こうして「フウリング」は生まれた
「暑い、暑過ぎる」。十万石まんじゅうのリズムでそればかり繰り返してる。
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今や晴れた日の昼間に外を歩くことは、命がけの行為になってしまった。
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思い返してみると、昔はもっと積極的に夏を楽しんでいた。
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今より暑さが厳しくなかったせいもあるが、年齢と共に「季節を楽しもう!」という前向きな姿勢を失ってしまったんだとも思う。これじゃいかん。
少しだけ過ごしやすくなった夕方に、重い腰を上げて近所の不忍池でやっているお祭りに出かけてみた。すると良い匂いが漂う屋台エリアの向こう側に、何とも涼し気な光景が見えた。
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風鈴か。なんて爽やかで心地良い音色だろう。こんなに良いものだとは思わなかった。やはり昔から親しまれているものには、日常を楽しむためのヒントが詰まっている。確か我が家の納戸にもあったと思うので、この夏は窓辺に吊るしてみよう。
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…と、思ったのだが。風鈴を吊るすスペースなどなかった。かといってベランダだと、東京の住宅環境では近隣の迷惑になりかねない。
ここでまた気分が沈みかけるが、この後ろ向きな思考が駄目なのだ。自宅で風鈴を楽しめないなら、気兼ねなく風鈴を楽しめる場所にこちらから出向けば良い。
この前向きな攻めの姿勢を選択したその瞬間、夏の野外でも涼しく楽しめる新しいアクティビティ、「フウリング」が誕生したのである。
夏場、野外で風鈴の音色を楽しむことで涼感を味わう遊び
①海辺で「フウリング」
というわけで、レンタカーで内房までやってきた。夏といえばやっぱり、海。寄せては返す波、色とりどりのパラソル。写真になってしまうが、皆様にも少し御裾分け。
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まあ良い。ここからがフウリング本番。用意してきたフウリングセットを設置しよう。
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あとはスズキナオさんやパリッコさんが提唱する「チェアリング」と同じ。椅子に座って飲んだり食べたりボンヤリしたりしながら、風鈴の音色を楽しむのだ。
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海沿いということで用意してきた新鮮な魚介類に舌鼓を打つ。
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気温約35℃。もろに日差しを浴びていたら、たった10分で滝のように汗が流れてきた。駄目だ。死んでしまう。急いで車に避難した。
②緑の中で『フウリング』
やっぱり海より緑の方が涼しいのかもしれない。車を走らせていると良さげな原っぱがあったので、立ち寄ることにした。
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夏特有の草の匂い。虫達の鳴き声と風鈴の音色が共鳴し合う。冷やしたシャンパンと洒落込みたいところだが、運転があるので新鮮なフレッシュジュースで乾杯だ。
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やっぱり駄目だ。なんならさっきの海辺より暑い。またもや車に緊急避難した。
何をやっているのか?
これ、おかしくないか?「うんざりするくらい暑い夏を、風鈴で快適に!」っていう趣旨で始めたんだぞ。なんでさっきから、遠出までしてずっと辛い思いしてんだ?
あとさ、俺、事前に林編集長に企画意図を説明した時は、「流木などを利用して、オシャレな風鈴台も開発します!」って宣言してたよな?
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でも撮影日までにそんなの用意できなくて、持ってきたのがこれだよ?
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オシャレな風鈴台を用意できなかったことを林編集長に指摘されそうな気がして、なんかトンボ柄の布だけ巻いてるのも姑息だよな。
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大体、さっきから車内の空気が重いよ。妻は道の駅に寄りたそうなのにレンタカーの返却時間が迫ってるから無視しちゃったし、炎天下で訳分かんない撮影待たされるから子供は無口になってるし。
俺、どこで間違っちゃったのかな…。
取り乱しました
いや、ちょっと落ち着きます。企画の出発点は悪くなかったはずだから、ここで匙を投げるのは勿体ない。もう一度ここまでの失敗の原因を考えてみると、私が根本的に風鈴の役目を勘違いしていたことが大きいと思う。つまりこういうことだ。
そう。風鈴は冷気などを発する道具ではなく、あくまで「涼しげ」を演出する効果しか持っていない。元から涼しい場所をさらに涼しく感じさせるものなのだから、炎天下では力を発揮できないのだ。
それを踏まえて、もう一か所くらい頑張ってみよう。