その実、免罪符を売っている
KALDIはすごい。今回ばかりは余計なものを買わないぞと意気込んで入店しても、気づけば何かを手に取っている。
そうか、おれの人生に足りないのは「いぶりがっこのタルタルソース」だったんだな!と納得させられる妙な力がはたらいている。
今回のハンマー付きチョコレートを見かけたときも一撃でやられた。
これはお菓子を売っているように見えて、その実、食べ物で遊んでいいという免罪符を販売しているのだ。その思い切りのよさに感心したのである。
小さい頃、親戚の家にあった風月堂のゴーフル缶をヨーヨーのように振り回していたら、伯父さんから食べ物で遊ぶな!と怒られたことを思い出した。
それ以来食べ物では遊ぶまいと心に誓っていたが、KALDIはハンマーを手に取って己の殻を破れと言う。ありがたいことである。鈍器はペンよりも強し。当然だ。
チョコを叩き割る
それでは、付属のハンマーでチョコを叩き割ってみよう。
おらっ!とは言わず、黙って対象を見つめてハンマーを振り下ろす。散らかってしまうので箱の上でやる。
静かに割れた。そりゃ、割れるだろうよ。何度も叩いて一口サイズに砕いていく。ドライフルーツを叩くと衝撃が吸収されてしまうので、弱点であるチョコ部分を狙ったほうがいい。ボス戦の攻略情報か。
はじめての体験なので楽しい。楽しい。確かに楽しいが、チョコが小さくなっていくにつれて、どこか冷静さを取り戻している自分に気づいた。
そうか。別におれはチョコレートをハンマーで叩きたいなんて思ってなかったのかもしれないな。
売り場でハンマーを見かけたときの衝撃は一体なんだったのだろう。
本能のままに突き動かされて、脆く崩れやすいものを粉々にして、最後にはわけが分からなくなる。恋愛と同じだ。もしくは恋愛じゃないか。どっちかです。
一口大になったチョコを食べてみる。
ドライフルーツのふんにゃりとした食感と薄いチョコのパリッとした食感の対比がおもしろい。それと、甘い。おいしい。
いろんな形に割れたチョコのかけらは、食べるたびに食感や味が全部ちがっているので、飽きがこないのもいい。一枚丸々ペロリと平らげてしまった。
楽しいし美味しいし、バレンタインプレゼントとしてもおすすめできる。想いを寄せる相手がハンマーブロスなら尚いいかも♪
さて、一度だけの登板では木槌がもったいないので、せっかくですから梅干しの種を割っておこうと思います。
種は硬くて割れず、カーンという高い音が部屋中に響き渡った。例えこれが割れていたとしても、それが何になるんだろうな…と思った。