チラ見せはげます会 2021年9月8日

味の観察 2021年残暑の陣 / チラ見せはげます会

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はじめに

記事を書いた編集部の古賀です!
こちらの記事は、デイリーポータルZの存続を課金で支える会、「デイリーポータルZをはげます会」の会員先行公開記事として執筆しました。
先行公開! と言いつつ、会員のみなさんからの大好評を頂きまして、先行公開の翌週にはもうこうして一般公開させていただく次第です。はげます会はそういうことを認めてくれるありがたき集まりです。
デイリーポータルZが好きな方々に向け執筆したため、いつも以上にやりたいように書かせてもらっています。ご了承ください~!


味の観察 2021年残暑の陣 

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「味」のファンである。

素材の味、食べ物そのものの味ももちろん支持するが、ここでいう味とは食品メーカーが苦心のすえ開発する「○○味」のことである。

チョコ菓子だったらいちご味、スナックだったら海苔風味、乳製品だったらブルーベリー味なんてところが定番だろうか。

そんな定番がある一方で、もはややりすぎて何がなんだかわからなくなっている分野があるのも御存知の通りである。

そのあたりの現状を観光的に観る、それが我々がこれから取り組まんとせん「味の観察活動」である。

というわけで皆さん、味までご同行願います(逮捕みたいな言い方になってしまった)。(古賀及子


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味観品、スーパーで9種類買ってまいりました

○○味はいたる食品に存在する。なにせカニカマすらフレーバー展開する世である。

ここでご同行くださったみなさまを安心させたいのだが、本「味の観察活動」はエンジョイを旨とする。コンプに命を燃やすと使命感により勤労の度が増し娯楽性が薄まるためそこは求めない。

数件のスーパーをはしごしこれはというものをそろえた。数は少ない楽しんでやっていきたい。

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いま味を「やってる」のは誰か

9品買い揃えて解ったことで、予想通りとも言えることがある。それが「味をやっているのはやっぱりカップ麺」だということだ。

味の観察 2021年残暑の陣(1)

  • 味をやってるのはカップ麺

食品には遊びのあるジャンルとそうでないジャンルがある。感覚的にジャンクであるほど遊びが強く、ヘルシーであるほど遊びは弱い傾向にあるように感じる(例外もあり後述する)。

カップ麺に加え、スナック菓子に味の自由な商品が多い印象がある方は多いのではなかろうか。

娯楽性の高い食、ということだと思う。

今回ピックアップしたいのは3種。うち2種がチキンラーメンだった。

チキンラーメンは今年の8月16日「屋台メニュー3品」を全国で新発売さえせた。登場した味は「 屋台のじゃがバター味」、「屋台のやきとり味」、そして「屋台のソース焼そば」。

特に「屋台のじゃがバター味」、「屋台のやきとり味」においては、これぞトラディショナルな、いかにもやってる市場の味(地上の星)の感がある。感激した。観察しよう。

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屋台のじゃがバター味。正統派たる、味のやっている感
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「バター香る特製オイル」(何だそれはバターではないのか)を3分の麺ふやかしの間に蓋上であたためる。

バターオイルは全く透明な液体だった。

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香りもスープの味も完全にじゃがバター。麺はチキラー。ちゃんとおいしい。
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屋台の焼き鳥味。このパッケージ、やり慣れていると言って良い

こちらには別添で焼き鳥のタレがついてくる。麺に焼き鳥のタレを入れて食べるのだ。「私はいまなにをやっているのであろう」そう思わせる力も、味にはある。

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香りとスープが焼き鳥で、麺チキラーであった。

こうして飛び道具のような味を謳歌してもカップ麺は絶対に絶対に期待を裏切らずしっかりとその味を全うしそして美味しく仕上げてくる。

味を模索し味でユーザーを楽しませてきたトップランナーの気概がうかがえる。さすがだ。

なお、このシリーズ、テーマは『おうちで縁日気分! ひよこちゃん祭り』だそうだ。今年は各地で多くのお祭りが中止になっていることと思うと泣けるはからいである。

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企業間コラボが味になる

カップ麺、残るひとつはチキンラーメンとは別角度で味を攻めた、非常に意外な一品だった。

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それがこちら。「青じそドレッシング風 わかめそば」

つまり青じそドレッシング味ということでよかろうかと思うが、味にするその土台が「わかめそば」だ。

チキンラーメンもまあそうっちゃそうなんだけど、土台のすでに完成しているところに味を足していく力強さはさすがカップ麺。慣れている。

それにしても、ジャンク感もなくどういう方向性なのだろう。見ればサンヨー食品とリケンのコラボ商品だった。

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なるほど

今年8月9日発売の商品で、「リケンのノンオイル 青じそ」をイメージしたカップ麺なんだそうだ。

味の観察 2021年残暑の陣(2)
  • 企業間コラボあるところに味あり

イメージソングならぬ、イメージカップ麺、あるな、そういうのなるほど、コラボだけじゃなく普通に既視感あるな! そう思って「煉獄さん イメージ カップ麺」で検索したらちゃんとあった。あるんだよそういう文化が。

しかし煉獄さんには味はないが、青じそドレッシングにはちゃんと味がある。

わかめそばとの融合、メーカーの腕も鳴らんというものである。

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どう工夫をするのかなと思ったら、まんま青じそドレッシングの味で笑った。そういう戦い方か

さて、この流れでさらにコラボの味を眺めよう。

菓子パンにも企業間コラボ商品の味があった。第一パンとTamayoshiのコラボ商品である「わさビーフパン」。

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わさビーフ味のパン

こちらは毎夏の人気惣菜パンだそうで、企業間で協力して味をやろうというのが恒例になっているらしい。わさビーフ味のパンを食べて夏を感じるという可能性がこの世にはあるのだ。

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パンから「わさビーフ」を知る人生もある
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パンがふわふわで甘うまい
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フィリングの肉がわさび味。パンの甘さに合う
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ダークホースとしての マルちゃん 焼きそば

さて、ここまで取り上げたカップ麺、、菓子パン、また商品としては今回これぞというものが見当たらなかったもののスナック菓子といった品々は、遊びのある味が登場してさもありなんという食ジャンルだろう。

それ意外の食品で私が期待の目で見ているものが2ジャンルある。

ひとつは納豆。素材の味の難しさをものともせず、タレでフレーバーバリエーションを広げんとしている。

昨今は焼き肉のタレ、麻婆、うなぎのタレを添付する商品が現れるなど野心的な動きを見せる。

そしてもう一つが、そう、マルちゃん焼そばだ。

味の観察 2021年残暑の陣(3)
  • 納豆とマルちゃん焼きそばは見逃せない

御存知の通り、3人前が一袋になっているど定番の焼きそばであるマルちゃん焼きそばは。塩やたらこといった味展開があるのもスーパーではよく見かける光景だろう。

そんな中、2019年8月に突如投入された味がある。「お好みソース味」だ。

これには驚いた。だって、レギュラーのやつがそもそもお好みソース味じゃなかったのか。

焼きそばって素の麺買ってきて添付のソースがなかったら家にあるお好みソースで味付けするし、ちょっとまって、何!? 

もちろん別商品として存在するだけにレギュラーとお好みソース味は内容は違う。麺は中太でソースは液体。ただなかなか微細に違いを出してくるものだな……と世間(という私)をざわつかせたものだ。

ざわつきがようやく落ち着いてきたかに見えた2021年、夏の限定品としてあらたな味が発表された。何か。「BBQ味」である。

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こちら!

まてい!

まてい、まていまてい。

私達は長らく、マルちゃんの焼きそば(レギュラー)をバーベキューで食べてきたではないか。肉を焼き野菜を焼き、最後に余った肉と野菜で焼きそばにして、食べてきたではないか!

あのバーベキューの焼きそばは、バーベキュー味ではなかったっということに、これはなりはせぬか! 

理屈としては、夏野菜に合う、いわゆるバーベキューソースがついた焼きそばということのようだ。

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言いたいこと、やりたいことは分かる

現状、マルちゃんの焼きそばにはレギュラー、お好みソース味、バーベキュー味が肩を並べている。

学習により理解を及ばせないと同種のものの見分けがつけられない現象が人間にはあるが(大勢いるアイドルや野球選手のお顔は、素人にはなかなか見分けがつけられない)、それがマルちゃんの焼きそばという狭い範囲で起こっている。最高だ。絶対に今後も見逃せない。

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なるほど、ちょっとスパイシーでさわやかな味に感じた
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ヘルシーの味は「健康法」からくる

さて、本記事前半で「感覚的にジャンクであるほど遊びが強く、ヘルシーであるほど遊びは弱い傾向にあるように感じる」と記し例外を断った。

ヘルシーであっても唐突な味が市場に投入されることが、実はある。

それは、健康法がうなったときである。そしてこの波はふしぎと飴に来やすいようだ。

味の観察 2021年残暑の陣(4)
  • 健康法がうなると飴に味が来る

 こちらは以前、未知の栄養成分を観察した記事から。

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骨形成促進の効果があるとされる筋骨草味のミルクソフトキャンディ
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季節の変わり目に備えとして舐めることを推奨したテアフラビンののど飴

あたらしい味が、健康法とともにやってくるのがおわかりいただけるかと思う。

そして今回新たに発見したのが「柿渋」だ。なんだ、それは。

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UHA味覚糖 透き通った柿渋のど飴

私が見つけたのはUHA味覚糖のものだが、カンロからも同様の商品が出ているようだ。

柿渋とは、渋柿をなんやかやして抽出したもので抗菌作用の報告から一時話題になっていたらしい。

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「気になる生活習慣におすすめ」

効能について知らなかったものだから、つい「新味登場!」ととびついた。味は一般的なのど飴でとてもおいしかったです。

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クラシックなのど飴


柿と梨はもはや定番フレーバー化か

さて、柿に触れた流れで行くと、ヨーグルトのダノンBIOに秋の季節限定フレーバーとして8月2日から「柿と梨」という商品が出ていた。2018年に販売され好評だったものの再登場品だそうだ。

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「秋の贅沢」と「史上最強レベルの生存率」が融合
味の観察 2021年残暑の陣(5)
  • 柿と梨のフレーバー化が完了

40代前半の私の感覚でいうと、かつて柿と梨は味にはされない果物だった。

有果汁で味にされる果物といえばぶどう、りんご、オレンジ、パイナップル、グレープフルーツで、無果汁で味にされる果物がイチゴ、メロン、バナナというのが定番の世で育った。

突如、特に紙パック飲料だったと思うが梨味というのが登場したのはいつごろだろう。00年代だろうか。えっ、梨が味になるんだと驚いた覚えがある。

以降、梨に続きスイカが、そして柿も味になった。

かつてフレーバーではなかったもののフレーバー化の完了を感じる。

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柿と梨、そういえばせーのでは食べないよなと思った。おいしい

味自体の味

さて、今回は調査対象をなんらかの食品に○○味として味付けしてある商品(ヨーグルトに柿と梨、そばに会おじぞドレッシング、といった具合)を念頭に探した。

それそのものが味である商品、ドレッシングやジャム、調味料は対象外としている。

いずれ続編として観察会を開催したいと思っての除外であったが、そんななかでも不可避だったものがあり最後に紹介したい。

大阪の海苔メーカーの雄、ニコニコのりが今年の3月に発売した「海苔佃煮バター」だ。

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これは……?
味の観察 2021年残暑の陣(6)
  • 調味料が動くとでかい

この商品、あくまで名称は「のりつくだ煮」。メーカーの公式サイトを見ると

>原料に黒のり(アマノリ)のみを100%使用し、バターを加えて佃煮にしました。

とある。

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名称は「のりつくだ煮」キャプション

海苔メーカーがバターを取り込み佃煮化する。アビリティものの漫画の世界観を感じさせる商品なのである。

味が味を食らい自らの味の高みを望む、味ファンにとっては次号が楽しみすぎるクライマックスが来た。

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見た目はかなり海苔の佃煮なんだけど、かおりがリッチにバター! これは変わった味だぞ!


過去を見ても食べるラー油や麻辣など、調味料が動くと味界も大きく動き出す。海苔バターが新たなインパクトを味に起こすか。気の抜けぬ日々である。


味は終わらない

ああ、こうしてみなさまとともに味を観られたことが本当にうれしくありがたい。ここまで同行くださり本当にありがとうございます。

味は終わらない。食品メーカーの奮闘あるところに味があり、ファンである我々のもとにもたらされる。

味はそう、季節をめぐる星座のようなものなのかもしれない。

また近くお会いしましょう。「味」の印の旗を振ります。ぜひご一緒に、味を観に行きましょう。


記事終わってふたたび解説です

いやはや、焼きそばのバーベキュー味には驚きましたね! それにカップ麺に焼き鳥のタレを入れる日が人生におとずれるとは。

そんな微細な日々の楽しみを一緒にかみしめる、はげます会はいつでも会員を募集しています!(1,100円/月 なので、払えなくなったらいつでも簡単に退会もできます~)

ご興味を持ってくださった方はぜひ以下から詳細をご覧ください~!

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