特集 2023年9月25日

勘で作ったロボットたちが繰り広げる拙き戦い!ヘボコン2023レポート

去る8月26日、東京・渋谷に70人ほどの不器用な人たちが集まった。

その手には紙袋や段ボール箱が握られ、その中には戦闘用のロボット……のつもりで作った、がらくたのようなものが…。

この記事はロボット相撲イベント「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)2023」のレポートです。

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インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

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ままならなさを楽しむイベント、ヘボコン

ヘボコンは、ロボットを作る技術のない人たちが勘だけで作ってきたマシンを無理やり戦わせるイベントである。

ロボットたちは運が良ければヨチヨチと拙い動きをするし、そうでない場合はそもそも動かない。しかしどちらになってもその「ままならなさ」こそが愛おしいじゃないか。そういうイベントである。

まずはイベント開始前の写真で雰囲気をつかんでいただこう。

ロボットとしての動作に自信がないと、こうやってビジュアルに全振りして個性を出していくことになる
_DSC4522.JPG
夏休みの工作展を見に来た保護者の様子ではなく、ロボットバトル大会の調整スペースです
機能を主眼にしてきちんと設計していたら絶対にこうはなりえない、装飾盛りすぎのロボット
常連出場者になると、初めからうまく動かないことを見越して説明シートが用意されていたりする。周到
かと思えば「悪役令嬢あるある」のペーパーを配布する出場者も。どういうことなんだ
「動きます?」「いやダメっすねー!(笑)」そんなキャプションをつけたくなってしまう(実際に何を話していたかは不明)

こういう大会である。

そうはいっても、みんなやる気ゼロで来ているわけではない。少なくとも家では、優勝目指してなけなしの工作力を駆使し、なんとか自分ができる最大限のロボットを作り上げてきたのだ。そこは真剣なのである。

でもいったん現場に来てしまえば、合言葉は「互いのヘボを讃えよ」。出来が悪いのも動かないのも、すべてヘボの名のもとに賞賛を受けるのがこのイベントなのだ。

技術力の低い人に最適な競技、ロボット相撲

競技はロボット相撲である。複雑な動きをしなくても、前進さえすれば戦えるからだ。

サンプルとして試合の映像をひとつ、見ていただこう。

キムさん(HenachokoSideRobotics)vs クマドッグ(モリホン)の試合(3倍速)。キムさんが初速で土俵際まで追い詰めるも、クマドッグが押し返してキムさんを場外へ

このように、相手をフィールド(板)から押し出したら勝ち。制限時間は1分で、それを超えたら判定(より敵陣に攻め入った方が勝ち)となる。

そんな試合が全32チーム、31試合行われた。

そんな中、今回のイベントで印象的だったのは、ランダムで決めたはずの対戦カードの組み合わせであった。まずはその話をしよう。

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ランダム関数が生んだ名試合

対戦順はEXCELの乱数で雑に決めた。にもかかわらず興味深い組み合わせがいくつも生まれた。

 

もうこな世紀末トラック(チーム絵文字(´・ω・`)) vs 戦うコントローラー タタコン(チーム萩原)

もうこな世紀末トラックはゲームに登場する車を再現したマシン。ボディの汚しなどかなり手が込んでいるが

先頭の爪だけその場で作ったので作りが雑

このマシン、見れば何となく想像がつくと思うが、ラジコンカーがベースになっている。ところが試合前のミニインタビューで衝撃の事実が明らかになった。

コントローラーを家に忘れてきたというのだ!

そしてその対戦相手に登場したのがタタコン。

コントローラーだ!

こちらはコントローラーを改造、自走するようにした「戦うコントローラー」がコンセプトのロボット。

この奇跡的な組み合わせにより、

対戦フィールドにラジコンとコントローラーが一対並ぶというシュールな絵が生まれた

ちなみに試合はもうこな世紀末トラックが負けた。動かないからね……。

試合の様子(3倍速)。左がもうこな世紀末トラック。坂の上から滑らせる作戦(ヘボコンでは「位置エネルギーエンジン」と呼ばれる)でちょっとだけ動くも、その後なすすべなく押し出された…。

 

パーティーモンスター(ゆりぴよ) vs DUCK GUN マーベリック(おもちゃドクター)

名前とビジュアルが全然一致しないのがパーティーモンスター。

うんこカーに写真…?

これ、もともとは写真に写っているミラーボールみたいなロボットが、音楽を流しながら戦う予定でいたらしい。しかしイベント直前にライブ配信があることに気づき、音楽著作権への配慮(※)でロボットのスピーカーの線を切った。そしたらすべてが動かなくなったとのこと。

※Youtube Liveで著作権の侵害があると収益化できなくなったり、配信が止まったりする場合がある

そういうわけでパーティーモンスターの遺影を貼ったうんこカーが参戦することになった。出場者のエピソードとしては相当ヘボいが、イベント運営側としては泣ける気遣いである。

その対戦相手がこれ。

重量制限ギリギリまでモーターを大量搭載し、優勝最有力候補のマシン

このDUCK GUN マーベリックは、コンセプトとしては映画トップ・ガンをモチーフにしており…

意気揚々とトップ・ガンのテーマ曲を流しながら登場

パーティー・モンスターが遺影になってまでしてくれた著作権への配慮をいっきに無に帰す暴挙で、司会者としておもわず「おい!!!」とでかい声で突っ込んでしまった。

試合ではDUCK GUN マーベリックが圧倒的パワーでパーティーモンスターを追い詰め、優勝候補の実力を見せつけた。

試合の様子(3倍速)。DUCK GUN マーベリックが土俵際に追い詰め、最後の情けでとどめは刺さず時間切れで判定勝ち。

 

魔王ラスボス(ふくちゃんカフェ) vs メチャワルイマジユルセンロボ(秘密結社『星を堕とす者』)

悪役対決となったのがこの試合。

魔王ラスボスの異様さについてはこの写真を見てほしいのだが、

本人たちの格好とロボットの方向性が一致しない

彼女たちは薬局「くすりの福太郎」のキャラ、ふくちゃんを広める推し活の一環として出場。
ただし「愛するふくちゃんが敵をボコボコするのはあり得ない」ので、誰を傷つけてもおかしくない魔王をロボットのモチーフにしたとのこと。
いちおう理屈は通ってる。でもどうしても飛躍を感じてしまうロジックだ。

対戦相手のメチャワルイマジユルセンロボはこれ。

要素が多すぎる

とにかく世の中の悪を詰め込んだロボット。Youtubeに違法アップロードされているアニメ等の映像が不自然に大きな枠に囲まれているのを見たことがないだろうか。あれを再現したのが上部の額縁である。

正面には環境に悪いプラストロー、ヘボコンマスターこと僕の家族写真(脅迫用)、後ろに回ると「除草剤」と書かれたボトルも搭載している(時事ネタ)。悪辣の限りを尽くしているが、作りがわりと丁寧なのが気真面目さを感じさせる。

こうして巨悪がぶつかり合う試合、それと同時に

コスチューム対決でもあった。

開始ブザーが鳴ると、なんとメチャワルイマジユルセンロボの方が今朝から故障中とのことで前進すらできず、一気に追いつめられる。そして後ろに転倒しかけるも…

除草剤がストッパーになって転倒を防ぐという奇跡が
その後、「棒でちょっと押す」作戦で小悪党ぶりを見せつけるも

最終的に判定負け。

良心の呵責により、棒で押すのを「ちょっとだけ」にとどめたところなど、悪役なのになんだかんだ良識を感じる二人のキャラが良かった。

いったんスポンサー紹介を挟んで、次のページに続きます。

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接着剤メーカー、セメダイン株式会社です!「つける」技術を探究しつづけ、2023年で100周年となりました。 今年もヘボコニスト皆様の「つくる」たのしさを、「つける」ことでお手伝いできれば嬉しいです! 

 

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電子工作用モジュールウェブショップ、スイッチサイエンスです!当社は、さまざまな分野の科学する人に貢献することを目指して、電子回路モジュールの設計・製造・国内外仕入・販売をしています。つけてると何かかっこよく見える部品も売ってます☆

 

 

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タミヤがお届けする、小学生向けの「モノづくとプログラミングのスクール」です!
全国各地で、たくさんの小学生が「自分のアイデアを形に」しています。
将来、その生徒達が、ヘボコンで大活躍する日を楽しみにしています!

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