「なんか似てる」だけでおもしろがっていいのか
ものすごく変わってるとか、意外だとか、見たことがない新製品だとかそういうことではない。
デザートとして普通のパッケージだし、コンセプトがトリッキーなんてことでもない。
ほんのちょっとおもしろいな……と私がつい思ってしまったのは、なんだか似てるのだ。
担当の方が、真剣に真摯に顧客のことを思って思って作った商品だろう。
そこを、ほんのすこしパッケージが似てて見分けがつきにくいだけで気軽に「なんか……おもしろいな……」と思ってしまうことについては後ろめたさもある。
けれど毎日通う店だけに、その可笑しみは日々重なってどんどん大きくなっていった。
そうなるともう両方いっぺんに買うしかない。
ヨーグルトにケーキを躍らせる
シリーズ名の「ガトー・ソワイユ」はフランス語で「絹のようなお菓子」。ヨーグルトだけど、デザートとして機能させようぞ、というコンセプトだそうだ。
朝ごはんについてくるヨーグルトとはちがう、おやつにデザートとして食べる、ケーキとかアイスとしてのヨーグルト、ということだと思う。
フレーバーはバスクチーズケーキとアップルパイ。
つまりヨーグルトにケーキを躍らせる、そんな商品だ。
もちろんヨーグルトだからカロリーはケーキやアイスクリームに比べると低い。
おいしさだけではない、「ありがたみ」を研ぎ澄ませるとデザートはこうなるのだなと思わされる。
ちゃんとケーキの味がする
食べて見ると、ヨーグルトの種類としては、もったりして酸味の少ない、ギリシャヨーグルトのような水切り系のヨーグルトだ。
どちらもソースがたっぷり入っていて、しっかり混ぜて食べるようにと書いてある。
バスクチーズケーキ風の方は、そもそもチーズとヨーグルトが近しい食べ物だから口にふくんでいきなりからもう違和感なく「あ、チーズケーキだ」と感じた。
ふしぎなのはそこからで、混ぜたカラメルソースの焦げたような香ばしさから、バスクチーズケーキの焼いた感じがふわっと立ち上がってくる。
あ、なるほどそうやるのか! と、ちょっと手の内が分かるだけに、感心の味がする。
いっぽうアップルパイケーキ風はチーズケーキに比べると実装が難しいんじゃないか。と、思ったのはふたを開けたところで飛んだ。
かおりがアップルパイとして100点だ。
そうか、シナモンと煮リンゴのかおりでもって、ヨーグルトをアップルパイ側に持っていくんだな。
舌にのせると、しっかり入った果肉にあわせて、なんだかちょとパイ生地のようなしゃりっとした食感がある。
砕いたパイ生地が入っているのかと思ったがそうではなく、ヨーグルトの中でも失われないサクサク食感を再現するため、細かく削って乾燥させたココナッツが入っているらしいのだ。
そんなことまでするのか……。確かにこれはかなりアップルパイかもしれない。
イオンなら牛丼もヨーグルトでいける
人気があるケーキの中から、ヨーグルトでうまいこと味が再現できた、ということでバスクチーズケーキとアップルパイは選ばれたのだろう。
でもそうとは思いつつ、あまりの再現力に、イオンだったらもうなんでもヨーグルトにできちゃうんじゃないかと、可能性みたいなものも無責任に感じてしまった。
本気出せば牛丼味とか、もうぜんぜんヨーグルトでできちゃうんじゃないか。
そんなふうに考えるだけ考えて、でも牛丼ヨーグルトは売っていても買わないなと思った。
私も買わないし、誰も買わない、だから賢いイオンは作っていない。
そうか、これは秩序の話だったのだ。