ダクトの上の端が見えてしまうと焼肉ではなくなる
気をつけよう。
網を囲んで肉を焼いて食う。同席する者たちの結束が高まるだろう。それが焼肉だ。
そう思っていざ焼肉屋に行くと、向かいの人としゃべりづらい。間に排気のダクトがあるのだ。
肉、酒、活気。全てが完璧なのに思いがけないところで躓くあの感じ。あの気まずさに『焼肉』が詰まっていると思った。焼肉屋じゃない場所でもあれをやりたい。
つまり、こんなものを作りたい。
家でそばを茹でて食べていても、なんなら外を歩いていたって焼肉気分である。
この記事で言う「焼肉気分」というのは、口の中に焼肉の味がしてくることではない。焼肉屋でのちょっとした気まずさが再現されることだ。あれがあるからこそ、肉はうまいしご飯は進むし最後にもらう飴がスーッとするのだ。
いいぞ。排気ダクトっぽくはなりそうだ。
問題は、これをどうやって顔の前に浮かすか。考えずに作り始めてしまった。
手を止めて「馬 ニンジン ぶら下げる」で画像検索した。ダクトを浮かす参考にしたかったが、どのイラストもぶら下げる仕掛けが簡略化されていてよく分からない。
馬を見ながら考えた案
どの案も大掛かりですぐに作れない。困ったな。
もちろんならなかった。一点だけを噛んでもダクト全体は安定しない。アゴも痛い。
でも、このでっぱりがもっと長くて丈夫なら、手で持っても浮いている感じは出せそうだ。ほら、持ってる手はダクトで隠れちゃうわけだし。
使ってみよう。向かいに人が座っていると思ってください。
いいぞ。天井から伸びている排気ダクトに見えなくもない。棒を持つ手は、リモコンやスマホでも握っているとしよう。
すごいぞ。こんな簡単なコミュニケーションのために首を傾けて目線を送る感じ。思った以上に焼肉だ。
もう食べ物とか机とかもなくてもいいかもしれない。
外でも焼肉気分だ。排気ダクトに見えるし、顔が隠れてしゃべりづらい。
どこから伸びているのか分からない排気ダクト。その奥にいるしゃべりづらい相手。焼肉だ。
この場合、向かい合う相手は人ではなく川だろう。川は僕に対して「顔が隠れてしゃべりづらいな」と思ったに違いない。
川よ、それが焼肉なのですよ。
川と焼肉ができたところで満足して家に帰った。口をさっぱりさせたくてアイスを買って食べた。
気をつけよう。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |