ままならなさを楽しむイベント、ヘボコン
ヘボコンは、ロボットを作る技術のない人たちが勘だけで作ってきたマシンを無理やり戦わせるイベントである。
ロボットたちは運が良ければヨチヨチと拙い動きをするし、そうでない場合はそもそも動かない。しかしどちらになってもその「ままならなさ」こそが愛おしいじゃないか。そういうイベントである。
まずはイベント開始前の写真で雰囲気をつかんでいただこう。
こういう大会である。
そうはいっても、みんなやる気ゼロで来ているわけではない。少なくとも家では、優勝目指してなけなしの工作力を駆使し、なんとか自分ができる最大限のロボットを作り上げてきたのだ。そこは真剣なのである。
でもいったん現場に来てしまえば、合言葉は「互いのヘボを讃えよ」。出来が悪いのも動かないのも、すべてヘボの名のもとに賞賛を受けるのがこのイベントなのだ。
技術力の低い人に最適な競技、ロボット相撲
競技はロボット相撲である。複雑な動きをしなくても、前進さえすれば戦えるからだ。
サンプルとして試合の映像をひとつ、見ていただこう。
このように、相手をフィールド(板)から押し出したら勝ち。制限時間は1分で、それを超えたら判定(より敵陣に攻め入った方が勝ち)となる。
そんな試合が全32チーム、31試合行われた。
そんな中、今回のイベントで印象的だったのは、ランダムで決めたはずの対戦カードの組み合わせであった。まずはその話をしよう。
ランダム関数が生んだ名試合
対戦順はEXCELの乱数で雑に決めた。にもかかわらず興味深い組み合わせがいくつも生まれた。
もうこな世紀末トラック(チーム絵文字(´・ω・`)) vs 戦うコントローラー タタコン(チーム萩原)
もうこな世紀末トラックはゲームに登場する車を再現したマシン。ボディの汚しなどかなり手が込んでいるが
このマシン、見れば何となく想像がつくと思うが、ラジコンカーがベースになっている。ところが試合前のミニインタビューで衝撃の事実が明らかになった。
コントローラーを家に忘れてきたというのだ!
そしてその対戦相手に登場したのがタタコン。
こちらはコントローラーを改造、自走するようにした「戦うコントローラー」がコンセプトのロボット。
この奇跡的な組み合わせにより、
ちなみに試合はもうこな世紀末トラックが負けた。動かないからね……。
パーティーモンスター(ゆりぴよ) vs DUCK GUN マーベリック(おもちゃドクター)
名前とビジュアルが全然一致しないのがパーティーモンスター。
これ、もともとは写真に写っているミラーボールみたいなロボットが、音楽を流しながら戦う予定でいたらしい。しかしイベント直前にライブ配信があることに気づき、音楽著作権への配慮(※)でロボットのスピーカーの線を切った。そしたらすべてが動かなくなったとのこと。
※Youtube Liveで著作権の侵害があると収益化できなくなったり、配信が止まったりする場合がある
そういうわけでパーティーモンスターの遺影を貼ったうんこカーが参戦することになった。出場者のエピソードとしては相当ヘボいが、イベント運営側としては泣ける気遣いである。
その対戦相手がこれ。
このDUCK GUN マーベリックは、コンセプトとしては映画トップ・ガンをモチーフにしており…
パーティー・モンスターが遺影になってまでしてくれた著作権への配慮をいっきに無に帰す暴挙で、司会者としておもわず「おい!!!」とでかい声で突っ込んでしまった。
試合ではDUCK GUN マーベリックが圧倒的パワーでパーティーモンスターを追い詰め、優勝候補の実力を見せつけた。
魔王ラスボス(ふくちゃんカフェ) vs メチャワルイマジユルセンロボ(秘密結社『星を堕とす者』)
悪役対決となったのがこの試合。
魔王ラスボスの異様さについてはこの写真を見てほしいのだが、
彼女たちは薬局「くすりの福太郎」のキャラ、ふくちゃんを広める推し活の一環として出場。
ただし「愛するふくちゃんが敵をボコボコするのはあり得ない」ので、誰を傷つけてもおかしくない魔王をロボットのモチーフにしたとのこと。
いちおう理屈は通ってる。でもどうしても飛躍を感じてしまうロジックだ。
対戦相手のメチャワルイマジユルセンロボはこれ。
とにかく世の中の悪を詰め込んだロボット。Youtubeに違法アップロードされているアニメ等の映像が不自然に大きな枠に囲まれているのを見たことがないだろうか。あれを再現したのが上部の額縁である。
正面には環境に悪いプラストロー、ヘボコンマスターこと僕の家族写真(脅迫用)、後ろに回ると「除草剤」と書かれたボトルも搭載している(時事ネタ)。悪辣の限りを尽くしているが、作りがわりと丁寧なのが気真面目さを感じさせる。
こうして巨悪がぶつかり合う試合、それと同時に
開始ブザーが鳴ると、なんとメチャワルイマジユルセンロボの方が今朝から故障中とのことで前進すらできず、一気に追いつめられる。そして後ろに転倒しかけるも…
最終的に判定負け。
良心の呵責により、棒で押すのを「ちょっとだけ」にとどめたところなど、悪役なのになんだかんだ良識を感じる二人のキャラが良かった。
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タミヤがお届けする、小学生向けの「モノづくとプログラミングのスクール」です!
全国各地で、たくさんの小学生が「自分のアイデアを形に」しています。
将来、その生徒達が、ヘボコンで大活躍する日を楽しみにしています!