特集 2021年3月17日

ハブに注意!おれの「ハブ注」コレクション

訪問に便利なマップつき!

私はそれを「ハブ注」と呼んでいる。

奄美・沖縄諸島で公園や畑、養豚場などに出現する猛毒ヘビ「ハブ」への注意を促すために据えられた「ハブに注意」看板である。

約6年間、ハブを探して島々をめぐりながら、時には残虐な悪魔の化身のごとく、時にはかわいいマスコットのように路傍に立つハブ注たちをフォルダーに格納していたのでそれをぶちまけたい。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:一番キリンに見えるナンはどれだ?「K-1グランプリ」地味に開催!

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

ハブ探しのきっかけはハブ注

そもそも私がハブを追いかけるきっかけとなったのはハブではなく「ハブ注」を見たからだ。さかのぼること7年ほど前、イボイモリを探して沖縄の小道を歩いていた時に鉄塔に掲げられた護符のようなハブ注に出くわし、一気に沖縄の薮を見る目が更新された。

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こわい。
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なんか言ってるし。

ガラスケースや飼育ケージごしに見ていたあの毒蛇がここではふつうに出現するのだ。頭ではわかっていたけどこのざわめきは現地で体感してこそ。このやばい藪からぬっと顔を出す野生のハブをたくさん見たいとう欲望がこんこんと湧き上がった。

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周辺にえもいわれぬ緊張感を醸し出す。

「ハブに注意」を履き違えて逆にハブに注目してしまい、ハブの住む島を全部回ろうとトカラ列島から沖縄は久米島近くの無人島まで、行った先々で夜にハブを求めさまよい(ハブは夜行性)、日中は集落や畑、公園でハブ注を探してきた。

昼間に出てくるハブも本物に負けないくらい多様に分布しているので見てみようではないか、見ようぜ。

おそろし系

ハブの獰猛さを強調し注意を喚起するしごく正当なアプローチのハブ注だがそれはそれでかっこよく見えてしまう。

<石垣島>

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滝平二郎の切り絵のような端正な顔立ちのハブ(石垣島にいるのはサキシマハブ)、いきなり牙から毒をたらしておそろしい。看板の形や色、書体もかっこいい。

<沖縄・平安座島>

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とにかく機嫌が悪い。金銭トラブルかなにかだろうか。

<トカラ列島・宝島>

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吐噶喇(トカラ)と読む。ガードレールに貼られていたミニハブ注。

日本有数の難到達地である宝島・小宝島に住んでいるのはトカラハブという小型のハブだ。うろこまで丁寧に描き込まれたかっこいいハブステッカーは島の売店で販売されており、嬉々として購入したが愚かなことに宿に帰る間に落としてしまった。また買いに行きたい、つまり長期休暇したい。

<沖縄・西原町>
ここのハブ注はお気に入り、おすすめである。誰に?

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どこかレトロ味のあるタッチのハブが心をつかんで離さない。彼は私の心を咬んでゆきました。
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ただ恐ろしいのではなく、神話に出てきそうな神々しさを身にまとっている。
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この絵巻物感!

<伊江島>

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私が見てきた中で唯一の木登りハブ注。臨場感たっぷりの逸品。
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ハブのアップ。爬虫類の無感情さがよく出ている。

 

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コミカル系

おそろし系とは逆にキャッチーでかわいいハブ達。公園などで子供達にアピールするためかおそろし系よりこちらの方が圧倒的に多い。このハブ達を集めてハブだらけのシルバニアファミリーを作りたい。

<沖縄・渡名喜島>

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おそろし系ラインかとも思ったが目つきが鷹の爪団(吉田くん)にしか見えなかった。
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サーベルタイガーのような牙を研ぎ澄ましているが表情はおっとりしている。せっかく取ってきた住民票を失くしそう(実際失くしたのは私だが)


<沖縄・中城村>

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体幹がしっかりしてアクティブな雰囲気、外回り営業を任せたい。営業は毒で稼げ。


<沖縄・瀬底島>

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土にまみれて消えかけているが、かわいいハブが這っているのが見える。

瀬底島のハブ注はライター仲間の怪生物ハンター、平坂さんに教えてもらったものだ。平坂さんが地面に落ちる前の状態を記録している。

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まつげエクステがばっちり決まっている。好かれようとしているハブだ。

<沖縄・久米島>

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模様がシンプル、まさに久米島型ハブ。

過去の記事で何度か触れているが久米島には他の地域のハブと比べて体の模様がシンプルな独特のハブがいる。
私はこのハブに惹かれて何度か久米島を訪れているが、ハブが見つからないとこの看板を見に行く。縁起をかつぐとかそういうのではなく、生きているハブと違ってハブ注は確実にそこにいてくれる「会いに行けるハブ」だからだ。少し病んできているかもしれない。

<沖縄・伊平屋島>

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顔はやせこけ、どこか自信なさげ。実のところハブはとても臆病なヘビで、こちらから追い詰めたりしない限りさっさと逃げる。パブリックイメージとは対極の、悲しく切なくだからこそ美しいハブの真実の姿が描かれているのだ。
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同じく伊平屋島。メッセージが切実。おっしゃるとおりです。

伊平屋島は2019年に訪れたのだが、林道沿いの鉄塔ではじめて見たハブ注と同じモデルを発見、6年ぶりの邂逅に目頭を熱くした。

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おお!あの時の!いい感じで色あせて!

 

<沖縄・首里城公園>

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首里城にもドヤ顔のハブ注が。4ヶ国語で警告されてて国際的なスターの貫禄。

<沖縄・西原町>

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グレート・ブリテン(消費財以外のものに姿を変えられるサイボーグ戦士)が変身したハブに違いない。

<沖縄・奥武島> 

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口を大きく開けて威嚇。発してる稲妻がパワーポイントのオブジェクトっぽいなと思ったのだが......。
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これひょっとしてフリーハンドツールとかで描いてない?だとしたらすごい。パワポでこんな牙するどくできるのか。

<奄美大島・瀬戸内町>

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ラグジュアリーな模様のハブ。奄美大島特産の織物「大島紬」の柄はソテツの葉とハブの紋様がモチーフとなっているが、この看板から新たな大島紬が生まれるかもしれない。英語でDANGERと繰り返されているがこれを見て中学生の頃DANGEROUSを「ダンゲロース」と読んでいたのを思い出した。ハブはダンゲロース。

 

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写実系

なんだかんだハブの臨場感を伝えるには写真が一番。

<沖縄・渡嘉敷島>

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猛毒。

<奄美大島・奄美自然観察の森>

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たちの悪いベーグルのような体勢。

工事現場には安全確認系の標語や各種書類が貼ってある掲示板が立てられているがそこにもハブ注ハブは鎮座している。

<徳之島>

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安全掲示板の右端にあの2文字が。
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背後からハブをしとめようとしているのは畑地かんがい事業推進のイメージキャラクター、ウギもん(ウギは島の方言でさとうきび)である。

<沖縄・南城市>

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掲示板一枚を使ってハブ特集。読み応えある情報量。
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八重山(西表島とか石垣島周辺)に分布しているサキシマハブが沖縄南部にいる理由まで書かれている。

字ハブ

文字だけで書かれたハブ注は時として絵ハブよりも雄弁に危険性を語る。意識の源に触れてくるのだ。ようするに、字ハブもかなりいいですねと言いたい。

<沖縄・伊計島>

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公園の植木のように植えられている。

<トカラ列島・小宝島>

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地元の方に「ここは昼でもハブ(トカラハブ)が出るよ」と言われた。
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なるほど......。雰囲気持ってるわ。

<徳之島>

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公園と林の境目はハブ注の出現しやすいポイント。徳之島で仲良くなった旅の人が見つけて送ってくれた。ありがたや。

極限まで研ぎ澄まされるともう「注意」はいらない。

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ハブ!

ダムではヘビ注?

沖縄のダムではハブ注でなく「ヘビに注意」すなはち「ヘビ注」を見かけた。

<沖縄・久米島(儀間ダム)>

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ちょっとコブラっぽいシルエット。

<沖縄・うるま市(倉敷ダム)>

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退色して見にくいが「へび注意」とある。
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おなじく倉敷ダム。ヘビともハブとも書いていない。いずれにせよすごく弱そう。

次に訪れた倉敷ダムでもヘビなのを見て驚きがダム湖の湖面を滑っていった。ダムはヘビと言う決まりでもあるのか。沖縄県南部土木事務所に聞いてみたところ、特に決まりはなく、同じ管轄下の金城ダムでは「ハブ注意」表記との事だった。まだまだ全然足りんなフィールドワークが。

マッピングしました

ハブと人の境界に立ち、硬軟さまざまな表情で警告を発するハブ注達はまだまだどこかの畑や公園の隅で私を待っているに違いない。

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ハブに注意しろよ。

一体どこにニーズがあるのかわからないがハブ注をマッピングした。お近くにお立ち寄りの際はぜひこの子らを観賞してやってほしい。

 

 

近所の立入禁止看板のような感覚でハブ注が立っている。この日常感のずれを味わうのも旅の醍醐味ではないだろうか。実家の近所にはマム注(マムシ注意)があるのだが。
 

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ヤマビルも元気。

<告知です>
当サイトの記事に参加していただいた事もある、片手袋研究家の
石井公二さんがすごい愛好家達をゲストに招き、路上観察の現在地を探る都市観察のエド・サリヴァンショー、はたまた阿川佐和子のこの人に会いたい的なトークイベント「都市のラス・メニーナス」第11回に不肖わたくしが参加します。本記事のハブ注をはじめハブ探しの中で出会った路上観察ネタをテーマにいろいろだらだら話します。
お時間のある方はぜひ、なんといっても無料です。

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ハブからつながり、出会う路上観察がテーマ(脱線おおいにあり)

■日時:2021年3月22日 19:30〜 無料配信
■配信はこちらのアドレスから→https://www.youtube.com/watch?v=arwIlcwVZSU

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