お椀を蒸してみたりしていた
この試行錯誤の結論が「スベスベの机をさらにスベスベにするために10年使え」という再現しにくいものになってしまったことを大変心苦しく思っております。
もし使い古してスベスベの机がご家庭にある方はやってみてください。
みそ汁のお椀が突然スーッと動く現象、あれを狙って起こせたらおもしろいと思った。色々やってみたら分かったことがあるのでご報告します。
家で晩ご飯を食べていると、みそ汁のお椀が突然スーッと動くことがあると思う。僕は生涯で2回ぐらいしか経験していないが、びっくりするのでその時のことをすごく鮮明に覚えている。
最初に見た時は、非科学的な色々なことを一瞬でブワーッと考えた。妖精とか小人とか超能力とか魔法とか勇者の血族とか、そういうことだ。
でも実際はそういうことではない。僕は選ばれしものではないのだ。下の図のようなことが起こっているみたいだ。
これ、狙って起こせたらすごく楽しんじゃないか。そう思って机をほんの少し傾けお椀を濡らし、お湯を沸かしてそっと注いだらお椀が動いた。
間を置いて動く感じがすごくいい。
意思があるみたいに少しずつ移動した。かわいい。仕組みを思い返すと机の傾きで滑っているだけなんだけど、ほんの少しの傾きで滑るのでパッと見ただけだと勝手に動いたみたいに見えるのだ。意思を持ったお椀。
これはいいぞと思って、デイリーポータルZの企画会議で「お椀でエアホッケーをやります」と宣言をし、担当編集の藤原さんにも動画を送った。
『近代お椀三種』としてオリンピックの競技化を目指そう。
エアホッケーはどうすればいいのかよく分からなかったので競技にできなかった。深く考えずにしゃべるクセがある。
競技化にあたって、ここでお椀が動くためのポイントを整理しておこう。色々試した中で最適と思った方法が以下の手順である。
そして、下に何かをかませて机を傾ける。
傾けすぎると何もしなくてもお椀が滑るし、滑っても不思議に見えないので注意。
お椀はなるべく軽くて薄いものが動きやすかった。みそ汁の熱が下に伝わりやすいからだろう。
あとはじっと見つめていると、突然音もなくお椀がスーッと動く。おめでとう。びっくりしたりキュンキュンしたりしよう。
しかし万が一、それでも動かない時は、お椀の、机に接する部分から水蒸気が漏れている可能性がある。
お椀が動くポイントも分かった。準備は万端である。藤原さんに会議室を借りてもらった。
まずはデモンストレーションに、動くお椀を見てもらおう。ポットを借りてお湯を沸かして準備をする。机を傾け、お椀を濡らす。もう慣れたものである。
オフィスビルの奥、カードキーをかざして入る会議室で、ひたすらお湯の入ったお椀を見つめるが動かない。
上の4枚の写真は藤原さんに撮ってもらっていた動画から静止画を切り出した。なぜ動画を撮っていたかというと、動くと思っていたからだ。
何度か試すがどうも動かない。いや、家では動いたのだ。家では動いたんですよ!
熱が出たと思っていそいそと病院に行って測ると、平熱だったりする、あの現象が起きている。
いや、そういうことじゃないのだ。これは別に全然不思議じゃない。
「お椀ってそういう性質なんですかね」と藤原さんが言った。本番に弱いのだ。動いてほしい時に動いてくれない。玄関にある懐中電灯か。使いたい時に限って電池がないのだ。
1時間お椀にお湯を入れては見つめ続けたが、動くことはなかった。
「やぶれかぶれ」というタイトルで展示したい。
家ではお椀が動いたが、会議室では動かなかった。違うところといえば机である。会議室の机もツルツルしていてお椀が滑りそうだなと思ったのだが、家にある、あの机ほどではなかったかもしれない。
この机は、僕が大学を卒業してはじめて一人暮らしをしようという時に母が買ってくれたものである。確か、足が折りたためて持ち運びやすいのと、大きさがちょうどいいので選んだのだ。もう10年近く、今は食卓として使っている。
Amazonに恐らくこれなんじゃないか、というものがあった。4,000円くらいだ。レビューをざっと見たけどお椀が動く、という記述は見つからなかった。
昔はパソコンを置いて作業台として使っていた。マウスパッドを敷かずにいたので、マウスがあった場所がスベスベである。
そうこの机、長きに渡って使われ続けたせいでスベッスベなのだ。
ポイントはこの机だったのだ。10年使ったこの机があれば、お椀がスーッと動く現象を狙って起こすことができる。
Amazonの商品ページはこちらだ。これを買う。
そしてこの机を10年使う。スベスベにするために多少荒い使い方をしてもいいですが、もちろん大きな傷などはつけない方がいい。
10年後、雑誌などを使って机を傾ける。
もしお椀が動いたら、その時こそ、あなたの10年間が報われた瞬間である。おめでとう。
色々なことが分かったが、一人である。本当はこれを誰かに見てもらいながら楽しく実験したかった。仕方がないので最初に考えていた「お椀滑り」だけでも一人でやってみた。
3人ぐらいいた方が盛り上がるだろうと思ってお椀は3つ用意していた。でも藤原さんと僕以外にこの記事の関係者がいない。仕方がないので、3人目はフリー素材の犬。
お椀がスーッと動いた距離
筆者 103mm
藤原さん 187mm
犬 0mm
こんな感じの結果だった。
おめでとうございます!
この結果をご本人に伝えてコメントをもらおうかなとも思ったのですが、会議室では動かなかったしもう無邪気さで押し切るのも限界だなと思ったので、僕の心の中でだけチャンピオンとさせていただきました。
この試行錯誤の結論が「スベスベの机をさらにスベスベにするために10年使え」という再現しにくいものになってしまったことを大変心苦しく思っております。
もし使い古してスベスベの机がご家庭にある方はやってみてください。
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