チームプレーで乗り切ろう
今回の企画では芳沢さんをはげますためにたくさんの人たちに協力してもらった。いわばチームプレーの結果である。
プレゼンテーションで緊張しそうなときは、それに関わってきた人たちを背中に感じながらやってみると自信が持てるかもしれません。今回登場したグッズと共に、ぜひ参考にしてみてください。それから高ゲタを履くときは足をくじかないように気をつけて。
人前で話をするというのは緊張するものである。
どんなに慣れた人でもまったく緊張しないというのはうそだろう。それが社会人1年目の新人さんによる初めてのプレゼンテーションであればなおさらである。
今回はそんな悩みを抱えるある社員のために、いろいろ考えました。
※この記事は東京ガスコミュニケーションズの広告企画です。記事中で社会人1年目の芳沢さんが作ったバナーは、この記事の公開に合わせて実際にデイリーのトップに出稿されています。
芳沢さん(本名)は東京ガスコミュニケーションズに入社して1年目の社員である。
芳沢さんは東京ガスコミュニケーションズにデザイナーとして入社して1年目。この1年ですでに新聞やウェブサイト、キャンペーンなど、大きな仕事のクリエイティブ(作り物)を任されてきたという。
いま社会人の人は自分の1年目の頃を思い出してほしい。ほとんど研修期間だった人もいるんじゃないだろうか。僕は1年目の夏に新人寮の廊下をはだかでうろついて寮長さんに写真撮られ、会社に送られたことがある。
いま学生をしている人は自分の未来を思い描いてほしい。就職して最初の年、バリバリ働く即戦力となっている自分が想像できるだろうか。
これはきっと社風だとか部署の都合だとか、芳沢さんの能力や資質などの他にも要因があるのだろうとは思う。それにしても、である。入社1年目の社員にこれだけの成果を作りださせたのはちょっとすごいことではないか。
そんな芳沢さんが今抱えている案件がある。次に入ってくる後輩に向けての採用サイトのプロモーションだ。そのためのバナーをいくつか考えて、今週上司にプレゼンすることになっているらしい。ちなみに芳沢さんにとってプレゼンテーションの大舞台は初めてのこと。
今回、芳沢さんの上司である宮川さんから「後輩の芳沢が作ったバナーを見てほしいんです」という相談を受けた。
僕たちはデザインの素養がないので見てもわからないかもしれないですよ、と言いながらも、面白そうなので見せてもらうことにしたのだ。
これまで自信満々に説明していた芳沢さんが、なんだか急に誰もがイメージする「1年目の社員」に戻ってしまった。どうした、芳沢。
芳沢「いくつか案を考えたんですが、考えすぎて面白いのかどうかわからなくなってしまって」
わかる。面白いことって考えすぎると行く先々に壁が現れて、そこから出られなくなってしまうのだ。そういうときの対処法も実はあるにはあるのだけれど、そういう小手先の対処法を新人さんに教えるのもよくないように思う。
ということで僕たちなりのアドバイスをさせてもらった。
とはいえ僕たちにできることなんてしょせんその場を和ませることくらいである。あとはとんちでプレゼンを乗り切る、とかしか…
「とんちで!(宮川・芳沢)」
それか?
というわけで、僕たちからはとんちを駆使して新入社員の芳沢さんのはじめてのプレゼンテーションをサポートさせてもらうことになった。これは責任重大である。
プレゼン会場は東京カルチャーカルチャーを押さえた。われらのホームグラウンドである。
僕たちは何度もここでイベントをやったりしているので、今ではそれほど緊張感なく舞台を踏んでいるのだけれど、初めての人にとってはこの景色ですら大いなる脅威なのではないか。
しかし今回は、プレゼンテーションの直前まで芳沢さんに自信をつけてもらうため、さまざまなとんちグッズを用意してきたので安心してほしい。
まずは肩の力を抜いてリラックスして本番に備えてもらおう、ということでプロの指圧師を呼んだ。
斎藤さんはライターであり漫画家でもあるが、本職は指圧師である。国家資格も持っているし治療院だって開業している本格派だ。僕も前に冗談半分で肩を治してもらったことがあるが、斎藤さんにマッサージしてもらった後のあの錆が落ちたような感じはいまでも忘れられない。
では斎藤さん、1年目芳沢さんをお願いします。
「これはだいぶ凝ってますね。広背筋をほぐすだけでもかなり良くなると思いますよ。時間もないので手っ取り早いところから治しますね」
そういいながら斎藤さんはテキパキと芳沢さんの肩こりを治していく。聞くと芳沢さん、昨日は遅くまで今日のプレゼンテーションの準備をしていたという。ついでに目も覚ましてもらおう。
(しばし続く施術)
どうでしょう芳沢さん、ちょっとは良くなりましたか?
まさかこんなに効くとは思っていなかったようだが、施術を終えた後は表情からして別人である。リラックスしたというよりもそれを通り過ぎて自信すら身につけているように見えた。それとも内に秘めた自信が体をほぐすことで表に出てきたのか。
でもまだ始まったばかりである。次はハイテクを駆使したVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)を用意したのでどうぞ。
VRグラスをかけたとたん、芳沢さんがうれしそうに周囲にぺこぺこしはじめた。お礼も言っている。自分で作っておいてなんだが、VRってやっている人を外から見るとおかしいな。
いま芳沢さんが見ている映像はわれわれが作った「はげましVR」である。下の動画が360度で見えているはずだ。
はげましVRはデイリーポータルZのライターが集まって作った。まずは褒める言葉を書き出していく。
ここで撮影した360度ほめられ動画をVRグラスで見ると、まさにこの中心に立ってみんなから褒められているような気分になれるのだ。これは自信がつくに違いない。
どうでしょう芳沢さん!
続いては編集部古賀から、自信のつく食べ物のプレゼントである。
ところで僕らからすると芳沢さんは娘でもおかしくないくらいなので、企画を忘れてほとんど親心で応援しはじめている。
古賀さん、それはなんですか。
舞台で緊張したときとか、よく「手のひらに「人」を書いて飲み込んじゃえ」って言うだろう。それを実写化したのだという。
定番のカツ丼も用意した。カツ(勝つ)丼、ということで受験生が受験前日食べたい食事ナンバーワンである。芳沢さんもこれを食べれば勝利間違いなしだろう。
時間も誌面も限られているので次々行こう。
自信満々の古賀さんが持ってきたものは何かというと。
続いて
説明するのも野暮だが、よい姿勢は視線が前を向くために自信が持て、さらにその視線自体を高ゲタで高い所から覗かせることでさらに効果を倍増させようというのだ。ほんとかよとも思うが、自信たっぷりの古賀さんに言われるとそうなのかなという気分になる。
隣にいるライターのトルーがスーツを着ているのにもワケがある。今日は舞台でプレゼンテーションを行う芳沢さんのSP(ボディーガード)役をお願いしてあるのだ。必要かどうかは別として、これは安心感がある。
さらに実はもう一つ、とっておきの装置があるのだけれど、これは本番まで取っておくことにする。
僕たちにできることは全部やった。あとは芳沢さんに本来の力を発揮してもらうだけだ。
いよいよ芳沢さんの初プレゼンテーションがはじまる。
今回は芳沢さんのプレゼンテーションを見てもらうため、直属の上司に来てもらった。
宮川さんは入社当初から芳沢さんと一緒に仕事をしてきた直属の先輩である。そして生野さんは二人の上司なのだけれど、名刺を交換したらなんと取締役と書かれていた。上司すぎだ。
しかしもう待ったなしである。
それでは芳沢さん、1年の成果と新しいバナーについてのプレゼンテーションをよろしくお願いします。
準備中に流れていたBGMが消え、代わりにステージ上の芳沢さんにスポットが当たる。瞬時に会場の空気がキーンと音がするほど張り詰めていくのがわかる。
この状況、さすがに緊張するだろう。見ているだけで息が詰まる。
持ち時間の15分のうち、芳沢さんは最初の5分でこれまでの成果を発表するパートを終えた。いい感じである。
出だしはすごくいいのだけれど、なにしろ会場が広いうえに正面には取締役が座っているので油断はできない(こちらが仕込んだんだけど)。
プレゼンテーションの最中はだれも口を挟まない。そのため、芳沢さんが少しでも黙ると会場の静けさが重みを持って潰しにかかってくる。大丈夫だろうか。ここで芳沢さんの視線にかすかな不安が宿るのが見えた。
オーケー、とっておきの道具を投入である。
パラメトリック・スピーカーはものすごく狭い範囲にだけ音を届けることができる非常に指向性の高いスピーカーである。さっきヘボコン石川に作ってもらったと言っていたアイテムだ。
緊張という魔物は、この静けさの中に潜んでいると思うのだ。芳沢さんにだけ音を届けることができれば、リラックスして実力を発揮できるはずである。
上司の宮川さん、生野さんはじめ、会場は相変わらずの静けさが占めているが、パラメトリック・スピーカーのおかげで芳沢さんにだけはみんなからのはげましが聞こえているはずだ。
ここで芳沢さんのトーンが少し変わったように感じた。明らかにこの「場」を自分のものにしてきている。
言霊というものがあるだろう。ひらたく言えば言葉の力である。魂のやどった言葉は、それを受けた人に影響を与える。
この瞬間、上司の宮川さん、生野さんだけでなく、会場にいたスタッフ全員がいつの間にか芳沢さんに注目していた。
プレゼンテーションは滞りなく終わった。
最後は「この場を設けてくれてありがとうございました」と、芳沢さんは僕たちにも感謝の言葉をくれた。なかなかそこまで言えないぜ普通。
すばらしい。
これは芳沢さんを褒めていると同時に、さまざまなとんちグッズで応援したわれわれチームへの賛美でもある。よくやった芳沢さん、よくやったおれたち。
芳沢さんの初プレゼンテーションを聞いて、上司のお二人からコメントをもらった。
--芳沢さんのプレゼンテーションどうでしたか?
「バナーの提案がしたい、としか聞いてこなかったので、いろいろな意味で想像を超えていましたね。バナーについてもコンセプトがしっかりしていたのでわかりやすかったです。」
--1年目から実戦に投入するというのはそういう方針なんですか?
「正直なところデザイナーとして新卒を採用するのが初めてだったので、教育プログラムみたいなものがなかったんですよね。そんなタイミングで仕事が決まったので芳沢さんに振ってみたら見事にやってのけちゃった。変な言い方ですが、いい新人さんが来てくれたなって思っていますよ。」
--これからの芳沢さんに一言お願いします。
「芳沢さんは毎回作ってくるものが違うんですよね。いい意味で「らしさ」が前に出てこない。でもそれが逆に彼女の強みだと思うので、これからもその調子でやってもらいたいですね。僕らも彼女のやる気に対応できるよう、成長していかなきゃいけないと思っています。」
「一年目とは思えないプレゼンテーションでした。彼女はいつも生き生きと仕事してくれるんですよね。自分が一年目の時にどうだったかなと思い出すと、驚くし尊敬しちゃいます。これからも楽しく仕事してもらえるとうれしいですね。応援します!」
僕たちもいい経験をさせてもらいました。芳沢さん、お疲れさまでした。
今回の企画では芳沢さんをはげますためにたくさんの人たちに協力してもらった。いわばチームプレーの結果である。
プレゼンテーションで緊張しそうなときは、それに関わってきた人たちを背中に感じながらやってみると自信が持てるかもしれません。今回登場したグッズと共に、ぜひ参考にしてみてください。それから高ゲタを履くときは足をくじかないように気をつけて。
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