ごめん
これまでさんざんガッカリさせられてきたニセオジギ達だが、正体がわかってしまえば憎む理由はなにもない。そもそも最初に勘違いしたのは僕の方だったのだ。それなのにギプスとかつけてごめん。
そして今回いろんな植物を見て思ったのだが、ニセオジギ達のあの葉っぱの形はけっこうかわいい。これからは「オジギソウっぽい植物」じゃなくて、かわいい葉っぱの植物として観賞していけたらと思います。

小学校の時の話だが、クラスメイトが学校にオジギソウを持ってきた。
草なのに触ると動く!これまでの人生経験(といってもたかが10年くらいのことだが)を覆す植物の存在に、とたんにクラス中がトリコになった。その結果、みんなでベタベタ触りすぎたために、オジギソウはすぐに枯れた。合掌。
大人になった今でもオジギソウが好きで、見かけるとついつい触ってしまう。ところが、その植物、オジギソウじゃないことが圧倒的に多いのだ。触ってもピクリともおじぎしてくれないときのあのガッカリ感。ぬか喜び。落胆。むなしさと悲しみ。
二度とあんな目に遭わないためにも、どれがオジギソウでどれがそうでないのか、きっちり見分けられるようになりたいのだ。
※2009年6月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。
まずはとある植物の写真から見ていただこう。
上の植物は、近所のホームセンターで見かけたものだ。茎の左右に細長い葉っぱが並ぶこの形。まさしく、小学生の時に見たオジギソウの葉と同じ形である。あのときは小さな鉢植えの草だったが、それが木になって、しかもこんなにもっさり生えている!
「触り放題だ!」と思ってさっそくペチペチ触ってみる。しかし植物は、そんな僕からの心のふれあいに対し、完全無視で応えたのだ。
この植物は、観葉植物としてよく売られているエバーフレッシュ。オジギソウではないので、触っても葉は閉じない。まったくガッカリである。
一方、こちらは去年、沖縄旅行に出かけたときの写真だ。
街路樹が全部オジギソウ!ウヒョー!と思って(手が届かないので)石を投げてみたりしたものだが、ザワリと葉を揺らしたのち、放り投げた石は乾いた音を立てて地面に落ちた。またも植物にガン無視された瞬間である。
帰ってから調べてみたら、これはホウオウボクという木であった。たくさん撮影した「沖縄は街路樹がオジギソウだ」というコネタ用の写真(しかも数十枚ある)だけが、いまもSDカードの中でむなしく容量を圧迫している。
以上が、僕の最近のニセオジギ体験である。オジギソウと間違えて他の植物を触ってしまう体験は、このようにとてもむなしく、そして寂しいものである。
こういった、触ってガッカリのオジギソウに似た植物たち、この記事では「ニセオジギ」と呼ぶことにしよう。そして、これ以上ガッカリをかさねて、無駄に心をすり減らすのはもうやめだ。そのためには、オジギソウとニセオジギ、しっかり見分けをつけられるようにならなければ。
上記の2つ、オジギ「草」なのにいきなり木を持ってきて恐縮だが、なんとオジギソウ、エバーフレッシュと同じネムノキの仲間だ。ネットで調べてみたところ、大きく育つと木になるなんて記述もある(けどならないという記述もあってなんともいえない)。草か木かは、判断の決め手にはならない。
ではどこで見分けるべきか。いまのところ、「オジギソウっぽい」の判断の決め手としているのは、こんな特徴である。
だが、これだけでは全然不足なのだ。だから僕はしばしばニセオジギに騙されて、悲しい目に遭う。
でももう、泣き寝入りはごめんだ。もっと目利きを鍛えるため、僕は修行の旅に出ることにした。
目利きを鍛えるにはなによりも経験である。それっぽい植物にたくさん接することによって、オジギソウを見分ける力を養うのだ。
今回は夢の島公園にやってきた。植物がたっぷりと茂る森林公園の遊歩道で、オジギソウと、オジギソウっぽい植物・ニセオジギとをバリバリ見分けていく。
ニセオジギ探しはここからスタート。裸にならないように気をつけます。
葉の付き方は少し似ているが、形がちょっとイメージと違う。間違えるほどではない。しかしこういうザコにも向き合っていくことで、徐々に経験値がたまっていくのではないか。ちまちまスライム倒す感じで。
さっきの「ややニセオジギ」が、藤棚みたいな棚になっている。スライムがキングスライムに!オジギができなくても他の方法で役立つ場合もあるということか。
木が茂っていて全体に日陰なので、棚の下だからといって特に涼しいということもない。
開始10分、なんか腕がかゆいと思ったらすでにたくさん蚊に刺されていた。ぬかった。
蚊に刺されているときにぐっと力を込めると蚊は口が抜けなくなるので、こうしてゆっくり写真を撮ることができます。しかしその間もどんどん血が吸われているかと思うと気が気ではない。
そうこうしているうちに、目の前に突如、オジギソウっぽい木、しかもかなりの巨木が出現。
葉っぱは写真の通り、記事の最初に紹介したエバーフレッシュによく似た形。期待をこめてタッチしてみるも…
オジギソウではなかった。この木は遊歩道内に1本しか見あたらなかった。これをニセオジギAと命名。
ニセオジギAの葉の中には、写真のように葉っぱが閉じているものもあった。あれ?と思って触れて見るも、やはり触った刺激では葉っぱは閉じない様子。
たぶんネムノキの仲間なのだと思う。夜に葉っぱを閉じる習性を持つ。それが何かの理由で今日は開かなかったのだろう。
素人さんが間違えがちなのが、この手のシダ植物である。僕も小さい頃はオジギソウと間違えてシダ植物をよく触ったものだ。先細りになった葉の生え方が独特なので、今では間違えません。シダとオジギソウ、間違えているうちはまだまだヒヨッコである。
オジギソウ状の葉をつけた木が、何本かまとまって生えているのを発見。
さっきのニセオジギAとは葉の形も幹の質感も違う。ちょっと葉が細すぎる気もするのだが、半信半疑で触ってみたところ…
やはりオジギはしなかった。ニセオジギBと呼ぼう。
初めての発見以降、ニセオジギBは割と頻繁に植えられていた。1本が大きいので、2本も生えていると写真のように一面ニセオジギになってしまう。こんなにたくさんいるのに、僕には誰一人オジギのひとつもしてくれない。小学校の頃、転校先ではじめて教室に入ったときのことを思い出した。キュンとした。
遠目に見ると意外とオジギソウっぽく見えるのが、モミジだ。小さい葉っぱがたくさん重なり合っている様子がネムノキっぽいのだ。(オジギソウの木は見たことがないからわからない)
草を探してキョロキョロしながら歩いていると、突如目の前にトンネルが出現。一気にアドベンチャー気分に。
この一帯はややニセオジギな植物がいくらかあるのだが、どれも似せ方が中途半端である。オジギに対するやる気が感じられない。花なんか咲いて、浮かれてやがる。人を舐めた態度に、少し腹が立った。
こっ、ここは!小径を取り囲むように、ニセオジギBが大量に群生していた。ニセとわかっていてもテンション上がる。立てられていた札によると、このニセオジギBは「メタセコイア」といって、「生きた化石」と呼ばれる植物らしい。なんか偉い木なのに、ニセとか言ってごめん…。
写真は木を押して揺らしてみているところ。やっぱりオジギはしませんでした。
群生するメタセコイアを最後に、ニセオジギ探しの旅は終了。
約1時間程度の散策でいくつかのニセオジギに出会い、そしてその姿を頭にたたき込んだ。今見つけたニセオジギに対しては、今後は「触ってみてガッカリ」しないですみそうだ。
今後のオジギソウ生活の向上のため、目利きの旅はまだつづきます。
ニセオジギの旅はつづく。森を出てからは植物園を見たり、翌日以降もそのへんの植物に気を配ってみた。いちいち旅程を書くと長くなりそうなので、ここから先は急にダイジェストにして、見つかった植物だけざっとご紹介しよう。(マンガが連載打ち切りになるとこんなふうになりますね)
ここに紹介するのは全部オジギソウではないので、さわってもさわり損だぞ。
こうして見ると、ぱっと見て「オジギソウっぽいなー」と思う植物は、世の中にかなりたくさんある。シダを除けば、マメ科のネムノキ、アカシアの仲間が多いようだ。しかし数が多すぎて、はっきりいって、こうやって挙げてもきりがない。
ニセオジギをたくさん見つけて覚えれば、「これはたしか違う」と消去法でオジギソウを見分けらるだろう、そんなふうに思っていた。だがこうもたくさんの種類があると、覚えるにも限界がありそうだ。
ここは素直に本物のオジギソウを手に入れて、その特徴を見極めよう。その方が早く見分けられるようになるだろう。
図らずもモノマネ番組みたいな展開だが、偽物のあとは本人登場である。
このオジギソウ、その辺のホームセンターなどに売っているものと踏んでいたが、探しても全然見つからなかった。あちこちのお店に電話をかけまくってやっと発見、電車で往復2時間かけて買いに行った。2時間かけて行って、117円で買った。
「オジギソウに似た草にガッカリしたくない1 」
触るとオジギするようすを動画でごらんください
じっくり観察したり他の植物と比べたりしているうちに、いくつかオジギソウを見分けるポイントがわかってきた。
この中でも、決定的なのは4番だ。他の植物は1本の茎からたくさん枝分かれがあって、それぞれに葉がついている。でもオジギソウは1本の茎から枝分かれが1回だけ。葉のついている茎は、いつもY字の形だ。
今回探した中で、4の条件を満たしている植物は他にはなかった。(だから本当は1~3要らないんだけど、4つくらいあった方がかっこいいかと思って…)
ついにオジギソウを見切った!
さてこれで問題は片付いた。これでもう、ニセオジギに触って泣き寝入りすることもない。
しかし、しかしである。本当にこれでよかったのだろうか。
今回これだけ探したにもかかわらず、本物のオジギソウは見つからなかった。その辺にそうそう生えているものではないのだ。
ということは、である。正確にオジギソウを見分けられるようになってしまった僕たちは、もうオジギソウを発見することができないわけだ。「オジギソウ(っぽいの)発見!」と思うあの瞬間の胸のときめき、それを失ってしまったことになるのだ。
なんと切ないことか。それならばいっそのこと、自らの手で、野にオジギソウを作り出してやろう。
とはいえ勝手にその辺にオジギソウを植えると、生態系を乱すのでよくない。
ならばこうだ。オジギもできない軟弱な植物たちを、オジギソウに変えるのだ。「オジギせぬなら オジギさせてみよう ニセオジギ」。秀吉のスピリッツで、ニセオジギをオジギソウに矯正するのだ。
最近始めたハンダ付けが楽しいので工作にも役立てようと思ったのだが、鉄なのでくっつかず、仕方なくクリップで留めた。結果、無駄にゴテゴテしてかっこいいマシーンが完成した。
この手のひらサイズのメカ、どこがオジギソウ養成ギプスなのか。使い方をご説明しよう。
これでどんなに無気力な植物でも、一瞬にしてオジギソウになってしまうのだ。
この養成ギプスで、軟弱な植物どもをどんどんオジギソウにしていく。手加減はしない。
「ガシャーン」
キャプションだけ威勢よくしてみましたが、実際はバネが弱いのでとならなくて手で挟んでます
あらゆる草が僕の前に頭を下げる。ちょっとした権力を手に入れた気分だ。ひれ伏せ、植物たち!
そんな調子に乗り始めた僕の前に、1本の木が現れた。
これまでさんざんガッカリさせられてきたニセオジギ達だが、正体がわかってしまえば憎む理由はなにもない。そもそも最初に勘違いしたのは僕の方だったのだ。それなのにギプスとかつけてごめん。
そして今回いろんな植物を見て思ったのだが、ニセオジギ達のあの葉っぱの形はけっこうかわいい。これからは「オジギソウっぽい植物」じゃなくて、かわいい葉っぱの植物として観賞していけたらと思います。
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