが正解なのだろう。買ってきたボトルのキャップ口が小さく、全然入らない。そして、入れれば入れるほど、ズボンのすそが濡れていく。

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スプラッシュマウンテンぐらいの水しぶきを逗子で味わっている。しかも温泉だ。スプラッシュマウンテンも温泉は出ますか?出ないので、こちらの勝ちです。
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顔が濡れた。温泉を入れるのに顔って濡れるんだ。
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なんとか入った。
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5本(20リットルぐらい)を手に入れた。

20リットルの温泉を持ち帰る

これを自宅まで持って帰ろう。見た感じ、だいたい20キロぐらいか。子どもの重さだ。とりあえず、20分歩いて駅に戻ろう。

そう思って背負ったリュック「修行か?」と思うほどに重い。ドラゴンボールで亀仙人が悟空とクリリンにこういう修行をさせるシーンがある。

たぶん、家に帰ったら天下一武道会で優勝できる強さになっていると思う。

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これ強くなるか、明日起きた瞬間に腰が終わるかの2択だ。
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今、バイソンの大群が来たら逃げられない。

本当は車に積んで帰るのが正解だろうが、ペーパードライバーなので運転はできない。おれには背負って持ち帰ることしかできない。江戸時代のやり方。

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重いがなんとか歩ける。

確かに体全体が重く、普段よりも歩くスピードは遅いが、別に歩けるし問題ないかなと思いながら進んでいると、自然が猛威を振るう。

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春一番が吹き荒れる。吹き荒れないでほしい。​​​​​

強風すぎるほどの強風。前に進むのも大変だ。これを読んでいる人たちに伝えたいことがある。春一番が吹いているときに温泉を運ぶのは大変なのでやめたほうがいい。すごく疲れるから。

あと、ウェブ記事の撮影もしないほうがいい。三脚がカメラごと倒れて、カメラが壊れそうになるから。悲しい気持ちになるから…。

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歩いて5分ぐらいで疲労度が限界になった。
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あと、三脚にカメラを取り付ける部分が風で飛んで行ったので、逗子で見つけた人は使ってください。

自宅で入ってみる

駅に着き、電車に乗って自宅に着いた頃には50キロやせていた。本当はやせてないがそれぐらい疲れた。だって、家についてとりあえず寝るほどだった。1時間近く寝てしまった。

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この日の朝、風呂掃除をしてきてよかった。余談ですが風呂洗剤がないので買っておいてください。(個人メモ)

さっそくお風呂に入れていこう。ボトルから浴槽へと注がれていく温泉。特に匂いもなく、色も透明だ。

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まさか、自宅で温泉が入れるとは。

20リットル全て入れ終わった。どれぐらい貯まったのか。今までの疲れをこれで癒したい。
 

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浴槽にたまった足湯ぐらいの量。

量が少ない。わかっていたことだがこれほどの量か。普通の浴槽がだいたい200リットルらしい。あと10回行かないとだめだ。

インターネットで調べてみると、温泉と普通のお湯を混ぜても温泉の効果があるらしい。よし、このまま沸かしてみよう。
 

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お風呂が沸きました。
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めちゃくちゃ気持ちよかった。

入ってみると、肌触りがよく、肌になじむ感じがする。お風呂上りも肌がしっとりしており、体もなかなか冷めにくかった。

温泉に入れて満足なので寝ます。おやすみなさい。


温泉スタンドめぐりをしたい

温泉スタンドを初めて使ってみたが、スタンドそのものがノスタルジックな雰囲気があっていい。

ただ、老朽化や利用者の低下などで撤去されてしまっているところもあるらしい。あるうちに色々とめぐっておきたい。

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これは温泉を運んでいるときに体力がつきかけて食べた、松屋のカルボナーラハンバーグ。うまい。
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