国際会館方面という言葉でしか国際会館を知らない
実家から京都駅まで出かけるときに国際会館行きの電車によく乗った。なんといっても国際の会館だ。子どもながら都会的な響きに憧れがあった。
いまは宮崎の山間部に住んでいるので電車を使うことは滅多にない。久しぶりに電車に乗ったら他の乗客との距離が近くてドキドキした。キッスか殴り合いでしかあり得ない近さに知らない人がいるんだぜ。
はじめて国際会館を目指して電車に乗ったが、地下鉄烏丸線の起点駅である国際会館駅まで意外と乗客が減らないことを知った。目立つのは学生とおぼしき若者たちで、調べてみると国際会館駅からバスで行ける大学がいくつかあるようだ。
国際会館は実在するし京都議定書が採択された場所
国際会館駅の改札を出た学生たちはバス乗り場がある地上出口に消えていった。
京都国際会館へと向かう連絡口もあるが、そちらに進む人は皆無である。そして連絡口があるということは、国際会館は実在するのだ!
誰もいない快適な通路を歩いていると、なにかのパネルが展示してある広場に行きついた。遠目に確認すると環境問題に関することが書いてあるようだ。
地球温暖化対策についての先進国各国の取り組みを定めた「京都議定書」が採択されたのが京都国際会館だったらしい。教科書に載るレベルのできごとじゃないか。なんでおれは京都市民でありながら知らなかったんだ。
国際会館は基本的に立ち入り禁止
直通ではないものの、国際会館駅を出るとすぐ近くに国際会館がある。
国際会館は基本的に関係者しか入れない。調べてみると一般に公開される日もあるようだが、ついさっきまで実在すら疑っていたわたしには知る由もないことだ。
まあいい。行けるところまで行ってみよう。
本館は特撮に出てくる秘密基地のような造りで、建物近くに配置された警備員がその気を強めている。かっこいい。素人のわたしに分かることは、かっこいいことと入っちゃいけないことだけだ。
敷地は15万㎡もあるそうだが、部外者が見られるのはせいぜい建物の外観くらいである。そのおかげで観光客どころか地元住民もぜんぜん見当たらない。びっくりするくらい人がいない。
人がいなければどこでも天国なので楽しい。
でもレストランには入れる
さすがに何も見られなさすぎたので警備員さんに尋ねてみると、建物のなかのレストランは誰でも利用できるらしい。それだ。入れてもらおう。
建物のなかに入って受付でレストラン利用の旨を伝えるとゲストバッジを渡してくれた。会館内での勝手な行動は許されず、レストランのひとが迎えに来てくれるのを待たなければならない。
ランチタイムの店内は賑わっていた。ママ友会での利用者が多いように思う。いかにもな京都弁の会話を盗み聞きしていると、子どもにスマホでオンラインゲームをさせることの是非が議題として持ち上がり、会議の結果、非で落ち着いた。
日替わりランチはコーヒーをつけて1,500円。手頃な価格帯のわりに店内にはハイソな雰囲気が漂い、知る人ぞ知る社交場といった趣きである。みんな上品にナイフとフォークをカチャカチャやっている。
わたしと言えばナイフとフォークを使うのは中学生のスキー研修旅行ぶりで、作法が分からずまったく食べた気がしない。器は持ち上げちゃだめなんだっけ。スマホでググりながらなんとか乗り切った。
ごちそうさま。うまかった気がする。食後のコーヒーを一気飲みしてそそくさと店を出た。
会計を済ませて受け取ったレシートが大判のこんにゃくくらいでかかった。へえ、レストランとはそういうものなのか。
京都議定書のことといい知らないことばかりで恥ずかしい。穴があったら入りたい。ああ、京都でそんなことしたら古墳と思われちゃうかしら。

